〜ここから再び〜

みんなは〝パラレルワールド〟とも言うものを信じるだろうか

又は〝前世の記憶〟〝予知夢〟そう言った非現実的ものを


僕にはおじいちゃんがいる

父母とは別居しているのか田舎の遠い土地に住んでいる

ある日連絡が来て行くと、父と母の近くの所に移り住む決心をしたらしい

こんな田舎から都会で一緒に暮らそうと言ってきた、両親の思いでも届いたのだろうか

あの頑固としてここから離れなかったおじいちゃんが、それを言ってきて両親共にびっくりしていた


ただ移り住む上で条件として僕と3日間だけ一緒に、この何もない田舎で生活したいと言う

〝なんでこんな田舎に居ないといけないんだ〟

そう思いながらも、老い先短いであろうおじいちゃんの、そのわがままに付き合う


両親は僕に荷物をまとめる手伝いをしろ

とだけ言い残し帰っていく

両親が帰りおじいちゃんと一緒に部屋でくつろいでいると、いきなり僕に

「久しぶりだな白命」

と優しく声をかける

僕は田舎での3日間の生活を思うと憂鬱で

「なんなのおじいちゃん」

とふてぶてしく答える。


そんな僕の会話を無視するように

「見せたいものがあるんだけど、ついてきてくれんかの」

と言いながらおじいさんは、本棚の本を1つ本の中に押し込んだ。

すると1つの本棚が奥へとへっこみ、おじいさんはその本棚を横にズラす


するとその奥に通路が見える

おじいちゃんの家にこんな隠し通路があるとは、想像もしていなかったから驚く

そんな僕をおじいちゃんは呼ぶと、そのまま先へと歩き始めた

僕も不思議なその通路に惹かれて後をついていく


あれから少し歩いた所に扉が現れた

ここはいわゆる隠し部屋という所だと思う

「おじいちゃんここに何があるの」

そう問いかけるとおじいちゃんは

「世界の鍵」

とだけこぼす

よく分からないその単語に、どこか懐かしい響きを感じながら中に入る


中に入ると一面ホコリがたまっていた。

長年使ってなかったようだ

おじいちゃんはその奥にある机から一つのファイルを取り出すと僕に渡してきた

「これなに、おじいちゃん」

そう問いかけるがやはり答えはなかった。


僕はその預かったファイルを開く

そこには研究資料らしきものがありこう書いてあった

「滅んだ世界の遺物 解読文書」

その文面にどこか見覚えがある気がして

大切にしまってあったその資料を取り出すと

僕は何も言わずにそれを黙々と読み始めるのだった


あれからどれだけ経っただろうか

読み終えた時に僕の中には、僕であって僕でない〝白命〟という人物の記憶があった


彼は資料の力を使って世界を崩壊に導いて後悔していた

そしてそれを止めるために、死んでなお努力していたらしい

それでも世界の崩壊は決められた運命に沿って動いたらしい


そんなまだ見たことの無い、まだ起きてもいないその記憶の中の人生

それでも僕はそれが現実にあった事だとそう思えた

まるであの時彼が〝崩壊〟ではなく〝リセット〟を選んだから

またその始まりを繰り返すように今僕がこの場にいる

そんな運命のいたずらにすら感じていた


研究資料を読み終えた僕は外に出ると空を見上げた


そこにはいつもと変わりない空がある

そんな空を見ながら僕は

〝この記憶を持つ僕は、この受け継がれた記憶をこの世界でたった1人で背負うだろう

しかしこの記憶のような惨劇は起こすべきではない〟

そう強く思った


僕はおじいちゃんに言って、ライターとドラム缶を貰うと研究資料を一切の跡形もなく燃やした


この行動がこの先、世界にどう影響するかなんて僕にだって分からない

ただ一つ言えるのは、本当に小さな選択が大きく世界を変えることだってあるという事だけだ


だからここから世界は始まるのだろう


先の見えない、まだ来ない未来に向けて


だからちっぽけな僕に出来ることを

ただひたすらにしていくしかない


〝そう僕は僕の人生と言う道を作っていくのだ

ここから再びー〟

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