もっと、私をイライラさせてよ。

ABC

第1話 入学

私の名前は、アイカ。


この春、志望していた高校に無事に合格し、入学した。



緊迫したクラスに入って席に座り、担任らしき先生が入ってくると空気は、より一層緊迫した。


その人は自己紹介をして、私たちにも自己紹介をするように強制した。


その日一日が終わり、放課後は部活見学にあてるようにと言われた私たちは各自、見学したい部活をまわることになった。


中学の時、部活をしていなかった私は、高校に入ったら陸上部に入りたいと思っていた。足が速くなりたいのと筋肉を付け、締まった体になりたいと思っていたからだ。


陸上部が練習をしているという、グラウンドに行くと、派手な服を着た選手たちが颯爽と走っていた。私は、一目見てその姿に心を奪われ、私もそうなりたい、と強く心から思った。


選手たちの姿を眺めていると、後ろから声をかけられ、陸上部の見学をしにきた、と話すと、その人は陸上部のマネージャーさんらしく、その人が見学者専用のベンチに案内してくれた。少し待っていて、と言われ、また選手たちの姿を眺めていたら、後ろからバタバタと急いで駆けてくる足音が聞こえた。後ろを振り返ると、三人の女子が息を切らしながら駆けてきていた。三人の顔を見て私は一瞬で分かった。この人たちは同じクラスの人だ、と。自己紹介をさせられていた時、私たちは一人ずつ立たされていた。私は、その時に丹念に一人一人の顔を見ていたから、クラスに誰が、どのような人がいるのかはだいたい把握していた。


マネージャーさんが戻ってきたのを確認してから、私は、そんなに焦ってどうしたんだろう、この人たちももしかしたら陸上部の見学に来たのかな、いや、でも、近くに体育館があるから、もしかしたらその中でやっている部活の見学なのかな、と思いながら三人を見ていた。すると、三人は、マネージャーさんに詰め寄り、まだ見学いけますか、と大きな声で言った。案の定、マネージャーは驚いた顔をしてから、まだ大丈夫まだ大丈夫と三人を諭すように言った。三人はよかったーーと崩れ落ちてお互いに顔を見合わせて笑い合ってから、マネージャーさんにベンチに案内され、その時初めて私のことを見たのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る