第19話

side アルカ

俺は今回の遠征の後始末の会議に参加している

……正直、戦うよりも疲れる


「ふざけるなッ!何でそうなるッ!」

「ふざけているのはあなたですよ。アルカ団長」


話が通じない

これだから聖職者は嫌いだ


「全く、今回の遠征の魔物の襲撃はあの呪われた罰当たりな罪人が引き起こした物です。そうに決まっているでしょう。あんなものさっさと火刑に処すべきでしょうに。ねえ、第二騎士団団長、アリウス・エッデモンド伯爵」

「えぇ、そうですとも。国王陛下もそう思いますよね?」

「そうだな。いずれ更生し、罪を償い、世界のために働くと期待しておったが……、やはり邪悪な者だったようだ。これなら召喚したときに殺しておくべきだったな。皆の者」


コイツら……

自分たちの失態をあいつに押しつける気か……

今回の遠征ルートの警備をしていたのは第二騎士団だ。だが警備を疎かにしていた

王都周辺に出来たてならともかく、あんなに成長した迷宮ダンジョンがあったなんてどう考えてもおかしい

大方、賄賂で誤魔化していたのだろう

そして、今回の遠征では勇者といって支援していた奴が暴走し、全員を危険な目にあわせかけた

そんなアホを勇者と認定したことを誤魔化したいのだろう

盛大に勇者だと世間に公表してしまったからな

このことが世間に知られたらアテナイ教団と国王の信用は地に落ちる

あの二人は金で位を買ったと言われるほどの無能だ

確実に位を追われるだろう

この二人はそれを恐れている


「アルカ、落ち着け。ここで声をあげても無駄だ」


ダニエルが小声で伝えてくる


「おい、ダニエル。巫山戯ているのか?」

「巫山戯てなどいない。確かに今回の遠征で起こった出来事は彼が悪いわけではない。だが、どう足掻いても彼に責任を負わせる気だ。周りを見てみろ。おそらく、もう筋書きは定まっているということだろう」


ダニエルが苦々しいと言わんばかりの表情と声で伝えてくる

周りにいる貴族はほとんど駄目貴族と有名な奴らだ

まともな奴は位が低く、口を出せない状況らしい

クソッタレが




結局、今回の魔物の襲撃は紫苑の仕業ということになった

紫苑は王都からの追放という処分になった

最初、あいつらは火刑を主張したが俺とダニエルでごねまくって追放まで落とし込んだ





「しかし、よくあいつらはこちらの言い分を飲んだな」

「それはそうだろう。あいつらが欲しているのは今回の出来事の事実の改竄だ。つまり、『第二騎士団の怠慢で魔物の襲撃に遭い、勇者がその場にいた全員を危険な目にあわせかけて、勇者は責任もとらずにすねて引きこもっている』ではなく『呪われた罪人の手引きにより魔物の襲撃に遭い、勇者はそれの対処のために孤軍奮闘。そして全ての元凶がクラスメイトで落ち込んでいる』にしたかっただけだ。彼が死のうと死ぬまいとどうでもいいのだろう。……まぁ、そのおかげで彼の名誉はどん底だがな」

「胸クソ悪い話だ」 

「全くだ。このことを彼に伝えないといけないとはな……。まさか功績のないものを罰するのではなく、功績のあるものを罰する日が来るとは……」

「全くだ。あの駄目王が即位した日に辞表を出しとけばよかったぜ」

「激しく同意だ。あ、あと一応ここ王宮だからな。事実でも駄目王とか言うなよ。聞かれたら面倒くさいからな」


しまった

うっかりしてたぜ





side 春宮紫苑

目覚めてから3日

怪我の治療はほどんど終わっており、ベッドの上の生活が苦になってきたくらいだ

そういえば、前に秋崎が「まあ、あなたは重傷といっても、最悪魔術でどうにかなるわ」と言っていた。なら、何故最初から魔術で全部回復しなかったのかというと、魔導による回復では傷を癒やすが、筋肉の超回復が行われない可能性や、変な風に回復する可能性があり、緊急時以外は魔導による回復は避けた方が良いらしい



普段なら訓練や、勉強をしている時間帯なため何もしていないと本当に暇である


「紫苑……。ちょ■といイか?」


深刻そうな顔をした団長と第一騎士団団長のダニエルさんがやってきた

ここ人達がこんな表情をするなんて珍しい


「どうしたんですか?そんな顔して」

「率チョクに言うzo、Iいか心■て聞けよ」

「はあ、分かりましたけど何なんですか一体?」

「お■の追放が決定しta」


……………………………は?


