第2話 朝だよ! 全員集合!

「待ってよ~、みんなぁ~」


 黒い扉が開き、少女が眠たそうに目をこすりながら、リビングに侵入。


 完全に忘れていた。

 もう一人、この中で唯一の頭脳派で、知識に優れている彼女の存在を。


「みんな酷いよ~。私のこと、忘れないでよ~」


 寝起きなのか? すごく眠たそうだな……。スザクを見習って、朝の運動でもしたらどうだ?


「さては、今起きただろ?」

「え~違うよ~、ほんの二十秒くらい前だよ~」

「いや、さっきじゃん」


 この上下が黒ジャージで統一されて、ゆったりとした口調のこの子。


 彼女は『北土きたつち 玄武げんぶ』。北を司る蛇と亀の神。属性は【地】。


 たれ目なアメジストのような瞳でマイペースな性格。

 ロングの髪がボサボサになっており、一見すれば“ニート”に見えるが、実は違う。


 前述に言った通り、ゲンブは優れた頭脳と知識力と理解力、さらには技術力に科学(化学)力、とこれまた優秀な逸材で、発明家兼科学(化学)者である。

 様々な賞や功績を成し遂げ、学会からも熱烈な支持を受けている。


 だが……たとえ“神”であろうと、完璧な存在なんていない。それは彼女も一緒だ。

 彼女にも変態ビャッコ幼女スザクと同じく、欠けている部分はある。その中でも決定的な部分は———————


「もう少しゆっくりしようよ~。『急がば回れ』だよ~。ふわぁ~ぁ……」


 ———————という感じ。


 非常にマイペースで、亀のようにゆっくりしており、周りからは“残念な秀才”と言われている。

 また、よく徹夜して、昼間など居眠りをしていることから“眠り姫”何て呼ばれていたりする。


 ちなみにだが、ゲンブの右脚は義足になっている。普段はジャージで見えない。

 本人にもなぜこうなっているのかは分からないが、不自由はしてないようだ。

 無論、スザクもビャッコも知っており、話題に触れないようにしている。


 まあ、仕方の無い事だ。


 反対に左足は義足ではないが、アメジストのような紫色の宝石がはめ込まれた足輪を着けている。


「寝坊するあんたが悪いんでしょ。自業自得よ」


 スザクが御尤もな正論をゲンブに叩きつける。


 こんなことなら、起こしに行けばよかった……。


「どうせまた、夜ふかしでもしてたんでしょ?」

「もうすぐコンテストだから、寝る間も惜しいくらい忙しいんだよ~」


 ゲンブは毎年、年に一度開かれる『発明品コンテスト』に参加しており、このイベントがきっかけで彼女は有名になったのだ。色んな意味でだが……。


「とりあえず、ゲンブも座ってくれ。話は食事をしながらで頼む」


 もう空腹で我慢ならないのだ。早く朝食を済ませて、昼と夕飯のメニューも考えなければならないからな。


 ゲンブを席に座らせて、全員が揃ったところで再び———————


「「「「——————いただきます」」」」

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