第70話 帰れない
「帰れないの」
少女は暗い波を見つめてくすんくすんと泣いていた。
その表情は日傘に隠れて見えない。
「遊んじゃいけないとこで遊んだの。お母さんに怒られるの。帰れないの」
大丈夫だよ、と顔を覗きこんだ。
少女の顔はフジツボに覆われ、目の辺りからイソギンチャクが涙のように溢れた。
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