和音の章
旅する子供.1
雲のない空がどこまでも青く広がる。そこへ1羽の鳥が飛んでいたが、次の瞬間、矢に射られて地へと落ちていく。
落ちた鳥のそばに、人間が近づいていく。近づいた人間は、鳥に向かって一礼すると、その足を持って捕まえて後ろを振り向き、もう1人の男に呼びかけた。
「父さん、見ろよ。もう20発も連続で1度も外さずに夕食の獲物を捕まえたよ」
矢を撃った青年の名はスフィヤ。今日で18歳になる。
「ああ、見ていたよ。腕をあげたな」
父と呼ばれた男がゆっくりと近づき息子を褒める。そして2人で丁寧に鳥を捌いて食事の支度を始める。森の近くの高原で永らく野営していた2人にとっては慣れたもので、しばらく寝床としていた土のある地面に火を起こし、大きな葉っぱに包んだ鳥をその炎の中に放り込んだ。
「お前は誕生日は必ず鳥なんだな」
「よく覚えているね」
「お前に最初に会った日がお前の誕生日で、鳥を食べたから」
「そんな前のこと覚えてないや」
笑いながら火に薪を投げ込むスフィヤ。照れたような笑いだ。本当は全て詳細に覚えているのだろう。
「今日でちょうど6年だな。……そろそろ帰るか、家に」
「……早いなあ。うん、そうだね。帰ろう、家に」
そんな会話をしながら、泥の塊を掌に握りしめるスフィヤ。
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