第22話 変態後輩と姉の襲来
「ただいまー……って誰もいないんだったな」
捻挫のことがあってから1週間が経って、奏多もようやく普通に歩けるようになった。
奏多は今、捻挫が治った記念に料理を作りたいらしく、俺の制止も聞かずにスーパーに向かっていってしまった。
そんなわけで、俺は1人で家に帰ってきたわけだけど……。
「お帰りなさい。あなたが雨宮大地君ね?」
「――へ?」
誰もいないと思っていたリビングに人がいて、思わず声が漏れてしまった。
……いや、誰!?
見た目は20歳ぐらいで、亜麻色のボブヘアに緩くパーマを当てていて、目鼻立ちがスッと通った可愛らしい人だった。
……そして、何よりも……胸がでかい……。
え!? なんかすごい大人っぽい人が俺の家のリビングにいるんですけど!?
「え、えっと……どちら様でしょうか?」
「あ。そうね。まずは挨拶をしないとね……私、奏多司の姉で
この人は今何て言った……?
かなたつかさのあね……? 奏多司の姉……?
「ええ!? 奏多のお姉さん!?」
「はい。以後お見知りおきを……大地君って呼んでもいいかしら?」
「は、はい!」
礼儀正しくて、大人っぽくて、可愛くて、色気がある……!?
本当にあの変態の血族か?
でも、よく見れば……奏多を大人にしたらこんな感じになるんだろうなっていう面影はある。
「それで、お姉さんはどう言った用事でここに?」
「未来、でいいですよ? 可愛い妹に会いに来たのと……妹と一緒に暮らしてるっていう男の子を一目見ておきたかったの」
なるほど、至極真っ当な理由だ。
でも、来てくれたのが優しいお姉さんでよかった。
これでもし……奏多のご両親とかだったら、今頃きっと首を切れって言われてる。間違いない。
「それで、司ちゃんは?」
「奏多なら今スーパーで食料を買ってると思います」
「そう。司ちゃんのお料理美味しいでしょ?」
「はい。すごく」
本当、あいつが変態じゃなかったらとっくに胃袋捕まれて落ちていたかもしれない。
……なんであいつ変態なんだ? やっぱり俺のせい? それは業が深すぎる……!
「ふふっ」
「どうしたんですか?」
未来さんが急に俺の顔を見て笑い出した。
もしかして俺の顔が変だったりとか? よっしゃ、死のう。
「いえ、司ちゃんが言った通り、面白い人だなぁって思って」
「えっと……今後の参考までにどの辺が面白いのか聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「うーん……内緒! 少なくとも、大地君って嘘をつけるタイプじゃ無さそうね」
はぐらかされてしまった。
結局何がどう面白いんだろうか……。
というかその内緒の時に人差し指を唇に当てる仕草可愛すぎません?
もしかして、ご職業は天使か何かであらせられたりしませんか?
「ただいまでーっす。せんぱーい? 玄関に女性用の靴があったんですけど、まさか浮気ですかぁ? しゅらばりますかぁ?」
「誤解だ! ってか何度も言うが俺ら別に付き合ってるわけじゃないだろ!」
というか修羅場るってなんだよ!? 怖えよ! 絶対流血沙汰だろそれ!
「司ちゃんお帰りー」
「……お姉ちゃん!?」
誠に残念ながら、この瞬間……この変態と天使は本当に姉妹だということが確定してしまった瞬間だった。
世界は今日も残酷だちくしょうめ……。
◇◇◇
「それで、お姉ちゃんはどうしてわたしとせんぱいの愛の巣に?」
「お前実の姉の前でも何も変わらねえな!?」
「司ちゃんたちの様子を見に来たのよ? あと、ここは元々私のお家でしょ?」
「へ?」
つまり、この家には元は未来さんと奏多が住んでたってことか?
「……どうして、家を出ちゃったんですか?」
「あー。実はちょっと海外に行くことになっちゃって……」
「お姉ちゃんは社長さんですからねぇ……とっても忙しいんですよ」
「社長!? ……あの本当に失礼だと思うんですけど、未来さん一体いくつなんですか?」
女性に年齢を尋ねるのはタブーだってことは分かってるけど、見た目的には間違いなく20歳。奏多の姉さんってことはそこまで年上ってわけでもないだろうし……。
「お恥ずかしながら、今年で19歳になります」
「未成年!?」
嘘だろ!? 酒もたばこも出来ない年齢!? というかその歳で社長!?
「あはは、お姉ちゃんメイクで大人っぽく見せてますけど、すっぴんは童顔なんですよぉ?」
「そうしないと高校生だとか疑われるんだから仕方ないじゃない……」
「色々と大変なんですね……何で今のお仕事を選んだんですか?」
俺ももう高2だし、社会経験だとかの話を聞いておきたいからな。
「あーっと……うちの家から独立したくて……?」
「……独立? それって――」
「――せんぱい、そんなことよりセックスしましょう!」
「そんなことってどんなことだよ!? 話の脈絡を考えろ! ってか実の姉の前で何言ってんだお前は!」
くそっ! 未来さんには誤解とかされたくない!
すると、奏多が傍に寄ってきて、俺に耳打ちをする。
「大丈夫ですよ。だって、お姉ちゃんは……」
「せっくす……? あの、それって何かのスポーツ……とかですか?」
「あの通り、お姉ちゃんは性知識に疎いので」
「何ィッ!?」
一体どんな世界を生きてきたら19まで性行為の存在を知らずにいられるんだ!? やはり天界の住民であらせられる!?
「あ、せんぱい。実はちょっと買い忘れたものがありまして……」
「はぁ? ……仕方ないな」
一応こいつ捻挫治ったばかりだし、俺が行くしかないか。
「何が必要なんだ?」
「はい、えっとですね……」
俺は奏多に必要な物を告げられて、財布とスマホを引っつかんで買い出しに出かけた。
◇◇◇
「司ちゃん、もしかして……まだ私たちの家のこと話してないの?」
「はい。どうにも言い出せなくて……
「まあ、そんな簡単なことじゃないもんね。私も家のことほっぽり出して逃げてるわけだから、お姉ちゃんともいつかちゃんと話せたらいいな」
わたしの家族のことで迷惑をかけると思うと、せんぱいには言えるわけがない。
――わたしが家出をして、お姉ちゃんの家に転がりこんで、まだ家族とケンカをしているなんてことは。
「あ、そんなことよりお姉ちゃん! 聞いてくださいよぉ!」
「うんうん。何かな司ちゃん」
せっかくお姉ちゃんが来てるのに、暗い話題なんてしたくはないので、わたしは無理に話を切り替えた。
せんぱいのことを話していると自然に笑顔になれるんですからね!
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