回顧-1
退屈な故郷にいるのがいやで、勇者を目指して冒険者になろうと思った。
13歳で村を出て、この町を訪れ、未成年者の新人に推奨されている【荷運び】のクラスを得て、荷物持ちとして冒険者のサポートを行った。
買い出しなんかの雑用が得意なおかげか、いろんな冒険者がかわいがってくれた。
およそ2年が経ち、そろそろ15歳の成人を迎えようかというとき、いつものように冒険者ギルドを訪れた。
「レオンくん、そういえばもうすぐ成人だったわね?」
「はい、おかげさまで」
「どう、おねーさんと結婚しない?」
「あはは、冗談はよしてくださいよ」
ついに俺にもミリアムさんの求婚が来たかー、なんてことで成人になることを実感しながら、冒険者ギルドで荷物持ちを必要としているパーティーを探していると、美しい女性に出会った。
――レベッカだった。
ひと目惚れだったのかもしれない。
俺は彼女から目を離せなくなった。
「人の女ぁじろじろ見てんじゃねぇ!!」
狼獣人の脚力で、思い切り蹴飛ばされた。
ウォルフとの出会いは最悪だった。
レベッカがとりなしてくれ、とりあえず一緒に食事をとることになった。
「へぇ、若いのにすごいじゃない!」
俺の【荷運び】レベルが10を超えていると知って、レベッカはそう言って褒めてくれた。
彼女がウォルフの恋人なのだと知ってもなお、俺は褒められたことが嬉しく、誇らしかった。
最近パーティーを組んだばかりのふたりは、荷物持ちを探していて俺を誘ってくれたが、もうすぐ成人なので、できれば戦闘職としてメンバーにしてもらえないかを頼んでみた。
「だったら【赤魔道士】がいいと思うわ!」
レベッカは無邪気にそう言った。
発足したばかりの狼牙剣乱は、【戦士】のウォルフと【弓士】のレベッカのふたりだけだった。
そこに黒魔法と白魔法、そして剣術が使える【赤魔道士】が入れば、牽制や回復、支援などで上手くサポートできるだろう。
そのうえ、俺にはそこそこ容量の大きい〈
荷物持ち兼サポートメンバーとして、有用であることは間違いなく、俺は【赤魔道士】になることをふたつ返事でオーケーした。
「正気なの? ハズレクラスよ!? だったら私のお婿さんになったほうが絶対いいわよ!!」
二年の【荷運び】活動で顔なじみになっていたミリアムさんからは止められたが、俺はレベッカと同じパーティーに入りたくて、【赤魔道士】になった。
「くれぐれも、
レベッカと同じパーティーに入れると浮かれていた俺は、ミリアムさんの言葉を聞き流していた。
「へぇ、やるじゃねぇか」
「ほんと、思ってた以上に強いわね」
他の戦闘職と比べてレベルの上がりやすい【赤魔道士】は、その万能性もあって大いに活躍できた。
レベルが上がり、能力が強化され、魔法を覚える。
どんどん強くなっていくのが楽しくて、俺は戦いに明け暮れた。
気がつけば、
「ねぇ、最近がんばってるみたいけど、まさか【赤魔道士】の
「いやぁ、あはは……」
ミリアムさんの追求をのらりくらりとかわしながら、俺は【赤魔道士】として活動を続けていた。
「最近、ちょっと頭打ちよね」
そんな中、ウォルフとレベッカは着実にレベルを上げ、それぞれ中級職の【騎士】と【狙撃手】になっていた。
レベルがあがらず、剣術は中途半端で、初級魔法の一部しか使えない俺は徐々にふたりの足を引っ張るようになっていった。
「黒魔法を伸ばしてみたらどうかしら?」
たしかに強くなったふたりと俺とのあいだを埋めるには、初級とはいえもう少し強力な魔法が欲しかった。
そこで俺は【黒魔道士】にクラスチェンジした。
このころから、野営をするようになった。
日帰りでいける範囲では手応えがなく、旨みも少なくなっていたからだ。
そして俺は、ふたりと同じパーティーになったことを初めて後悔した。
狭いテントにはふたりが寝て、俺は外で寝袋に入る、というのが、このころの狼牙剣乱の野営スタイルだった。
そしてふたりきりでテントにこもるウォルフとレベッカは、毎晩のようにやりまくっていた。
なんの魔法効果も付与されていない安物のテントだから、声も音も丸聞こえだ。
布一枚隔てた向こう側で、レベッカがウォルフに犯されている。
そう思うと、なんだか悔しくて、情けなくて……。
「うっ……!」
でもその音を聞きながらするオナニーを、俺はやめられなかった。
「あら、起きてたの、レオン?」
何度か繰り返して野営にも慣れたころ、いつものようにセックスを終えたレベッカが、全裸のままテントの外に出てきた。
「ふふ、開放感があって気持ちいいわね、こういうのって」
くすんだ金髪は乱れ、肌の表面には汗が滲んでいる。
「さっきからどこ見てるのよ、エッチ」
「あ、いや、その……」
俺はドギマギしながらも、結局レベッカから視線を外せずにいた。
「ねぇレオン、あなたも、したい……?」
俺は無言で何度も頷いた。
「うふ……じゃあウォルフより強くなったらね?」
そういうと、彼女は俺に背を向け、テントに戻っていった。
それ以降も、レベッカは何度か俺をからかうように誘惑した。
襲いかかりそうになることもあったが、ウォルフにバレたときのことを考えると、怖くて動けなくなった。
それ以前に、俺じゃあレベッカを抑え込めなかっただろう。
彼女が同意しない限り。
そんな活動は、ロイドが加入するまで続いた。
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