第84話 遠くへ
「紙を42回折ったら月に届くんだって」
あの子は笑っていた。
「紙より厚いものなら、もっと遠くへ行けるかなあ?」
あの子はいなくなった。
リビングの床には二つの赤黒い塊。
ぐしゃぐしゃに折り畳まれたあの子の両親だった。
あの子は行けただろうか。
望んでいた、遠くへ。
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