「■の通リだ。本当niすまん」

「す■naい。本当にスまなi」


団長とダニエルさんが謝っているが何も耳に入らない 

何で?何で?何で僕が?

疑問が頭を埋め尽くが答えは出ない


「……ん、……おん!……紫苑!!」


団長に名前を呼ばれ、はっとする


「Oい、大丈夫か?」

「大丈夫ではないですね。それでいつまでに出て行ったらいいんですか?」


またもや二人がおどろいたような顔をする


「どうしたんですか二人とも。そんな呆けた顔をして」

「Iや…、だっテ……」

「てッきri、俺達ニ当たるものだと……」

「そりゃあ。確かに苛ついていますけど、当たる相手が違うじゃないですか。団長達は僕を庇ってくれたんでしょう?」

「……随分ト大人なんdaな…」

「ん?何か言いました?」

「いや、何■言ってねぇヨ。じゃあこreからの話をし■うか」








団長達から追放されると聞き3日経った

この3日間は大変だった

第三騎士団の皆はもう二度と会えないと思っているのか、すごく別れを惜しまれた

入れないのは王都だけだから別に二度と会えなくなる訳ではないのにな

……本当にいい人達だった

祐介達とは忙しくて会えなかったが、まあ、また会えるだろう

……さて、行くか

幸運なことに大仰な護送などはなく、自分で門へ向かう

距離が少しあるが今は早朝人通りは少ない

これで多かったらさぞかし大変だっだだろう

門で軽く手続きを済ませ、門を出ようとしたとき、


「紫苑殿ーー!紫苑殿ーー!」

「はあっ、はあっ。間に合ったみたいだな」

「はぁ…はぁ……、そうね間に合ったみたい」


羽根山達がやってきた

相当急いできたらしく、皆、息を切らしている


「羽根山に祐介、それに秋崎、どうしてここに?」

「何って、そりゃあ見送りだよ」

「あとは謝罪でごさる。紫苑殿」

「謝罪?」

「ええ、今回の処分、友人の危機だというのに、何もできませんでした。申し訳ない!紫苑殿!」

「「ごめんなさい」」


羽根山達が頭を下げる


「いや待ってくれ。お前達が頭を下げる必要はないだろう。それに後生の別れって訳じゃないだろう。入れなくなるのは王都だけだから、どうせ、どこかで案外ばったり会うかもしれないぜ」

「しかし、紫苑、このままいけばお前は……」

「ああ、元の世界に帰ることか?それともこれからの生活か?それは大丈夫だ。僕は冒険者になってるし、帰還の目処が経ったから冒険者ギルド経由で伝えてくれるから大丈夫だ」

「そうですか……」


心配性な奴らだ

でも、うれしい


「じゃあ、人が多くなってきたら面倒だから僕は行くぜ。お前達も元気でな」

「ええ、紫苑殿もお元気で!」

「また、会おうな紫苑!」

「祐介が悲しむからくたばるんじゃないわよ!死んだら私が蘇生してもう一回殺すからね!!」


おい、秋崎、最後に物騒なこと言うな








異世界に来て3か月、正直、今は大ピンチだ

右も左も分からない

お金は貰っているが、僅かな額

そして肝心の僕はヘッポコ

…でも、まあ、何とかなるだろう

むしろワクワクしてきたくらいだ

せっかくだ。異世界を満喫しよう

まぁ、その前にとりあえず―


「この国、出るか。今はこれ以上一秒もいたくねえや」


さっさと出よう

なんかいらんことに巻き込まれそうだし




ーーーーーーーーーーーーーーー第一章はこれで完結です

次からは第二章となります

人物紹介、設定も投稿しておりますので、よければご覧下さい

設定ぜんぜんいかせてねぇだろ!

という皆様、大丈夫です

第二章からキチンと出てきます

大丈夫です

読んでいただき、ありがとうございました!

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