第4話 クソシンデレラストーリー

学校から飛び立って数分。

すぐにクリムゾン本部にたどり着いた。


ピエロのせいで怪我をしていたマリウスはまず医務室に運ばれ、治療を受けた。

肋骨がイカれてしまったらしい。


治療してしばらく経ったあと、マリウスは別室に呼び出された。きっとあの時の状況などを聞かれるんだろう。でも自分でもわかってないしどうしよう…

そんなことをぼんやりと考えていたが、案内された部屋は「幹部会議室」と書かれていた。


「…え?」


状況が呑み込めないまま、中へと入らされた。

そこには明らかに権力者といった雰囲気の者が5人いた。


黒髪ロングですらっと背が高い、「美人」という言葉がピッタリの女。

スキンヘッドで肩幅が通常の2倍ありそうな、「巨人」という言葉がピッタリの男。

青髪オールバックで片眼鏡をかけ、「執事」という言葉がピッタリの男。

金髪でサングラスをかけ、左目の上から顎までの傷跡がある、「ヤクザ」という言葉がピッタリの男。

白髪で口を覆う長い髭が特徴の、「老人」という言葉がピッタリの男。


彼らは、五賢帝。

クリムゾンの最高権力者達だ。


「まぁ座りたまえ。」


老人_________トラヤヌスが重い口調で言った。


マリウスは会議室の中央にある椅子へ向かい、痛みを感じないようにゆっくりと座った。


「あなたの治療をしている最中に血液鑑定をしたのだけど…結果は-γ型だったわ。何故、α型なんて嘘をついたのかしら?」


黒髪ロングの女性________ネルヴァが鋭い目でこちらを見ながら問いかけた。


「嘘も何も、僕は本当にα型です!!!能力なんて何も使えません!!!」


そんなのありえない。

-γ型なんて、この国の人口1億人のうちに1000人にもいない希少種だ。

もしそうならずっと見下されているはずがない。

マリウスの呼吸がだんだんと荒くなる。


「後天性能力開花。ごく稀に、成長して突然能力が使えるようになる人がいるのよ。後天性能力開花はより一層能力が強くなる傾向があるわ。それにあなた、ご両親はいないのでしょ?何かの手違いで血液型を調べることが出来なくて、β型の特徴もγ型の特徴も出なかったからα型と決めつけられた可能性が…」


ネルヴァがそこまで言うと、執事________マルクスが遮ってこう切り出した。


「忙しいので結論を言わせてもらおう。クリムゾンは、君を最重要危険人物に指定することを決定した。つまり我々は君がおかしな行動を取ろうものならいつでも殺すことが出来るのだよ。」


マルクスは淡々と機械のように心が感じられない声で話し続けた。


「…だが、だ。それでは宝をドブに捨てるようなもの。はっきり言おう。我々は君を利用するつもりだ。選んでくれ…今ここで死ぬか、クリムゾンに協力するかを。」


巨人________アントニヌスが問いかけた。

凄まじい威圧感。今にも押しつぶされそうだ。


「まぁ使えなくても即潰すからな?」


ヤクザ________ハドリアヌスも続いてそう吐き捨て、、高らかに笑った。


自分には拒否権などないんだと思い知らされ、マリウスは首を縦に振るしかなかった。

マリウスは一礼して会議室を後にした。



扉を開け外に出ると、そのまま床に座り込んでしまった。


ずっと見下されてたのに、実はピラミッドの頂点だったなんて。

今までの苦痛は一体なんだったんだ。

頂点とわかったらわかったで、すぐに首輪をつけられて。どこにいっても自由なんてなかった。


「はは…。はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」


この逆転ストーリーは救済ではなく絶望だった。

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