〜滅んだ世界の遺物 解読文書〜

そこには地球が生まれてすぐにできた、世界について書かれていた。

はじめの目次には大まかな歴史があり、その歴史上の世界は発展を続けて完成された素晴らしい世界になったと記されている。


しかし最後の行には〝ある少年〟によってそれは崩壊したと記されていた。

その内容が次のページから書かれていた。




世界に知性ある生命体が生まれた。

彼らは独自のコミュニティを構成するとその技術を発展させて行く。

そのスピードは凄まじく世界は一瞬で夢の世界となった。


そこに一人の少年が生まれた。

少年の名前はテロ

テロは人には見えない何かを見る力があった。

そんなある日、テロは世界に住う生命に影を見た。

〝人には影がある〟そうテロは知った。


そんなテロは初めて自分と縁のある人の〝影〟に触れてしまう。

その瞬間だったテロは一瞬の間に気づいてしまった。

生命全てを思いのまま操ることが出来ることに…

テロはそれに気づくと手始めに身近にいる人に〝暗示〟をかけ始めた。

案の定簡単にかけることができてしまった。


そうテロが気づいたのは人の心にある影、そして人が持つ思い込みの力、そしてそれを支配する方法だった。

こうして人は思い込みが強いと、それが現実に反映することをテロは知った。

それが人数に左右されることも知った。

だからテロは〝暗示〟を最初に使い〝これ〟と人の中にある弱い部分の〝影〟に〝干渉〟する事で、人の心を操ることに成功した。




テロはその〝暗示〟を人から人へとかけていく

ある日テロは〝暗示〟が面倒になり〝暗示なし〟で人を操作した。


『テロの言ったことは全てに真実になる』


その暗示をかけてきたテロにとって、暗示なしでここまで〝うまくいく結果〟はなかった。

そう、テロは暗示なしで人を操ったのだ。

テロは〝何故かけられたのか考え〟一つの答えにたどり着いた


多くの人が信じ込んだことで、この暗示は真実へと変わったのだと。

そして真実に変わったそれは、もう暗示なんて必要ないくらい人の真相心理である影に刻み込まれたのだと。




テロはそれからあらゆることをした。

その世界にいた法で裁けない悪人を自殺に追いやったり、殺し合わせたりもした。

テロはその世界で悪い人を倒す人だった。

それもただ命令したり、そうなるといった事がその通りになることから、テロには不思議な力があるとされた。

そしてテロは次第に悪人に罰を与える神として、悪人からは恐怖、人々からは崇拝の思いを込めてこう呼ばれるようになる


『テロの神様』


これはテロが行った全ての行為を、テロの名からとりテロとつけたため、その行為をする神としてつけられた。

テロはこうしてこの世のほぼ九割近くの人に、テロの言葉は真実になると刻み込んだのだ

その結果テロは神として世界に君臨した。




しかしある事がきっかけでそれは崩壊し始めた。

テロの事をよく思わない人物たちが集まり、テロを引きずり下ろそうと考えたのだ。

もちろんテロは対抗したが相手側にはそれを含めて操る道化師がいた。

道化師はまずテロの座を奪うため、テロになりきりあらゆる人間にこう広めた。


「テロは人の世に紛れ込んでいる。

テロはあなたたちのそばにいるかもしれないと」


この道化師が言ってることはデタラメだったが、それでもそれを人々は信じ込んだ。

そう、これはテロの力のデメリット

テロの言ったことは全てが真実になる

そのため、テロに化けた人の言葉でもそれは真実になったのだ。




…世界では混乱が巻き起こった。


テロはこれを止めるため全世界に

あれは私を落としめる者の仕業だと広めた。

しかし人々に流れたその中継を道化師が編集した。

流れた中でテロは、この世界に我は飽きた

後継者たちを我は広めた。今後はその者たちに従えといった。それは暗示により世界に定着した。

その結果世界各国で、テロの後継者を名乗る者たちの暴挙を許してしまった。

そこに出てきたのが道化師たちだった。


道化師たちはテロがやった後継者たちの暴挙を明らかにし、その者たちを血祭りにあげた。

こうして道化師たちは人々から英雄扱いを受けた。

その裏で道化師により多くの人が苦しむことになった。

テロはそんな世界を望んではいなかった。

テロはただ世界の人がみんな幸せになれたら、そう思ってこれを始めた。

それがこんな形で世界を包み込んだ。

…テロはその全てに絶望し言ってしまった。

この世にあるこんな腐ったものなど、すべて消えてなくなればいい。


「全部崩壊してしまえば」


すると突然大地が揺れ始めた。

そうテロの言ったことは全て真実になる

その暗示は命なきものに影響を与えるほど、すべての生命に刻み込まれていた。


テロは知っていた。

例えばテロが地震が起こるといえば、信じ込んでいる人々は本当に地震が起こると思うだろう。

それが嘘でも思い込めばそれはいずれ真実になる。

その思いが命なきものにも影響を与えることを…


そうテロは言ってしまった崩壊しろと

その結果世界の海は干上がり、地面が割れ中から溶岩が溢れ出した。

世界は一瞬のうちに火に飲み込まれ、気づいた時には炎の星になっていた。




それから何万年の月日をかけてじっくりと冷え固まり、海ができ、大陸ができ、少しずつ世界は生まれ変わった。

テロは崩壊させたことで、世界が壊れる事を知った。

そこでテロはこういった。

この歴史を繰り返さぬようこの事を記録した石版を、溶岩に解けない石版をここに置こう。

そして全てをリセットしよう

そうした言葉により

この研究資料となった石版が、何億年の月日が流れる中で、冷え固まった溶岩の中から現れた。

そして世界はリセットされて、またこうして新たな人類が誕生したのだ




研究資料にはそう書かれていた。

一番最後のページには

『うおごのちふれろぼいにむたなたら』

と暗号があったが、何を書いてあるかはさっぱり分からなかった

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