第18話

side 春宮紫苑

ひどく、懐かしい声が聞こえ

た気がする

誰の声かは分からない

でも、懐かしいということは分かる

……それしか分からない












「あだっ!痛つっう」


体に痛みが走り、目が覚めた


「あっ!紫苑殿!起きられたのですな!」

「羽根山か…、なあ、ここはどこなんだ?」

「ここは王都ですぞ。紫苑殿、傷は大丈夫ですかな?」

「傷?大丈夫に決まっている、と言いたいが…、こんな大怪我してたっけ?」

「…?覚えてないのですか?」

「うん」

「そうですか…。まぁいいでしょう、それでは説明いたしますぞ。紫苑殿、あなたは迷宮で多数の魔物の死体と一緒に全身血塗れで見つかったのですぞ」


は?


「もうよく生きているな、という程の重傷でしたぞ。あ、後あれから3日ほど経っておりますぞ」


へ?


「ちょ、ちょっと待ってくれ」

「どうしたのですか?」

「全く身に覚えがない。というか、あれ?僕って迷宮では何してたっけ?」


ヤバイ、ぜんぜん思い出せない


「えっ、マジですか?」

「うん、マジ」

「……まぁ、あれは無理に思い出す価値はありませんからなぁ…。忘れたままでよろしいと思いますよ」

「……そんなにやばかったのか」

「ええ、夏目殿達が取り乱すくらいには」


マジかよ

後で謝っとこう






その後、医者がやってきて検診を受けた

その後、祐介と秋崎がやってきた

三人ともどうやら今日一日暇だと言うので少し雑談に付き合ってもらうことにした


「えっ、紫苑、何であんなに大怪我したか忘れたのか?」

「まぁ、あれは忘れてた方がいいわ。……そのまま全部忘れてたらよかったのに」


少し不穏なことが聞こえた気がするがスルーだ


「ああ、何も覚えてない。迷宮ではぐれたあとはないも覚えてないな」

「そうか……。まぁ、普通に考えたら、紫苑が魔物と戦ってああなった、って考えるのが普通だけど…」

「まぁ、春宮君は弱いからね。何かあるんじゃないかと調べたけど結局何もなかったし」


はっきり言うなぁ

隣にいる二人が苦笑しているぞ


「そういえば、結局馬鹿リーダーは見つかったのか?」

「馬鹿リーダーとは?」

「ああ、士道のことよ。安心しなさい。アイツはキチンと見つかったわ。まぁ、あれからずっとあいつと取り巻き全員、部屋に引き籠もっているそうだけど」

「彼等はどうなるのでしょうなぁ」

「あれだけのことをやらかしたから…、多分切られるんじゃないかしら」

「切られる?何にだ?」

「何にって…、あぁ、そういえば春宮君あなたは何も知らなかったわね」

「あぁ、確かに何も説明しておりませんからな。仕方ないでしょう。それでは説明いたしますぞ。まず拙者達は三つのグループに別れております」

「三つも有るのか…」

「まとまりがないとは言わないで下さい。これでもまだマシな方だと思いますぞ」


まぁ、確かに僕達は入学してすぐ異世界こっちにきたわけだしな…

そういえば、まだこっちに来て2、3ヵ月しか経ってないんだよな


「どういう風に別れているんだ?」

「そうですな…。まず士道殿のグループ、確か男女合わせて13人でしたな。そして、拙者達が所属しているグループですな。確か…24人でしたかな?お二方」

「あぁ、確かそうだったよ」

「そうね、24人だわ」

「ええっと、それでリーダーは海風渚という人なのですが知っておりますか?確か、今回の遠征に参加していたのですが…」

「あーすまん。僕、コイツら以外とはそんなだから…」

「そうでしたか。海風殿はまぁ、一言で言うと…THE委員長ですな」

「THE委員長?」

「ええ、眼鏡をかけて三つ編み、そしてかなり真面目で正義感の強く、厳しい人ですな。まぁ、多分悪い人ではないと思いますな」


なるほど

そんな人がいたのか


「そして、最後のグループなのですが……。一言で言うと百合ハーレムですな」

「百合ハーレム?」

「言葉通りだよ紫苑。このグループは女子しかいない。そして、全員このグループのリーダー、白浪友梨佳の恋人らしいぜ」

「……マジ?」

「マジだよ。マジマジ。全員がそう言ってるんだからな」


マジかよ

そんな二次元みたいなことが起こっていたなんて…


「まぁ、とりあえず次に移りますか。拙者達は貴族からの支援を受けています」

「支援?」

「ええ、ぶっちゃけるとギアンドテイクの関係ですな。彼らは拙者達を支援する代わりに拙者達が活動する際には支援した貴族からの依頼を優先的にこなす、といった感じですな」

「ちなみに士道達は王族やアテナイ教団、私達は地方の貴族、白浪さんのグループは……誰からだったかしら?祐介知ってる?」

「?そういえば知らないな。羽根山は?」

「そういえば拙者知りませんな。誰からなのでしょう?」

「まぁ、知らないならいいさ。ところでどんな支援を受けているんだ?」

「戦闘要員の場合は戦いの魔道具だったり、魔術書ね」

「拙者達、後方支援は技術を伸ばすための場所の紹介ですかな」

「へぇ、結構自分達でやっているんだな。後援者見つけるの大変だったんじゃないか?」

「はははは……。…実はな紫苑、本当は後援者なんて必要なったんだけどな…」

「?どういうことだ?」

「いや、本当はこの国全体で協力して俺達を育成するって話だったそうだけど、士道達がずば抜けてすごかったもんだから王族達が士道達ばっかり目をかけて…、俺達はまあ、うんって感じだったな。まぁダニエルさんとかよくしてくれた人はいるけどな」


なるほど

僕も大変だったがお前達も大変だったんだな

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