軍の現状
「今、軍は非常に切迫した状況にある。何故か分かるかな?」
「さぁ?何か困ってるんですか?」
「実は先日、軍の総司令官であったボーダー総司令が解任されたんだ。その影響でボーダー元総司令の汚職が次々と判明している。表立っていないが一部の企業に忖度して権益を著しく上げる事をしていたと判明した。既に大企業のCEO……その中でも特に兵器会社やPMCが軍に対して酷く反感を持っている状況だ。一様に「我々はお前達のエコひいきの為に血税を払った訳ではない」と苦情を言ってきた。当然の反応だ。彼等はその制裁として軍からの仕事を制限すると言ってきた。彼等にとっても痛手だろうが、ボーダー元総司令のやり方があまりに極端だったのが影響している」
「一部企業にばかり利権の絡む話を流し過ぎて他の会社が経営に苦しんだ結果と言う事ですか……」
因果的に言えば、リオは選んだのは人間の強いては軍関係者の因果が強かっただろう。
社会的に上の立場になると社会的な影響や心理に影響を与え易い為、因果の影響力が大きく反映され易い。
因果が弱くても影響し易いのだ。
結論を言えば、この件は軍の因果に起因した因果応報なわけだ。
「彼等は軍に対して仕事の均等な再分配を要求してきた。その流れの所為で現在、自然と軍縮の流れになりつつある。だが、宇宙統合軍や宇宙神がいつ襲うか分からない今、それはマズイ。仮に仕事を再分配しても一度失った信頼は簡単には戻らない。軍の知名度が落ちるのは時間の問題だ」
(いや、自業自得ですよね。まさか、落ちた知名度をわたしを被写体にして取り戻そうと?何でその不始末をこっちがつけねばならないの?知らないと思っているのかな?ルシファー事変の時にわたしを妨害した部隊が宇喜多の指示で動いた第1特殊任務実行部隊だったのは知っていますからね。記録を削除して素知らぬ顔しても無駄だからね!何度も同じ因果、同じ罪を繰り返す人間の尻ぬぐいしても恩を仇で返すだけだよね!)
アリシアの立場からすれば、これまでの原因と結果は全て軍の上層部と言う因果であり、軍の知名度が落ちたのもそいつらの行った行いによるモノであり、その皺寄せを自分に持って来られるのはハッキリ言って、迷惑だった。
そんな利益の為に遊んでいるような連中に構う暇などアリシアにはないのに加え、個人的に偶像に加担する気もなく、この命令はただの軍の上層部の迷惑行為くらいにしか思っていない。
「そこで君に白羽の矢が立ったのだ。多くの軍事会社のCEOや役員は元軍人でもある。今回の件も含めて君の活躍は彼等も注目した。極東所属の外部独立部隊を作った事で君が正規軍になってくれた事で彼らからオファー来ているのだ。君の愛くるしさと常人離れした精強さに惹かれファンになった者もいるくらいだ。無論、君の技量に惹かれている者もいる。既に幾つかの他企業から君になら試験運用機を任せても良いと言っている」
「ふぇ?もう、そんな話になってるの!」
アリシアは全知全能の力はあるが、サタンの妨害や3次元ではその能力は制限がある。
基本的に自分が関心を持たなければ、知る事は出来ない。
今回も軍の知名度が落ちようとどうでも良いと思っている。
加えて、総司令部からのアイドル活動などやりたくないと言う意識が情報取得を鈍らせた。
尤も気分次第なので、その境界が曖昧だったりもする。
「だから!その為にも君には被写体になって貰って……」
「絶対嫌です。残念だけど私は偶像には加担しない。それが私なりの仕事の心情と思って諦めて下さい」
だが、それを聴いたジョージはその時、ある考えが浮かんだ。
「……つまり、それはソルジャーとしての君のプロ意識と受け取って良いのか?」
「自分の事をプロとは思ってませんが意識と言えばその通りです」
ジョージの目がギラリと光った。
「ならば、わたしと賭けをしよう!」
「ふぇ……賭けですか?」
「その賭けに君が勝てばわたしは大人しくこの場を去る。わたしが勝てば君は広報の仕事を手伝う。どうだ?逃げるも挑むも好きに選ぶと良い!」
アリシアの中で何かが点火した。
そんな言い方をされると意地でも勝ちたくなってくる。
彼女の辞書には”撤退”の2文字はない。
どんな勝負も自分の身を削ってもどれだけ負けようと勝つ。
逃げる?
そんな概念は彼女には無い。
それにしつこく付け回されるくらいなら、ここで徹底的に叩きのめして、堂々と総司令部の命令を拒否する。
最悪、「宇宙神対策で多忙の為にその命令に加わるのは物理的に無理です」と言い訳すれば良い。
嘘は言っていない。
現に念の為に姿を消している彼らが悪さをしないか、今も監視しているのだ。
多忙なのは事実だ。
なら一択しかない。
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