第1話 幼馴染からフラれた後の話

幼馴染であり、同級生である齋藤陽葵にダメ元で告白し、フラれた。


フラれた俺はショックを隠しきれないまま玄関のドアを開ける。


自室に行き、リビングに戻ると妹の舞菜(まいな)が話しかけてきた。


「お兄ちゃん、どうだった?告白上手くいった?」


「フラれちゃった…ごめんな」


妹の舞菜は俺の恋を応援してくれていた。

時々、俺の恋愛にも乗ってくれた、優しい妹である。


「そっか…まあ、お兄ちゃんなら大丈夫!」


妹から慰められる。妹だからか、なんだかとても虚しい。


家族といつも通り夕飯を食べ、お風呂に入った後俺は自室で悩んでいた。


今日の事が原因で、俺は恐らく今後陽葵と幼馴染という関係とか無しに一緒に帰ることも、会話することも無くなるだろう。


出来ることなら数時間前に戻りたい。フラれるということを何となく分かっていながら告白した自分を殴りたい。


結局、俺も陽葵から見ればただの異性の幼馴染なのだろう。


俺は告白した自分を恨み、ベッドの中に入りこんだ。





翌日、俺はいつもと変わらず一人で学校に行き、教室に入る。


教室に先に来ていた陽葵と目が合い、少し気まずくなったが、俺は動揺を隠しながら友達との会話を続けた。


そして、いつものように授業を受ける。昼は友達と昼食を食べ、午後の授業は睡魔と格闘しながらまた授業を受ける。


そんな何もない一日だ。そう思っていた。


「これで今日の授業を終わりにします。」


今日一日の授業が終わった。


俺はリュックを背負い、教室を出ようとした時だった。


「待って」


後ろから俺を止める声が聞こえた。


振り向くと、そこには陽葵がいた。


「…ん?どうした?」


「ちょっと話があってさ…」


昨日俺を振ったはずの陽葵から話があると聞き、俺は少し戸惑った。


「ああ、なんだ?」


俺は陽葵に話の内容を聞こうとする。


すると次の瞬間、陽葵から衝撃の一言が放たれた。


「私と……付き合ってください!」


「………え?」


聞き間違いか?俺は今陽葵に告白…されたのか?


あまりにも想定外の一言に俺は聞き返す事しか出来なかった。


「だから…私と付き合ってください!」


えぇ!?聞き間違いじゃない!?


しかし、昨日間違いなく俺は陽葵に告白をし、フラれている。


「え?でも昨日俺の事を振ったんじゃ…」


「実はね?ずっと前から裕太の事は好きだったの」


「えぇ!?」


「でもね…」


陽葵からの話を聞くと、どうやら昨日俺から告白された事に驚きを隠せなかったことと、告白した時の俺の表情を見て嘘コクだと思ってしまったらしい。


俺どんな表情して告白してたの!?てかそんな事ある!?


その後、陽葵は俺の妹である舞菜に告白の事を相談したらしい。そこで俺が本当に陽葵の事が好きで告白したと分かったらしい。


「マジか…そうだったのか…」


「なんかごめんね?一回振ったみたいになっちゃって」


「いやいや!大丈夫だよ」


「でも安心して?私の好きな人は昔も今も裕太だよ♡」


こうして、一度フラれたはずの幼馴染との恋人としての生活が始まった。

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