トラブル続きの日常で普通じゃない彼女たちと何千年も同居している僕に一体いつになれば平和が訪れるのだろうか

@hisui1011

プロローグ

 空は藍色を広げ、太陽が昇るのを待っていた。


 春の曙、少年が一人、暗い表情でとある丘の上に立っていた。

 目の前には、二枚の木の板を重ねて作った、と思われる十字架が地面に突き刺さっている。


 何故、彼の顔色が悪いのか。その理由は言うまでもあるまい。


 そのオブジェは「墓」を意味しているに他ならない。しかもそれが二つと来た。


 少年は、それらの前に一輪ずつ花を添え、振り向き、歩み始める。

 一言も口にせず、まるで生気を失っているかのようなその顔色は、死人と何ら変わりない。

 瞳には光が無く、“絶望”という言葉が、実に相応しい———————


 ———————余程、大切な存在だったのであろう。



 それから約数十分だろうか。

 あの丘から、麓にある花畑を通り抜け、彼が行き着いた先。


 青く広大に広がる海。貝殻を忍ばせている砂浜に、潮風。


 彼は、浜辺に行き着いた。

 波は穏やかに打ち寄せ、砂の中に隠れていた貝たちを晒し出させ、海に連れた。


 少年は突然、藍色の空を見上げ、膝から崩れ落ちた。


 すると、空の雲行きが段々と怪しくなり、先程まで穏やかであった波が激しくなってきた。


が来た……」


 おれは思わず、そう呟いていた。


 きっと今の彼の心は、悲しみが込み上げて来たに違いない。

 そうでなければ、泣き叫ぶはずがない。

 そして彼に同調するかのように、波は激しさを増し、藍色だった空も、今や雲に覆われ黒くなっていく。


 しかし、変わっていくのは天空と大海だけではない。


 少年の上着のポケットから、青い光が漏れ出ているのが分かる。

 おれは、運命の瞬間を目にした——————


 ———————彼はその光と共に、波にさらわれた。


 ……おめでとう。が下すのだよ。この世の行方を……。


 雲は晴れ、藍色だったはずの空は青空となり、海には天高く伸びる蒼き光が柱となって伸びている。

 私《おれ》は、『彼』という存在の誕生を、心から祝福した。


 ◇  ◇  ◇


 ……守れなかった。

 僕は、今まで……何の為に、ここまで……!

 宝物が……家族が……、こんな……こんな……!


(お兄ちゃん……) (兄ちゃん……)


 ごめん……、ごめんよ……。


((お願い……))


 やめろ……! やめてくれ……!


(私たちを……) (俺たちを……)


 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ———————


((ころ……して……))


ああ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!

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