藍色の決断
「アタランテ……アレを使うしかないのか……」
確かにアタランテと概念照準器があれば敵だけを破壊する事が出来る。
だが、敵は
概念照準器の機能が消えれば、地球に多大な損害を出す可能性があり、一度撃てばタダでは済まない。
今、地球が破壊されるのは彼らにとっても望まない事だ。
シンは葛藤した。
一撃必殺の兵器を撃てば、全て終わる。
しかし、やってしまえば自分は人間と変わらない。
ネクシレイターと成った彼は知っている。
破滅を齎す兵器を持った様々な人間の末路を知っている。
ある者は兵器の引き金を引き、敵の焦りを増長させ、破滅を招いた。
ある者は世界の文明を破壊した禁忌の兵器を持ち出し、それが危険な物と知りながら再び力を解き放った。
そのどれも様々な世界では違った結末を持つ。
世界が滅んだ世界もあれば、何事も無かった世界もある。
だが、両者に共通して言える事がある。
自分なら正しく使える。
そんな慢心が両者にあった。
自分ならこの力を使い熟せる。
力を使っても一瞬で終わる。
ちょっとだけ使おう……一度だけ一度だけ一度だけ。
そう言った誘惑に囚われていた。
そんな常日頃からある慢心の所為で判断が鈍り、感覚が鈍り準備を怠る。
シンはまさにその悪魔の誘惑とも取れる状況に陥っていた。
概念照準器の能力を過信したばかりに敵が御業を使う可能性を考慮していなかった自分が慢心していないと言えるだろうか?
将又、敵が概念照準器のロックオンを外す御業を使える可能性もあるのではないか?と言う不安も過る。
その可能性を軽視すれば、間違いなくアタランテを使ってしまうだろう。
だが、使ってしまえば様々な世界の英雄達が歩んだ罪を繰り返す事と同義になるかも知れない。
(どうすれば良い?)
シンは敵の攻撃を回避しながら悩んだ。
フィオナ達には不用意に手を出さない様に指示を出した。
とにかく、考えた。
だが、ハッキリ言って袋小路だ。
(どうする……どうすれば!)
そんな焦燥感に駆られ不安と焦りから混乱しそうになる中でそんなシンを心配するように助け舟が舞い下りた。
失敗恐れる者は失敗しますよ
シンは頭に響く声を聞いた。
その声は忘れもしない創造主の声だった。
だが、その声にはあの時の様な覇気がなく何となくだが彼女は今、凄く体調が悪いように思え、それも喋る事も億劫な程に衰弱しているように思えた。
だが、それでも何かを自分に伝えようとしている。
悩んではいけません。ですが、よく考えるのです。悪魔の目的が何でありその為には何が必要なのか。
「目的……必要……」
アステリスは恐らく、答えを知っている。
だが、今の彼女にはその答えを示すだけの体力もないのだろう。
その声を最後に彼女からの声は途絶えた。
「目的……必要……」
シンは反芻しながら思い返す。
高次元工場に居た際にアリシアからの情報共有の際に事前に伝え聞いていた悪魔の目的。
悪魔の目的は今の宇宙を構成する神を打倒し、新たな宇宙を創造すること。
その為には力が必要であり、その為にアスタルホンの力を取り込んだ。
その力は完全では無いがサタンの支柱にある。
そして、今その力でアリシアを打倒しようとしている。
すると、アリシアがいる戦闘域でWNの大量の流れを感じた。
「人を意志を喰らっているのか。どうやら、そうまでしないとアリシアには勝てな……あっ!」
シンの頭の中で回路が繋がった。
サタンにとって人間はただの燃料だ。
人の感情を食べて力を付けている。
奴は今、アリシアに対抗する為に力を喰らっている。
そうしなければ倒せないからだ。
ならば、奴は人間を見捨てない。
ここにいる分体がただの捨て駒なら捨て駒を捨てるはずだ。
アタランテにより人類の数が減る事を必ず恐れる。
(撃てる)
シンは決意した。「ここで決着を着ける」と
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます