戦姫は自分に冷酷

「具体的に、ですか……そうですね」




 アリシアは少し困り果てたように眉を顰める。

 彼女としてはさっきの説明で十分説明仕切ったので思わず、怪訝な眼差しを向ける。

 ただ、そんな自分を良くないと自重しすぐにやめ、一度目を閉じ、自分の心を深く深く陳謝し、落ち着いて吉火に分かるような説明を考える。

 そこである例え話を用いた。




 正義の味方CEOと悪党がいました。その2つはある街で対立し戦闘を行いました。

 街には多数の被害が出て正義の味方は自分の会社の資本で復興しようと株を発行しました。

 その翌日、再び戦闘が起きました。

 今度の敵は以前よりも多くの敵が襲い街にはさらに被害が出ました。

 日が過ぎるごとにそれはだんだん大きくなり世界規模の大戦へ変わりました。


「何故だと思いますか?」とアリシアはそんな謎かけを出した。


 吉火はすぐには分からなかった。

 正義の味方価値観を持っていた彼には正義の味方が正しいように見えて悪党がただ、悪の様にしか見えなかった。

 そこでアリシアがヒントを出す。


「なんで株なんか発行するんですかね?」と


 それは資金調達のためだ。

 会社利潤が上がれば復興に役立つ、そうなれば配当金が世に回り世間でも景気がよくなる……と考えたところで吉火は指を鳴らした。




「そうです。そもそも、CEOが正義の為に戦わなければ、このからくりは成立しません。発行した株を悪党が買い占め、その配当金で兵器を量産すれば、簡単に戦争が起きてしまう。これは世界の在り方そのモノです。誰かが自分の思惑で正義や主張を誇示する度にその責任が伴う。ですが、世界は主張を押し付けるだけで責任を果たそうとはしません。それでも心まで無責任になってしまう。その無責任はただ、争いを振り撒くだけです。だから、わたしだけはその責任と向かい合うと決めたんです」




 アリシアの顔つきが更に鋭くなり、心の底でまるで何かを恐れているようだった。

 吉火も少なからず、知っている。

 彼女の価値観は自分とも他の人間とも大きく違う。

 だからこそ、譲れないラインにも違いがある。

 吉火が正義の味方を歓迎してもアリシアは歓迎しないのと同じできっとこの“責任”に対する思い入れも違う。

 吉火はそんな事はしなくていいと考えてしまうが、アリシアはそれを無責任と断じ忌み嫌う。

 仮に吉火が止めても彼女は間違いなく強行する。

 ならば、自分に出来るのはせいぜい、見守るくらいなモノだ。

 吉火は多少、不承不承ではあったが「分かりました」と答えた。

 本当なら死ぬような訓練を止めたいところだが、NPの主導権は彼女にある上、この強靭な意志を覆す言葉を吉火は持ちえなかった。

 アリシアは「ありがとうございます」とお辞儀をして、決断をすぐに実行に移す為にすぐにATに乗り込んだ。


「何があっても絶対に起こさないで下さい」と念を押し栄養タンクの補給も釘を刺しそのまま起動させた。

 吉火は頭を軽く掻き毟りながら、憮然とアリシアを見つめる。

 頑張っている人を応援する事はやぶさかではないが、彼女の場合、頑張り過ぎていると思いながら微笑ましく彼女を見送った。

 吉火はすぐにその場を離れ倉庫にある栄養タンクを取りに向かう。


 多分、増設した分では足りないだろうと思った。

 それに初起動状態なら、いきなりバイタル変化を起こす事もないと思いすぐに倉庫に向かった。



 ◇◇◇



 AT内部




「はぁぁぁぁっうぁぁ!」




 アリシアは悶絶していた。息もまともに出来ない程の痛みが身体を支配し叫び声は呻き声に変わる。

 全身はビクビクと痙攣しまるで陸に上げられた魚がその場に跳ねている様だ。


 目をカッと見開き焦点は全くあっていない。

 身体中の体液が雑巾絞りの如く滲み出る。

 まるで人間ではない何かがビクビクと動いている様だ。

 全身が激しく痙攣しても尚、彼女は身体を起こそうとした。

 支える腕の力など無く、かえって辛いだけだ。


 それでも這い上がろうとしていた。

 だが、彼女の意志とは関係無く身体がついて行かない。

 彼女の負荷に悲鳴をあげる様にドバッと口から血を吐いた。

 坂道で車を永遠と押し続け、もう思考加速時間で1週間一切の休みを入れず、徹底的に鍛え込んだ。


 身体はとうに限界を超えていた。

 それでも彼女は何度も車を押し潰されてもやめない。

 立ち上がり、この終わりの無い永遠のトレーニングを続けていた。

 とにかく自分が死ぬまでこれを永遠と繰り返す。


 1回死ぬ度にまた新たな試練に挑み、70m上がりの負荷を増大し死ぬ度に80m、90m、100mと上げていく。

 もはや、そこまでいくと肩から息をするような状態となり、目が虚ろで焦点がズレまくる。

 もう自分が何のために訓練しているのか、忘れてしまうほど過酷だった。

 ただ、それでも彼女の“生きたい”と刷り込まれた本能が体に鞭を打ち、彼女はそれに従順に従う。

 体をボロボロにし泣きわめきながら、自分の体を殴りつけ、必死に動かそうとする。


 その状態で対人戦闘も熟し塹壕の中を駆けながら、虚ろな意識な中でも“生きたい”と願う気持ちで頭を的確に射抜いて見せる。

 だが、体力を使い切っている状態な為、何度も弾丸にハチの巣にされたりヘッドショットを喰らったり拷問されたり挙句、男2人がかりで両腕両足を両側持たれ、抱えられ上下に振り回され、その勢いのまま地面に叩きつけられ、弄ばれる。


 だが、その度に言い聞かせる。


 これは自分の責任だ。罪人である自分は当然の事をされているんだ。

 当然のように扱われ、責められているだけ。

 良いように弄ばれているのは自分が弱いだけ……自分の責任だ。

 だから、責任を果たしてもっともっともっと……強くなりたい。

 強く燃え滾る気持ちが心から芽生え地面に叩きつけられ、呼吸すらまともにできない虚ろな意識の中でいつもの言葉を口にする。




「やれ……ば、でき……る」




 それが彼女の魔術……いや、神術だった。

 その言葉を口にして彼女に為せない事はない。

 自分を叩きつけて死んだと思い込んだ。

 男達がその場を離れようと後ろを向いた瞬間に男達は背後に気配を感じた。

 振り返った次の瞬間、一瞬鋭い眼差しで見つめられて体が強張り動けなくなったその時に目の前の影は消え、男達の視界が明滅した。

 その影が勢いよく両腕を抜くとそこにはドクドクと鼓動する肉塊があった。

 それが何なのかAIである男達でも簡単に推移出来た。

 男達を介して演算したATのAIがアリシアの異常な戦闘能力を演算するが、計測不能と言う結果しか出なかった。


 アリシアは肩で息をしながら、淡々と任務を遂行するように地面に倒れた男からはみ出た脈を打つ右手に握り肉塊しんぞうを握り潰した。

 肉塊の不快な破裂音を辺りに木霊し、男達は事切れて倒れた。

 その後、倍返しと言わんばかりに複数の男達がアリシアの前に現れ、アリシアは殺し尽くした。

 自分が死ぬまで何度も殺し尽くした。

 その度に彼女の目つきは変わっていき、疲れた体を諸共しない規格外な戦闘能力を発揮し更に高めていく。

 その姿はもはや戦闘マシンと言える次元にまで高まっていた。

 そして、いつしか目標とした111回の死を迎え、アリシアは薄れゆく意識の中で自動ログアウトした。


 現実に戻った後、吉火に担がれた事は覚えている。

 意識呆然としていたが彼の背中に担がれ彼の心臓の鼓動を聴くのは心地良かった。

 それを子守唄にする様に深く眠った。



 ◇◇◇



 彼女の自室に運び込んだ吉火はアリシアのダイレクトスーツを外し、汗で濡れた体をタオルで拭いた。

 世間から見ればセクハラかも知れないが、戦場でそんな事を言っていたから仲間が死ぬので吉火はその言う感性は過去に捨てて来た。

 彼女は息苦しそうに悶え、呼吸も荒い。

 おまけに体を触れて分かったが、やはりATに入る前に比べてかなり鍛え込まれている。

 ただでさえ、徹底的に鍛えられているのにそれ以上に鍛えられていた。


 APのパイロットは握手など相手の体に触れたら一流同士は大体の技量が分かってしまうものだが、少なくとも今のアリシアの技量は身体能力だけなら吉火の3倍以上は高い。

 引き締まり隆起した腕からしても太さは吉火ほどではないが、明らかに内部に詰まっている。


 巌の様な体つきと言うべきだろう。まず、腕相撲しても勝てる気がしない。

 それどころは人の腕を簡単に圧し折るくらいの腕力を確実に持っている。

 これは腕だけに限った話ではない。脚も腹筋も見た目に反してかなり強い。

 脚の速さは更に増し、体幹も恐ろしく強い。


 もう純粋な身体能力では彼女には勝てないと悟れた。

 良からぬ考えをするなら今、襲いかかっても勝てる見込みが薄い。

 弱弱しくなっているが過酷な訓練に耐えただけあり、その目は鋭利な刃のように鋭く強靭な意志を宿している。


 動物は敵の目を見て技量を測り勝負するとも言うが、見た感じ勝てる気がしない。

 これでも彼女に吠える存在がいるなら、そいつはチワワ並の強さだ。

 本当の強者ならまず、彼女に手を出そうとは考えない。

 それだけの技量を既に身に着けていたのだ。


 吉火はアリシアに洗濯をした軍服を着せて、寝かせ込んだ。

 火照った体にはひんやり心地いい軍服の肌触りが良いのか、彼女の顔が少し和らぎそのまま眠りに誘う。

 その顔はどこにでもいる健やかの少女の寝顔だった。

 吉火は微笑ましく彼女を一瞥してから下に転がったダイレクトスーツを抱え「良い夢を見れますように」と静かに言葉をかけ、部屋を出た。

 吉火がいなくなった事を確認するように机の上のスマホPCが起動し1人でに何かを呟き始めた。




『彼女は良い具合に成長している。あの男が協力するのは忌々しい限りだが……利用できるだけ利用せねばならんな』




 アストは端末を利用し情報を構築、何かの作戦資料を作成していた。

 そこには「AD討伐」と言う不穏な単語が浮かんでいた。




『小さな事に忠実な者は大きな大役を任される。彼女が身近な責任を果たす誠意を行ったのはわたしには行幸だ。それでなければ、WNは大きく成長しない。強いてはは器も大きくは成れない。子供には永遠に分からん話だろうがな』




 彼にとって子供とは“小さな人間”の事を指してはしない。

 彼にとっての子供と大人の差は“責任を果たすか果たさないか”だ。

 アストの価値観に従えば、吉火も含めて全世界の人間は子供だ。

 大人は自分の言葉や行いに責任を持ち誠意を以て行動に移す。

 例え、行動が果たせなくともその誠意があるかないかだけで大人と子供を大きく分かつ。


 特に世の中には正義、希望、人類の可能性、人類の力など英雄気取りで見てくれだけ、キラキラした言葉を並び立ててそれを証明しようと行動に移さない子供が多い。

 彼らの証明とは大抵が武力で終わる。

 武力で人類の希望などを示す事が多いが、それで良いなら銀行強盗が銃を持って銀行を襲う事も人類の希望だ。

 自分の主張を通すために他者を犠牲にする。

 それは銀行強盗と同じであり人への愛など無い。


 愛が無いと言う事はそこに誠意は無い為、極めて悪辣な行いだ。

 それを国や個人単位で行うのが人間だと彼は知っている。

 小さな人間が責任を負えないのは仕方がないとは彼も思う。

 だが、大きな人間が子供の様に責任を果たさないなら、それはただ“醜いだけ”だ。


 これがアストが人間が嫌いな1つの理由だ。

 本当の大人なら自分を犠牲にして愛と誠意を見せて、その行いを果たそうと努力する。それが大人だ。


 自分の言葉の責任も取れないパワハラを働くような奴がいるならそいつは大人ではない。

 パワハラを犯したならその責任を自分で取ってこそ大人だ。


 少なとも為政者や家庭、または英雄でそれを果たした者はおらず、その誠意を説明しても容易に理解できない。

 何故なら彼らには愛が無いのだから、完全な理解できるはずもない。

 だから、善人のふりをした滝川 吉火のような人間がアストは嫌いだ。

 彼はアリシアに気圧されただけでこの責任の話をイマイチ理解していないのだから当然だ。




『さて、クソガキどもの不始末をつけねば世界に未来はないな。心苦しくはあるが、彼女には頑張ってもらわねばならないな』




 責任を果たさない大きな人間の不始末を小さな大人が果たすのは何とも皮肉めいている。

 本来は立場が逆なはずなのだが、それだけ人間が責任を果たさないほど怠けているという証拠だ。

 だから、パワハラも増え諍いや争いも増える。




『人間とは本当に救いようがない』




 これで自らが正しいと誠意を以て示す人間がいたならアストの考えは変わっただろう。

 だが、人間以上の高い認識能力がある故に知っている。

 人間は醜く愚かだ。

 だが、人間は”白くありたい”と思うらしく。

 それを認めたくないが為に言い訳がましく、人類の温もりやら人の可能性やら言い訳して反駁し否定する。

 挙句、口先でそれを語ったと思えば、責任は離さず言っただけで終わり証明と謳いながら、武力や時に奇跡と言う名の力で訴えた者もいるのだから悪辣極まりない。


 そう言った者は口先で自分には正義があるとか、愛があるなど嘯くが実際、そんなモノは無い。

 意識にしても無意識にしても黒いモノを白いモノと偽りたいと言う偽善から来る惑わしだ。

 人間は自分の黒い罪を受け入れず、何でも白いモノにして罪と言う責任から逃れようとする愛の無い存在なのだ。




 だから、何度でもこの思いが過ぎってしまう。




 多分、わたしは人間が嫌いだ。



 ◇◇◇



 夜 旧アラスカ基地



 神代 シンは格納庫の前でテーブルを置き、その上のパソコンに話しかける。




「何か分かったか?テリス」




 彼は相棒に調査結果を尋ねた。

 大戦中に破棄された旧アメリカの旧アラスカ基地。

 今のアラスカ基地は新造され、現在此処は破棄されている。


 だが、大戦中の非常食や物資、APの整備用具等が一通り揃っているかなり有望な土地なのだが、基地の自立防衛機能は今も機能しており破棄されても尚、侵入を拒み統合軍にとってもテロリストも手が付けられなかった。

 だが、それは数日前の話。

 シンはあの戦いの後再び、アラスカに戻り、持てる戦力を持ってこの基地を制圧。

 現在、彼専用の砦と成り彼と言う主に何人も近づけさせない要塞に変わっていた。

 そして、彼は格納庫でお茶を飲みながら愛機の分析を聴いた。




『現在、我々の知る史実と差異ですが、僅かながら差異があります。強化計画が無い事とアリシアさんの事やNPの立ち位置などです』


「つまり、アイツは俺と同種か……」


『彼女は非常に有能と考えます。ここでのプロトタイプのわたしが憑り付くほどです。尤も、両者共まだ発育途上と言った所です』


「もう1人のお前はともかく、あんな戦いが出来る奴が発育途上か?冗談がキツイな」



『あの成長速度で行けば純粋な戦闘能力は近い内にあなたに比類するでしょう。超えても可笑しくない』




 テリスは中立的にシンとアリシアを分析する。

 シンの面子など彼は気にする者ではない。

 シンもそんな事は気にしない。




「まぁ、今は置いておくか。成る様になるさ。その時分かる。万が一、敵に回れば叩くそれだけだ。それより、スケジュールの修正はどうなった?」




 彼は今後の予定を確認する。出だしからスケジュールが狂ったのはやはりルシファー撃破が大きく関わる。

 スケジュールではあのルシファーが破壊されない前提で組まれていた節があるのだから当然、修正が必要だ。

 



