第8話 居場所
食堂で昼食を終えた一同は、談話室へ戻った。
誰かと食事をするなんて数年ぶりだった。
マリウスは嬉しさのあまり口元が緩んだ。
「…もうバレちゃったけど、パーティーの準備するからちょっと外ぶらぶらしといて!!!」
席に着くなり、マリウスは部屋から追い出されてしまった。
「…まいったな。」
特にすることもないので、クリムゾン本部を探検することにした。
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…しまった。迷ってしまった。
マリウスはそばにあったベンチに腰掛けた。
訪れて数日しか経っていない、学校の何倍もある建物だ。迷うのは必然だったのかもしれない。
時刻は16時。そろそろ戻らないと。
せっかく準備してくれたのに遅れるのは失礼だ。マリウスは慌てて立って小走りで進んだ。
(誰かいないかな…?)
手当り次第走り回って数分。
誰かに道を尋ねられればいいのだが。
キョロキョロ辺りを見回すと_______________
ハドリアヌスが喫煙所でタバコを吸っていた。
マリウスに気がついたのか、ハドリアヌスはタバコを灰皿に捨てて外に出てきた。
「よぉ、元気かクソガキ?」
サングラスをかけ直しながら、ハドリアヌスは笑いながら言った。
「…はい。怪我も治りました。」
「へっ…そうかい。なら、頑張って訓練して強くなってくれたまえ。期待の新人くん?」
そう言ってハドリアヌスは去っていった。
使えなくても即潰すからな?
ハドリアヌスの言葉が頭に浮かび、マリウスは唾を飲み込んだ。
「…あ、道聞くの忘れた。」
色々積み重なりマリウスは肩を落とした。
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結局なんだかんだで談話室に帰れたのは、それから30分後だった。
扉を開けて中に入ると同時に、耳を突き刺す破裂音が相次いでした。
「マリウスくん!!!!!!!ご入隊おめでとーーーーーーう!!!!」
カエデがそう叫ぶと、ユースケとクレーエも続いて言った。
「よろしくな!大丈夫!お前ならモテるって!」
「…よろしくな。」
そんな中、ロキは
「ケーキはまだか?さっさと食わせろ。」
と、駄々をこねていた。
「ロキさん、主役はマリウスくんですからね?」
カエデは呆れながらクラッカーのテープを集めている。今になって火薬の匂いが鼻にきた。
結局ケーキのほとんどはロキが食べてしまったり、
クレーエがめちゃくちゃ酒に弱かったり、ユースケが泣き上戸だったりと、カエデが実は大食いだったりと、とても混沌としていた。
(…こういうのも案外悪くないかもな。)
いつも、1人だった。
こんな風にパーティーをするなんて、いつぶりだろう。
マリウスはバレないように目の縁を拭った。
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