第21話

 僕たちはまた、四人で食堂に来ていた。


 週末は、あの後、カラオケで歌い続けた。伊東さんがカラオケから出たくなさそうな顔をしていたからだ。


 言っていた通り、最初に何曲か全員が知っていそうな名曲を歌ったあとで、個人戦となった。伊東さんは、ロシアで育ったが、日本の曲は意外と知っていた。少し、知っている曲が古い感じもしたが、名曲には変わりない。


 それより、優が最近の曲を全くと言っていいほど知らないことに驚かされた。優が知っている曲は親世代が聞くようなやつばかりだった。よく考えたら、優とカラオケに行ったことはなかったかもしれない。


 しかし、優の知っている曲は伊東さんもかなり知っているらしく、優が歌っている時、伊東さんは楽しそうにしていたのでいいかと思った。


 日曜は、美夜とゴロゴロして過ごした。ゲームをしたりしてだ。土曜日に、家に帰ったら美夜が、寂しそうに丸まって一人でゲームをしていたので一緒にやってやろうと思ったのだ。


 甘やかしすぎてはいけないと思っているのだが、美夜が可愛いので思わず甘やかしてしまう。


 とにかく、思い返しても、いい週末だったと言えるだろう。






「ふー……食った食った」


 優がお腹をさする。優は定食だけでは物足りず、をラーメンをおかわりしていた。流石運動部……という感じだ。


「美味しかったです」

「うん……美味しかった」

「やっぱりこの学校の食堂、美味しいよね」


 日野さんたちも満足そうで何よりだ。


「これで、午後の授業も大丈夫だな……と、教室に戻るとするか」

「そうしよう」


 優に続いて僕、日野さんが立ち上がる。


「ん? どうかした?」


 伊東さんが、またこっちをじっとこっちを見ている。


「……いえ、なんでもないです」

「何か気になることがあるんなら、言ってくれたらどうにかするけど」


 僕は、ちゃんと伊東さんの方を見て言う。


「……まぁ、言いたくないんならそれはそれで良いよ。いつでも聞くから」


 伊東さんはまた少し考え込むような仕草をする。そして、僕の方に近づいてきたかと思ったら制服の肩あたりを引っ張ってきた。少しバランスが崩れる。


 その瞬間に耳元で「放課後に、体育館裏に来てください……相談したいことがあります」そう囁かれた。


 急に耳元で囁かれてちょっとドキッとした。でも、それは伊東さんの真剣な顔を見て霧散する。伊東さんは何かを決心したような顔をしていた。


 優と日野さんが怪訝な顔をしてこっちを見ている。日野さんは、少し不安そうにも見えるが……


 とにかく、僕は伊東さんに「わかった」と言っておいた。


 流石に、体育館裏に呼び出されたからといって告白とかじゃないはずだ……まだ会ってそんなに日数もたってないし……まず、僕が伊東さんみたいな美少女から好かれる訳がない。


 じゃあ、なんだ? と思ってもすぐに答えは思いつかなかった。

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