〜小さな異変〜

リスト教団を白命が認めてから数年の月日が流れた

今となっては世界にいるリスト教団幹部の人が〝テロの神様〟に認められた〝テロの代理人〟として力を行使している


そんなことを知らない白命はある日近くの町に出かけていた

その町は活気があり住む人は皆、笑顔が絶えない優しい人々ばかりである

そんな街を見ながら


「美しい…これが、この世界の今の姿なのか

僕の望んだ世界と変わらないではないか

昔夢で出て来たテロを語るあの少年の、言っていた世界にはならなかったらようだな」


と白命はこぼすように呟いた




その晩、その町で宿をとった白命は深い眠りについていた

目がさめると昔に見たあの白い空間に迷い込んでいる


「あれほど言ったのに君はやめなかったんだね」


そう呟く赤い瞳の少年に


「当たり前だろ、見てみろよこの素晴らしい世界の姿を」


と強く白命は答える。

その言葉に少年は数秒の沈黙の後、口を開いた。


「本当にその町が素晴らしい町ならな…」


次の瞬間、白命は見慣れた寝室の天井を見上げていた

どうやらあの世界から戻ってきたらしい


「クソ、目覚めが悪い、あの少年のせいだ」


そう叫びながら飲み物を投げ飛ばす


「少し気分転換が必要だよな」


と溢すと町へと出かける支度をして宿を後にした




宿から出た白命は驚きの光景を目にした

幼い子供が大人に絡まれていたのだ

よく見るとその子供は自分が止まっていた、宿屋の娘であることを思い出す


「仕方ない、助けるか」


そう言うと白命はテロの仮面を被り、子供の周りにいた者に命令をした


「全員ひざまづき、自分の罪をこの場で懺悔しなさい」


しかしその言葉はなぜか彼らにきかなかった

確かに強い意志を持つ彼らに命令は聞きづらいが効かないことは初めてで何度も繰り返し命令を下した。

するとやっと命令が効き始めたのかそれを聞いていた周りのものは、その子供をよそにひたすら懺悔し始めた


「さっきのはなんだったのだろう

何度か繰り返し命令を行わないと、効力が発揮しなかった…」


それを強く感じながらも、白命はその事をたまたまだろうと〝偶然の事〟として結論付けた


しかし、それから別の街にも足を運んだが、やはり力が効きづらい

その可能性を考え始めた白命は、一つの答えにたどりついた

〝テロの代理人〟の存在が白命の使う〝テロの神様〟の効力を弱くしているのではないか、と言うものである




そんなある日立ち寄った村で、乱闘騒ぎがあった

もちろんそんな乱闘騒ぎを止めようと白命は力を使用したが、全く彼らには通じなかった


「なんだ、どうなってる」


それに困りながらも乱闘騒ぎを止めるように命令をするが全く効果が見られない

白命は仕方なく暗示を使い乱闘騒ぎを起こしていた、彼らをどうにか止めることに成功するのだった


「まさかここまで力が使えないとは」


そう呟いた。流石にこれ以上続くとこれが偶然でないことぐらいわかる。

どう考えても白命の意思と真逆の行いが強制されており、白命の矛盾した命令が実行されないようになっているのは明白である




流石に力の阻害がこれ以上に強くなることを恐れた白命は、テレビで


「私、テロの認めしリスト教団の〝テロの代理人〟は、あくまで私の力を貸し与えてるだけにすぎない

彼らの力は私から分け与えたものである」


と公言すると、その言葉に真実味を深めさせるため、リスト教団幹部の1人を目の前に連れてきた


彼に始めテロの代理人として人を操ってもらった後、その力をテロが回収したと言う暗示をかけ、もう一度テロの代理人としての結果を見せた

案の定、テロの代理人の力は使えなくなっていた

こうしてテロはどうにか、リスト教団との衝突になる芽を摘み取って行った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る