第77話 廣瀬と会った。①



 これは前回の続きで時系列は7月中旬となります。


 それではお楽しみください(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾




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 時刻は夜の7時前、俺は廣瀬から指定されたお店へやって来た。ここもまた高そうな料亭だ……


 俺は中へ入った。すると女将さんらしき人が応対してくれた。


『お名前を伺ってもよろしいですか?』


『児島です。』


『児島様ですか、それでは案内致しますのでこちらはどうぞ。』


 俺は奥にある個室へ案内された。そして女将さんが扉を開けると既に廣瀬がいた。


『やあ、児島君。久しぶりだね。そちらに座ってくれ。』


『お久しぶりです。わかりました。』


 俺は廣瀬の言う通りの場所へ座った。まあこちらが下座となるのは気にはしないが、配慮はないんだろうな。


『今日はわざわざ来てくれてありがとう。』


『いえ、特に用事もないので……』


『そうだ、料理は既に頼んであるので気を使わず楽しんで欲しい。』


『はぁ……』


 こんな特に仲のよくない人と2人で料理を食べても楽しくないわ…… 会社の接待並みに辛いわ……


『それでだ、今日は君にお礼をしたくて呼んだわけだ。』


『お礼なら大丈夫ですよ。特に問題もないので。』


『それでは私の気が済まない。偽装結婚をさせていたわけなんだから。今から部下を呼ぶのでこちらを受け取って欲しい。』


 廣瀬は電話で部下を呼び出した。暫くして部下がスーツケースを持ってやって来た。


『お礼はこのスーツケースにある。中を今から見せよう。』


 部下はスーツケースの鍵を開けて中を見せて来た。中にあったのは現金の山だった……


『ざっと、ここに2億円ある。贈与税を払って1億弱といった所だ。これが私の気持ちだ。』


 いや、こんなの受け取らないだろ…… 何があるかたまったものじゃない…… しかも偽装結婚を頼まれた時より金額増えてないか……?


『いや、こんなの受け取らないですよ…… 私はコツコツ働いて貯金しますので……』


『そう言わないでくれ。これは一つの取引なんだから。』


『取引と言いますと……?』


『児島君は私と彩が別れた事を知っているね?』


『まあ、はい。』


『それでこの偽装結婚を頼んだのが俺だと口外して欲しくはないんだ。』


『えっと、もちろん口外はしませんよ。』


『それにもう一つ頼みたい事があるんだ。』


『あ、はい……』


『彩と今後一切関わらないでくれ。もう偽装結婚する必要は無いんだから。』


 は? 何でお前がそんな事決めるわけ? それは俺と彩の問題だろ。これは流石に飲めないわ……


『いや、それは流石に貴方に頼まれる事じゃないんで……』


『だからここにお礼を兼ねて2億円を用意している。どうかこれを飲んでくれないか?』


『いや、無理ですよ。すみません、これが条件ならもう帰りますね。』


『いや、ちょっと待ってくれ…… 良いのか、本当にこれを飲まずに帰っても?』


『は? 何ですか?』


『おい、あれを出せ。』


 廣瀬は部下に何かを命令した。出てきたのは写真だった。


『お前が、会社の同僚とデートしている所を写真に撮らせてもらった。それも2人だ。これが何を意味するかわかるだろう?』


 写真は俺と長友さん、早乙女さんがそれぞれ先月デートした時のものだった…… しかもそれぞれ親密にしているような場面だ…… どうしてこんな写真が…… きちんとマスコミ対策でマンションから車で行ったのに……


 ああ、そうか…… 廣瀬はこれを見越してずっと俺を監視していたのか…… だからマンションからでも追ってこれたのか。その辺の週刊誌とは俺の情報量が違うからな。


『それでこの写真で俺を脅すという訳ですか?』


『そうだな。お前がこれを飲まない限り会社にこの写真を渡す。そしたらお前はもう会社にいられない雰囲気になるだろう。なんなら俺からお前の会社に働きかけてクビにすることも出来る。』


 社内不倫をしたらお互いどこか辺境な部署に飛ばされるくらいにはなるだろうな。俺のクビは構わないが、2人に危害が加わる事はダメだ。


『俺のクビは構いませんが、同僚達を巻き込もうと考えていますか?』


『そうだな…… それは流石にやらないな。同僚には罪は無い。ただお前は俺の人生を変えたんだ。この条件を飲むか、人生をめちゃくちゃにされるかせいぜい選んでくれ。』


 俺はどうすれば良いんだろう…… 自分がただ2億円を受け取れば、自分の人生が保証される。それにお金に余裕をも出来る。ただ2億円を受け取らなければ、俺は会社をクビになる。普通なら前者だな。


 ただこの写真から長友さんと早乙女さんと判断出来るのは誰一人いないだろう。きちんと俺だけ顔をうつるような構図になっている。まあ2人に毎日会っているような人にはわかるかもしれないが……


 俺はどちらの選択も選べないでいた……


『まあそうだな、今すぐに結論を出せとは言わない。少し考える時間をやろう。そうだな……2時間程度やろう。俺は忙しいけどそれぐらいは寛大だ。その間じっくりと悩むが良いよ。俺は2時間後に帰ってくるよ。それじゃあね。』


 そう言って廣瀬は料亭を出て行った。ただ広い個室の中に俺1人となった。


 そして暫くして料理が運ばれてきた。ただこのような出来事があったため口に運ぶ気力が無いし、結論を悩んでいるため食事どころでは無い……




 そして2時間ほど経った頃、廣瀬が料亭へと帰ってきた。


『どうだ。お前の結論は決まったか?』


 俺は…… 結論を出した。そして今からそれを話す……


『ええ、決まりましたよ。俺は………』



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