第35話

「ご飯も食べ終わったことだし……午後は何に乗る?」


 ひかりが振り返って僕たちを見回す。振り返る時に短いスカートがふわりと浮き、彼女の綺麗な足を晒した。流石に、パンツが見えるなんて事態は招かない。


 ひかりの言葉から推測できた人もいるかもしれないが、僕たちは今遊園地へと来ていた。遊ぶ場所を決める際に、リーナと優がどこで遊んでもいいと言ったので、ひかりの遊園地という意見が採用されたのだ。


「そう言うひかりは何に乗りたいんだ?」


 午前中で目ぼしいものは全て乗り終えたと思っている僕は、ひかりにそう聞き返した。


 なぜ、リーナと優に聞かなかったかと言うと、二人は昼食前に乗ったジェットコースターに未だに酔っているからだ。リーナがジェットコースターを乗れないのは少しは予想できるが、まさか、優まで苦手だとは思わなかった。ギャップ萌えでも狙ってるんじゃないかと疑ってしまう。


「うーん……私はジェットコースターにもう一回乗りたいかな?」


 そんな状態の2人にひかりが追い打ちをかけるように言う。

 ……いや、さすがにひかりがそんな意地の悪いことを言うわけがない、と僕はひかりの方を見る。

 ひかりはニヤリと笑っていた。何かを企んでいる笑みだ。


「……悪い。俺はもう無理だわ」


 ひかりの提案を優が真っ先に降りる。


「……ワタシも遠慮しておきます」


 続いてリーナも。

 それに対して、ひかりがすかさず言う。


「あ〜残念……あ、じゃあかげくんと私は2人でジェットコースター乗ってくるから、ここから2人ずつで別行動とかどう?」


 少しわざとらしい口調だ。ひかりの意図は流石にわかった。リーナと優を2人にしてあげて2人の距離を縮めてあげようというのだろう。可哀想なのはせっかくの遊園地で僕と2人になってしまうひかりだが……

 とにかく、僕はひかりをフォローする。


「それが良いかも……僕は元気だし、ジェットコースターにもまだ乗りたいから」


 本当はジェットコースターがそこまで好きではないのだが、この際それはどうでも良いだろう。


「そういうことならワタシはそれが良いと思います」


 リーナもひかりの意図がわかったようでひかりに目線でお礼を言っている。前は2人で出かけるのはまだ早いと言っていたが、ここ最近優とリーナの距離は縮まってきているので、大丈夫なのだろう。


 あとは優だけなので見ると、渋い顔をして考えていた。優もリーナのことが嫌いではないはず……むしろ好きかもしれないので、なぜそんな顔をしているのか不思議だ。


「……まぁ、それが良いかもな」


 最終的には優も同意したので午後は夕方まで別行動という流れになった。

 夕方に今の場所に再集合だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る