〜崩壊〜
組織の一員として白命はその者たちと裏で暗躍していた
くるべき楽園計画を止める為に
そしてとうとうその日がやってきた
テレビにはリスト教団幹部の全員が集結していた
〝はじまる、自らの手で文明を壊し、自殺に追いやる恐ろしい計画、楽園計画が〟
そう白命が身構える様にテレビを見ていた
しかし白命はその時驚きを隠せなかった
それはリスト教団を止める為に暗躍していた全ての人すら、予想していなかった事だった
彼らはテレビの向こうで全国民にこう告げた
「私たちリスト教団は多くの過ちを繰り返す者がいた
そして人々はそれに抗う力を持たず、いつも蹂躙されるばかり
だから私たちはあなたがた全ての民に、このテロの神様から頂いた力を分け与えます」
この瞬間全ての国民にテロの人を思いのままに操る力が分け与えられた
そしてテレビではこう続ける
「この力は貴方がたを救うために与えたもの
だからこの力に抗ってはいけません
力のまま、欲望のままにその与えられた力を使い、皆さんの力で世界をより良くするのです」
この会話を聞いた白命を含む全ての組織連中はゾッとした
1人でも力を持った奴がいる時点で脅威の塊とされる力
そのテロの神様の力を、今生きる全ての生命に彼らは分け与えたからだ
これが意味するのはただ一つ
力を持った者たちが、欲望とその力に溺れて自分勝手に、そして好き勝手に行動し始める事だった
それもリスト教団の命令により
その本能のまま動く全ての国民はもはや、組織の考えた殲滅作戦や白命の力を取り戻す事が不可能に近いことを示していた
その絶望の中、世界は破壊と暴動で溢れかえり、人々で殺しあった
それはまるで長い長い悪夢を見ているかの様な光景で、絶望だけがひたすらに広がり続ける世界出会った
あらゆる建物を壊れる様に言い合ったり、嫌いな人を死ぬ様に言い合ったり、その全てが命令となり実行されていく
欲望を解放した人たちはまるで赤子の様に、ただただ自分の欲求を満たす様に命令をする
建物も世界遺産も含めてあらゆる〝物〟に崩壊を告げる人々
嫌いな上司や友達、裏切った人、そういった〝生命〟に死を告げる人々
その無くなることのない、永遠の欲望を人々が叶え続け、そしてそれが永遠に続け絶望の連鎖を生み出していく
暴動とも言える人々の怒りがまた次の犠牲を生み始める
欲に従う人々をもう誰も止めることはできず
ただ世界と一緒に崩壊し殺される運命を歩み続けるしかない
そんな未来が待ち受けていることを僕らに伝えてくる
そうした絶望だけがひたすらに広がり続ける
その絶望感に白命はその光景を見ながらこの世の終わりを見る様だった
そんな横からいきなり大きな声がする
「しっかりしろ白命
我らの彼岸はこの絶望に負けるわけにはいかない
私たちはこんな事が起きても、それを止める為にのみ動くだけだ」
その言葉をかけてきたのは組織にいた1人だった
組織の中で最も若く、そして白命の作戦に寄り添っていたものだった
その若者の言葉に白命は
〝そうだ、そうだよ、まだ終わっていない
彼らが、テロの少年が残した力に縛られない彼ら組織の人がまだ生きている
彼らとならまだ間に合う、この絶望を止められる〟
その勇気を思い出させてもらったのだった
「よしやろう」
そう告げ彼の差し伸ばした手を取ろうと白命は手を伸ばす
しかし次の瞬間、目の前にいた若者は、まるで風船の様に一瞬で割れる様に破裂した
その血が白命に顔や服、差し伸ばした手にべっとりと飛び散る
その横で1人の人が笑いながら話している
「こんな所で熱い言葉ばかり並べて
綺麗子ごとばかりで吐き気するよ、君
本当、そう言う人ってのは綺麗に破裂しておいてよね
あははははははははは・・・」
その笑い声と身体中に着いた血を見た白命は
メラメラと湧き上がるその感情に意識を支配されていった
「ふざけんな、ふざけるなよ
ただ、ただそれだけの理由でお前は彼を殺したのか」
そう呟く白命に笑っていた奴は
「あ、そうだよ
うざかったから殺したんだよ
お前もウゼェ、さっさと死んどけ」
と答える
それに白命は
「私は死なない、私は、私は〝テロの神様〟だ
神である私は死なない、決して
そして貴様の様な下賎な奴に殺されもしない
彼の様な若者を、ただなんとなく殺した様な貴様など、死んで仕舞えばいいんだ」
そう怒りのまま言葉を放つ
その瞬間、横で爆発するかの様にさっきの人が見る影もなく粉砕した
それを見ながら、心に空いたその感情に支配されそうな白命の歩みを止める様に手を
暖かいとても小さな若い人の手が引き止める
その瞬間我に帰った白命が振り返ると、さっき死んだはずの若者が立っていた
「あれ、死んだはずなんじゃ」
泣きそうな目を浮かべながら呟く白命に、その若者はただ笑顔を浮かべると光となって消えていくのだった
白命はその光景を見ながら声を押し殺すかの様に、唸る様な声で泣き叫ぶのだった…
あれからどれだけたっただろう、現状は一向に変わってはいない
ただ泣き終えた白命にはたしかに、この絶望を止める〝もう何があっても揺らがない〟確固たる信念を胸に秘めるのだった
白命はその意思を胸にまず散らばっている、組織連中を秘密基地に招集した
そのあと、なるべく秘密裏に情報を集め始めた
白命はこの時誰も無駄死にはしないよう、逃げられる時は逃げて確実に生き残るように告げた
それを聞いた彼らは
「何を今更、こんなくだらないことで、死ぬなんてごめんだよ」
と口々に言い合うとすぐに行動に移るのだった
情報を集めてから1時間が経った頃
組織のほぼ全員が戻ってきて情報の整理を始める
だが、当初の楽園計画と違い、国民自らの欲を糧に殺し合わせる計画になったお陰で、大パニック状態の今ではロクな情報は一切集まっていなかった
そんな中、1人の重症の一員が駆け込んできた
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