『修正した未来予測と最善の未来を導くに必要な任務はADに関与したモノに成ります』


「ADか……相応の準備が必要か……それで敵はなんだ?バンカーか?ダッシュか?」





 シンは知っているADの名前を手当たり次第言って見た。




『いえ、そのどれでもありませんし1つでは有りません』


「1つじゃない。だと……」




 戦慄を覚える様な言葉を聴いた。

 ADが2つ以上と言う事実は世界大戦レベルの話だ。

 笑えない冗談としか言えない。更にそれに追い打ちをかける。




『今回のADの内1機は軍が破棄したバビロンR。もう1つについては分かりません』




「分からない?」




『私の予測にも限度があります。ですが、確かに言えるのは近い内にバビロンRと所属不明のADがアフリカ圏で何かを起こすと言う事です』




 何かを起こす。その漠然とした言い方ほど恐ろしいモノはない。

 仮にも大戦中に対国家戦略兵器として開発された兵器だ。

 何かを起こすと言うだけで碌でもない結果になるのは容易に想像出来る。

 万が一にも2機ADが戦う事になれば、地球環境を激変させる可能性すら秘めている。




「場所は?」


『アフリカ圏の旧ニジェールです。その場所の何処かにバビロンRが存在します』


「他の手掛かりは?」


『旧アメリカがアフリカで建造した内の1機がバビロンRであり、大戦後未完成のまま施設ごと破棄されました』




 破棄されていると言う事はもしかするとまだ誰も手をつけていない可能性がある。

 それなら起動前に破壊出来るかも知れない。

 シンはその可能性を考慮して最も知りたい情報をテリスに求めた。




「施設は生きているのか?」


『破棄されてはいますが基地機能は生きています』


「確かあそこは民族紛争地帯だったな。誰もそう簡単に近づけないだろうな」




 だが、それは通常の部隊ならの話だ。

 大部隊が移動すれば、それだけ敵に気付かれ易くなるが一騎当千に近いポテンシャルを持つシンなら隠れながら、進軍して大部隊に接触しなければAD破壊も十分可能だと判断出来た。

 そんなシンの心胆を見抜いてかテリスは心苦しそうに重々しく口を開いた。




『もう1つ、耳に入れたい情報があります』


「なんだ?」


『ここ1ヶ月の間にレベット アシリータがニジェールに行っています』


「何……だと!」




 シンは思わず拳を握り絞め、唇を震わせる。テリスとしてはこの話題には触れたくなかった。

 彼の怒りを煽り立てると分かっていたからだ。

 さっきまで冷静に作戦を練っていたシンの顔から冷静さが欠けてきた。

 顔は赤くなり目は血走っている。

 レベット アシリータその名はこの世では希望の象徴に違いないだろうが、彼にとっては猛毒、この世の汚穢、害悪と相違ない名前だ。

 そんなモノを憎まない人間はいない。




『1月中旬よりペイント社ニジェール支部設立を計画しその様子見の為に何度か足を運んでいる様です』


「レベット アシリータ……あの悪魔か……」




 彼は金属製のコップを握り絞め、中に入ったコーラを煽った。

 普段、美味しく飲めるコーラもこの時は糖分の甘さが足りない気がして美味さを感じなかった。

 自棄酒でも煽るように2リットルのコーラを一気に飲み干す。

 ここまで体に悪い事をしたのはいつ以来、だろうか?と感慨に耽る。

 レベット アシリータ。


 それは彼にとって平和と言う固執を押し付ける悪魔の名前と同じだった。

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