あなたに贈る唄があるんだ。

ハモ太郎

第1話 プロローグ

「もう、解散しよう。」


その一言を放って、私はスタジオを後にした。


大きなチャンスを逃し、すべてを失った。

もう私は、「バンドマン」じゃなくなる。



まだ日が落ち切っていない夕暮れに向かって、ただただ歩く。

反対側に伸びた影は、私を嘲笑うかのように揺れている。


首からぶら下げていたヘッドフォンをつけ、音楽プレイヤ―の再生ボタンを押す。

毎日欠かさず聴いている大好きなバンドの歌が流れる。

つい最近メジャーデビューした彼らの歌声は力強く、今の自分が余計にみじめに思えてくる。


慌てて次の曲に切り替えると、そこからは今まで必死に練習していた自分たちの曲が聞こえてきた。

つい昨日まで、仲間たちとメジャーデビューを目指すんだと信じていたのに。

あんなに頑張って練習して、あともう少しで夢を掴めるところだったのに。



「もう…バンドなんてやらない…」

そう呟いて、私はバンドのグループラインを消した。

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