アリシア、ラグナロクへ
数日後 ラグナロク イザヴェル
ネクシレウスのアサルトと”神時空術”と神持ち前の観測能力を使えば、銀河内の移動は比較的に簡単だ。
GG隊の面々や軍にはラグナロクとの交渉と視察と言う名目でこちらに出張している。
軍はアリシアがラグナロクに行く事を渋っていたが来るべきラグナロクとの和平の為の視察と嘘を言って無理やり許可させた。
ラグナロクは星間国家で出来た惑星だ。
その中でイザヴェルは首都惑星であり、そこにユースティティアもいる。
ブリュンヒルデの計らいで街の郊外でネクシレウスを転移させ、降りるとブリュンヒルデと大勢の出迎えと共に片膝をつく右手を胸に添え、平伏して出迎えられた。
「お待ちしていました。我が主よ」
「えぇ……あぁ、うん。出迎えありがとう」
流石にここまで慇懃に出迎えられるとは思わなかった。
少々、行き過ぎな気がするほど彼らのアリシアに対する敬意は大きい。
人間もこのくらい敬意を持ってくれれば、福音もやり易いと思えるほどだ。
「主よ。ユースティティア様からの伝言です。なんでも準備に時間がかかるそうなのでそれまでゆっくりと寛いで欲しいそうです」
「そうなんだ」
何か事情があるのだろう。
オメガノアを知っているくらいだ。
計り知れない事情とそれに伴う下準備があるのだろう。
逆にその準備無しにも聴かせる事も出来ないと言う事なのだろう。
ならば、丁度調べたい事もあった。
ここからでは福音したくても福音は出来ない。
なら、今回はお言葉に甘えて寛ぐしかなさそうだ。
「では、まず宮廷に向かうのはどうでしょうか?ロキ様も顔を会わせたいと言っています」
「では、そのようにしましょう」
アリシアはアストを心の収納に格納してから手配された馬車に乗る事になったが、その馬車の生き物に興味を惹かれる。
それは純白の白馬だが、2本の角を生やした地球では見かけない生き物だった。
アリシアはその馬を指さした。
「この馬は?」
「この馬ですか?この馬は悍馬で有名なアールヴァクと言う馬です。主人以外には決して懐かない気性の荒い馬ですが、非常に足が速いんです」
「ふーん」
そう言いながらアリシアは無造作に馬に近づいた。
周りの者が引き止めようとする。
何故なら、この馬は主人と認めた者以外には非常に攻撃的な馬として知られ、枷を付けられているがケガをしないとも限らないからだ。
だが、アリシアは平然と馬に触れて顔回りを撫でる。
馬は気持ち良さそうに為されるがまま嘶きながら喜んでいた。
「ふふ、可愛い。悍馬って聞いたけど結構大人しいね」
ブリュンヒルデは肩から息をついて呆れていたが、周りの者達はその時、初めてアリシアが神の中の神とまで言われているか知った。
アールヴァクは主人以外には決して懐かない。
仮に上位の相手でも決してだ。
その逸話としてあのオーディンにすら牙を向けたとされるほどであり、オーディンが反撃しても殺せなかったほど強く縄張り意識やプライドが高いのだ。
そんなアールヴァクが何も抵抗せずに為されるがまま頭を伏せ、主以外に無条件で懐く様などアールヴァクがその時点で負けを認めてしまうほど歴然とした差があると言うに他ならない。
アリシアに懐疑的だった者もこの件でアリシアの力を納得するほどだった。
何故なら、アールヴァクは
その為、アールヴァクを子供の頃から育て飼い主を絶対強者と思い込ませる事で飼っているのだ。
故に成体となった個体を手名付けたのはアリシアが初だった。
その後、首都に向かう馬車の中でアリシアは無邪気に「あの馬、育てたい」と子供に微笑ましく語っていた。
そこで文官職の男がアリシアとの親睦を深める調度品の品にアールヴァクをリストに入れているのが見えた。
ブリュンヒルデでは頭の中で「気に入ったのは良いがどこで育てる気だろうか?」と内心思った。
ハッキリ、言えばアールヴァク1匹地球に送りつけただけで人間どころか地球の動物を皆殺しにしかねないほど強く凶暴だ。
とても活発な生き物なので普段から運動していないとストレスで体調が悪くなる事もあるのだ。
その辺の事は後で説明しておこうと思った。
そんな事を考えている内にイザヴェルの首都に付いた。
そこにある地球で言うところの役所に入り諸々の手続きを行った。
簡単に言うとラグナロクでの戸籍取得だ。
星間惑星なので基本的に神でなくても適正試験にさえ通れば戸籍を取れる。
ちなみに戸籍を取得する中でアリシアが地球人の中で初めての戸籍取得者になったようだ。
随分前にもロキが似たような事を言っていたが、地球人の適正はゼロに近いと説明されている。
そもそも、オリュンポスとの戦争状態だった事もあり、星間国家として戦争を優位に運ぶ為に新技術の流動を加速させる戦術の一環として惑星間交流の乏しい惑星とコンタクトを取り、技術の交流などで国力強化する為に各惑星を念入りにリサーチしているらしく他の並行世界の惑星まで観測してその相対評価で評価しているようだ。
仮に真新しい技術がなくても因果の強化と言う面で有用なら原始人レベルの技術しかなくても同盟に加入され、公平な立場を取るそうだ。
ただ、その中でも地球は悪い。
地球に匹敵して悪い惑星も確かに幾つかはあったが、その中でも地球はワースト3に入るほど悪い。
それ故に付いたあだ名が“この宇宙で最も悪意に満ちた惑星”だった。
彼らからすれば因果的に見て地球はマフィアの巣窟のように見えただろう。
“交渉に値しないテロ国家”みたいな感じだ。
正直、アリシアはそれを聴いて耳が痛かった。
仮にも地球人である身の上としては身内の恥としか言いようがなく少し顔が赤くなった。
なら、自分に対する風当たりは悪いかもと覚悟したがどうやら、この国の民意はアリシアと地球人は別個で考えられているようだった。
人は人、神は神、超越者は超越者として考える民族性らしく。
神としての基準を満たせば、上位神として崇拝される。
過去にワースト5に入った惑星から神が現れた事もあるようで地球人だからと言って差別の対象にはなりえない。
そもそも、差別と言うのはこの惑星では重罪に当たる。
地球では差別はいけないと道徳に訴えるだけで差別そのものを禁止する非常に強い強制力のある法律は無い。
地球では差別しても別に死刑にはならないが、ここでは死刑になる事もあるらしい。
確かにこんな世界で地球人の1人でも連れて来れば、簡単に差別をしそうな印象がある。
話を聴けば聴くほど地球人の見っともなさが浮き彫りになる話だ。
地球の政治家を連れてきて正座で聴かせたい話ばかりだ。
尤も、もう地球がラグナロクとのコネクションを築いても手遅れな域に達しているのだが、それも地球人の因果だ。
アリシアは自分の計画を進める。それだけだ。
こうして、諸々の世間話込みの説明を受けてアリシアは晴れてラグナロクの市民権を得た。
しかも、上位神と言うロキとブリュンヒルデと同じ待遇の地位を貰った。
この地位を持っていると色々、優遇されるようだ。
例えば、神立図書館のアクセス制限がフリーになるので調べたい事はなんでも調べられる。
本好きのアリシアにとっては素晴らしい、夢のような待遇だった。
アリシアはその足で神立ブレイザブリク図書館に向かう事になった。
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