姉妹喧嘩


「ダメ、絶対」



ぎゅうっと掴む腕に力が籠められる。痛い。力加減を知らないのかこの女は。


――あぁ、実に煩わしい。


まだご飯だって食べて無い。お腹がペコペコなんだ。


それに、栄養が足りないとおっぱいが育たない。めっちゃ困る。


だけど、この状況で逃げることは不可能だ。この腕を振り解けないし、そもそも走ってもすぐ追い付かれる。


だから、とっても不愉快だけど。私はそいつの方に目を向ける。



「短めにしてね、お姉ちゃん」



嫌味たっぷりに、そう吐き出す。


すると、女の顔が少し歪む。そうそう、そういう顔の方が似合ってるよ。



「言われなくてもそうするよ。私だって、あんたと長時間喋ってたく無いからね」


「……チッ」



本当にになんなんコイツ。自分から誘っといて。


私は聞こえるように、あえて大きく舌打ちをする。



「……あの写真、何」


「おっぱい」


「バカにしてるの?」


「今更?」


「チッ」



大きく舌打ちをする。いちいち聞こえるようにしなくて良いじゃん。うっとうしいな。



「あんなのでまー君が落ちると思ってるの?」


「それはそっくりそのまま返す」


「……知らないと思うけどね、まー君はおま〇こが好きなんだよ」


「……それは単なる勘違い。おっぱいの方が絶対好きだもん」



だって、いつも私のをジロジロ見てくる。きっとあれはかなりのおっぱい好きのはずだ。



「あーもう本当にイライラするっ」


「奇遇だね。私も」


「……このままじゃいつまでも埒が明かないから、率直に言うよ」


「どうぞ」






「まー君から手を引いて」







……本当に昔から生意気な女だ。妹の私を下に見やがって。



「そんなの、嫌に決まってる――」




私は感情をあんまり顔に出さない。


多分、正幸君からは私がそれをするのが不得意だと思われているはずだ。


だけど違う。私はあの人の前ではそうしてるだけで。


本当は、いっぱい表情を作ることが出来るんだ。




だから私はニヤッと口端を釣り上げて、こう宣戦布告する。






「――正幸君は、私が貰う」












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