旅立つ子供.2
「ねえ、スフィヤ。あなたが考えてることを聞かせてちょうだい。色々と飛ばし過ぎているわ。私もティファンも、あなたが分からなくて困っているの」
「だから、僕は12歳になったから。旅に連れて行ってもらえるんでしょ?そしてまた僕は自分の意思でここに帰ってくる。しきたりなんて知らないけど、僕がそうしたい。お母さんと12年一緒にいたけど、お父さんとはまだ1日しか一緒にいないもの。男同士で秘密にしたいことも、大人になる僕にはあるからね」
急に大人ぶってそんなことを言い始めるスフィヤに正直言ってラズは困惑しかなかった。なぜ急に考えを変えたのだろうか。それとも本当に心からそう思っているのか……そしてラズは気がついた。スフィヤが荷物ばかりを見て、ラズのことを一切見ようとしないことに。これはスフィヤが嘘をつく時の長年の癖だった。
「急にどうしたんだ、スフィヤ」
ティファンが尋ねても、彼のことさえも見ないように荷物を弄り続けている。さっきの言葉には、少なくとも何か隠し事が含まれている。
「早く行こうよ、お父さん。そして、お母さんも体に気をつけてね。僕、絶対に帰って来るから、それまでここにいてくれなきゃいやだよ?僕だって悩まなかったわけじゃないけど……でも、僕、お父さんとも行きたい……」
ここで初めてスフィヤはラズの顔を見た。目に涙を浮かべて。ここ数年、息子はこんなふうに泣くことがなかったから、ラズは驚いて寝台から降りて、もう一つの寝台の上に座るスフィヤに駆け寄り、彼をしっかりと抱きしめた。
「昨日の夜は……ちゃんと寝れた?」
「……あんまり」
「ごめんね。お母さんたち、うるさかったわよね」
「そうじゃないよ。色々聞こえてきたけど、全部嬉しかった。母さんも、父さんも、いろんなことがあったけど、ちゃんと好きだったんだなって思った。だから僕は要らない子なんかじゃないって、思えたし、嬉しかった。……本当はずっと怖かったんだ。どこかで生きてるはずなのに、どうして父さんは僕のそばにいないんだろうって。悲しい理由があるんじゃないかって、そしてそれが僕のせいなんじゃないかって、ずっと怖かった……」
「「そんなことない!」」
ラズとティファンの声が全く同時に重なった。
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