そっちかい【4月15日をテーマにショートショート】


けたたましいヘリコプターの音で目が覚めた。


まだ視界がはっきりしないが、目覚まし時計は8時あたりをさしているようだ。

まだ寝れただけに、思わず舌打ちが出る。

朝っぱらから、あんなにうるさい機械に乗れる奴の気が知れない。


ヘリコプターの原理は、レオナルド・ダ・ヴィンチによって考えられた、と何かで読んだことがある。

絵も上手いのに、天才の頭の中はどうなっているのだろう。

もしかして、モナリザを乗せようとしたのだろうか。


というか、モナリザは実在してたのだろうか。


良い目覚めとはいえない朝には、

どうでもいいことを考えてしまうものだ。


とりあえず、顔を洗いに洗面台に向かう。


まだ瞼が重く、視界もはっきりしない。最悪の目覚めだ。


冷水を出して思いきり顔にかける。

とても冷たいが、視界はまだぼやけている。おかしい。


ふと、鏡に映る自分の顔を見て驚いた。


なんと、瞼が大きく膨れ上がっていたのだ。

しかも両方である。

いつもの3倍の大きさはあるだろうか、とにかくひどい顔だ。


おそらく放っておいても治るだろうが、病院に行くことにした。


「何かあったら、とりあえずすぐ病院に行け。」


何が何でも病院に行かず、ぽっくり死んでしまった祖父の遺言だ。

これ以上、説得力のある遺言はないと思う。


とりあえず、グーグル先生に近くの眼科を調べてもらう。

出てきたのは1件だけ。しかも口コミなし。


少し不安だが、わざわざ電車に乗って大きな駅に行くのも億劫だ。

とりあえず着替えて、その眼科に向かうことにした。


家を出て、眼科までの道のりを進む。

目の違和感自体には慣れてきたが、視界は相変わらずだ。


おかげでマップを何度か読み違えてしまい、

徒歩5分の道のりに倍以上の時間を費やすことになってしまった。


・・・


たどり着いたその眼科は、やっぱり帰ろうかと思うほど寂れていた。

料理店などは聞いたことがあるが、病院もこんなに寂れるものなのだと初めて学んだ。


意を決して中に入ってみる。


受付らしきカウンターはあるが、もちろん誰もいない。

「すみませーん。」

大きな声で奥の扉の方に呼び掛けてみる。

すると、扉がゆっくり開き、白衣を着たおじいさんが出てきた。


問題ない。想定内だ。


近づいてきたので、もう一度声をかける。


「すみませーん。」

「はいはいはい。なんでしょう。」

「あのー、朝起きたら両目が腫れてしまっていて。」

「あー、本当だ。こりゃひどいね。」

「そうなんです、瞼がずっと重くて。」

「そうだよねぇ、とりあえず中にどうぞ。」


そう言われ、診察室らしき場所に通された。


受け付けとかしないのか。問題ない。想定内だ。



部屋に入ると、

「とりあえず、視力検査しようか。」

と言われた。

だいぶ目が霞んでいるし、確かに視力は不安だ。


すると、おじいさんは指示棒を持ったまま奥の壁に貼ってるポスターまで歩いていく。

「そこの線のところに立ってねー。」

まさかのアナログ視力検査。


うん、ギリギリ想定内だ。


おじいさんがマークを指示棒で指す。

「右。」と、声を出す。

おじいさんが険しい顔で首をかしげる。

続いて、別の場所を指す。

「下?」

おじいさんがまた首をかしげる。

続いて、別の場所を指す。

「左…?」

「おかしいな。ちょっと待ってね。」


そう言っておじいさんは首を傾げながら、奥の扉に消えていった。


急に怖さが襲ってきた。おじいさんの険しかった表情も気になる。

ひょっとしたら、大きな病気なのかもしれない。


そんな考えに追い詰められていると、扉がゆっくり開き、おじいさんが戻ってきた。




彼の目には、老眼鏡が掛けられていた。


さすがに、想定外だった。



ーーーーーーーー

4月15日は、

世界医学検査デー

ヘリコプターの日

遺言の日


これらのキーワードをつなぎ合わせてショートショートを書いてみました!

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