意気揚々
そんなわけで、翌日、イティラとウルイは、人生の大先輩であるキトゥハに意見を窺うべく、二人で彼の下に赴くことになった。
一度、キトゥハの方から訪ねてくれたことはあったが、イティラ達からとなると、実に十年近くぶりということになる。
彼の娘が孫を連れて帰ってきたそうだから、おそらく今でも同じところに住んでいるとは思うものの、もしかすると別なところに移り住んでいる可能性も、ないわけじゃない。
もし会えなくとも、『そういうものだ』とは、二人とも思っていた。
そしてウルイは、キトゥハに会えなかった時点で、イティラのことを<成人>として認めてもいいと実は考えていた。
『キトゥハなら、今のイティラを見て成人だと認めてくれそうな気がするしな……』
そんな予感もあったのだ。
実際、彼女はもう一人前に狩りもこなす。二人で協力した方が確実に狩りができるからそうするというだけなのも事実だ。
ただ、幼い頃から彼女のことを見てきているから、どうしてもその頃の印象に引っ張られてしまっているというのも、ウルイ自身、感じてもいた。
その辺りで自分では客観的に見られないから、キトゥハにはっきりさせてもらいたかったというのもある。
『そんなことを考えてる俺自身が、まだまだ大人になりきれていないんだろうな……』
とも、思ってしまう。
イティラのことを<子供>だなどと、言えた義理ではないのだと。
いずれ自分もそういう部分も含めて大人になっていかなければと、彼自身、思ってもいた。
とても大人とは言えない面があることを素直に認め、自身も成長していかなければいけないと考えることができるのも、ウルイという人物だった。
そしてイティラは、彼のそういうところも好きなのだろう。謙虚で、誠実で、かつ前向きなところが。
正直なところ、人間が多く住む街に行ったとしても、ウルイほどの相手はそうそう見付かるとも思えない。
イティラが彼を男性として好きになるのも、何も不思議ではないのだろう。何しろ『血が繋がっていない』のだから。
そんなわけでイティラは、キトゥハに成人であることを認めてもらうべく、意気揚々と歩いた。なのに、
「…って、方向はこっちであってたんだっけ…?」
自信満々な様子でズンズンと進んでいたというのに、ふと立ち止まり、振り返ってそんなことも訊いてくる。
こういうところを見ると、やっぱりまだ子供っぽさもあると思ってしまう。
「ああ、そっちで間違いない」
思わず頬をほころばせながら、ウルイはイティラの後ろを歩いたのだった。
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