第3話 分岐点2
「何が、起きたんだ…!!!???」
α型がどんなに強く殴ったとしても、能力持ちの相手はせいぜいバランスを崩す程度だ。
しかしマリウスはピエロを数十メートル先へと吹き飛ばし、その衝撃で昇降口をも消し飛ばしてしまった。
何が起こったのかマリウスは理解できず混乱していると、再びグラウンドに重く鈍い音が響き渡った。
今度は2人、ピエロと同じようにグラウンドに着地したらしい。
1人は軍服とワンピースを合わせたような服を着ていて、帽子を浅く被ったピンク髪の女。
背は平均くらいで、女性らしい曲線的な体型をしている。
もう1人はブカブカの軍服を雑に着て、帽子を深く被りマスクをした黒髪の男。
背は高いが猫背で、不自然な程に痩せていたりクマが凄かったりと、とても不健康そうだ。
対照的な2人だが、どちらも軍服には「クリムゾン」のエンブレムが刻まれていた。
クリムゾン。
特殊能力が溢れかえるこの世界で、力を悪用して犯罪や戦争に使う輩が出てくるのは必然的だろう。
その取り締まりや対抗手段_______警察活動と軍事活動を合わせもった組織が、クリムゾンだ。
「これはどういうこと…!?」
女性の方が校舎を見るなり目を見開いた。
そしてマリウスに気がつき、慌てて駆け寄った。
「キミ、大丈夫!?私はクリムゾン本部のカエデ。ここで何が起こったの!?」
カエデと名乗った女性はかなり動揺しているようだ。どうやら通り魔事件の犯人であるピエロを追っていて、やっと追いついたと思ったらこんな状況になっていたらしい。
「それがわからないんです…。ピエロのお面をつけたやつに殺されそうになって、殴り返したらこんなことに…。」
マリウスも状況が呑み込めず混乱していたが、なんとか整理してありのままカエデに伝えた。
「え…?キミがやっつけてくれたの…?…すごい!!」
カエデは目を輝かせて詰め寄った。
あまりの近さにマリウスは思わず顔を赤らめた。
…照れている場合ではない。完全に誤解を与えている。
「で、でも違うんです!僕はα型でこんなこと出来るはずないというか…」
「あ、α型!?そんなわけないじゃない!!!α型なら反撃もできず殺されてるわよ!!!」
「いや、でも本当に…」
2人が噛み合わない会話をしているうちに、もう1人の男の方_____クレーエが先生に状況を説明、壁にめり込んでいたピエロを回収して戻ってきた。
「おい、帰るぞ」
クレーエはボソリと呟き2人の横を通り過ぎたかと思うと、彼の体は大きなカラスに変わっていた。
形態変化______《マオホロジカルチェンジ》。γ型だろう。
わかったわよ、とカエデはため息混じりに言って、ピエロを抱えクレーエの背中に飛び乗った。
「…詳しい話は署で聞くから、早くキミも乗って!」
カエデはやれやれ、といった感じでマリウスにそう言った。
(なんかまるで僕が犯人みたいだな…)
そんなことを思いながらも体育祭をサボれるならいいや、ということで素直に従うことにした。
クレーエが空に飛び立ったあと昇降口を見下ろすと、生徒達があつまりすごい騒ぎになっていた。
見つかんなくてよかった。
マリウスは胸をなでおろした。
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