第44話 学校一の美少女は不機嫌

 おしること甘酒を飲み終えたので、今度こそおみくじを引きに向かう。

 温かい飲み物のおかげでお腹のあたりがほんのり温かく、寒さが少しだけ遠のいた気がした。


 今回ははぐれることなく無事に到着し、早速お金を払って一枚引く。

 期待に胸を膨らませてワクワクしながらおみくじを開くと、結果は末吉。なんとも言えない運勢に苦笑を零す。

 ちらっと横目に彼女の様子を伺うと、ちょうどおみくじの中身を確認しているところだった。

 ゆっくりと丁寧に開いて中を見ている。目をぱちくりと瞬いて、ぱぁっと顔を輝かせた。


「見てください!大吉です!」


 いつもより少し大きい声で朗らかに笑って見せてくる。手に持ったおみくじには確かに大吉と書いてあった。


「よかったな」


 あどけない笑顔で無邪気に喜ぶ様がなんだか微笑ましく、つい笑みが零れる。

 俺の表情に、はっ、と自分がはしゃいでいたことに気付いたらしく、見せていたおみくじをおずおずと引っ込める。そのまま、コホン、と咳払いをして「今のは忘れてください」と言っていそいそとおみくじを読み始めた。

 らしくない行動が恥ずかしかったらしく、ほんのりと頰を薔薇色に色付かせてる姿にまた笑ってしまった。


 参拝もしたしおみくじもやり終えたので、そろそろ帰るかと思っていたら、隣で小さく口を開けてふわぁとあくびをした。


「眠いのか?」


「ええ、少し」


 目尻に涙を浮かべて眠そうに目を擦っている姿はなんだか猫っぽい。ほんと小動物っぽいんだよな、となんてことはない感想が頭に浮かんだ。


「じゃあ、帰るか。送ってく」


「1人で帰れますよ?小学生でもないですし」


 どうやら彼女は自分が女の子という自覚がないらしい。それもとびっきりの美少女という。

 こんな深夜の夜道を女の子1人で歩いていたら、万が一があるし危ない。それにお世話になっている身でもあるし、今回のを誘ったのは自分なので帰るときも送るのが筋というものだろう。

 何より女の子を1人で勝手に帰らせては男が廃るというものだ。


「そういう意味じゃねえよ。お前も女の子だから危ないだろ。そんなに可愛いんだから余計にな」


 容姿の優れた女の子であるから気をつけなければいけないと忠告すると、彼女はきゅっと口元を結んだ。どうした?と思えば、背を向けスタスタと先へ歩き出してしまった。


「え、おい」


 慌てて声をかけるとピタッと止まって、俯き加減にゆっくりとこちらを向いた。


「……あなたのそういうところずるいです」


「何がだよ……」


「……なんでもないです」


 責められるようなことをしただろうか、と問い掛ければ、ぷいっとそっぽを向いてしまう。

 ただ、一緒に帰ってはくれるらしく「ほら、行きますよ」と一言残して歩き出した。

 一体なんなんだ、と首を傾げながら彼女を追いかけた。

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