花ことば【4月14日をテーマにショートショート】


私は、結婚相手や付き合っている人のことを、

「パートナー」と呼ぶことにしている。


理由は簡単で、その言葉には一切のバイアスがないからだ。


人はつい、男性には「彼女いるの?」、女性には「彼氏いないの?」

などと聞いてしまう。


決して悪気があるわけではないし、ある種自然だとは思うが、

もし、質問をした相手の愛情の行き先が同性だったら?

動物だったら?物だったら?


時に何気ないその質問は、相手を傷つけてしまうかもしれない。


だから、私は「パートナー」という表現が大好きだ。

少しこそばゆいが、相棒や相方という表現もいいかもしれない。


私も実際、同じレズビアンの女性とパートナーシップを結んでいる。

まだ結婚こそできないが、同等の契約を結べる制度が日本でも数年前からやっと作られ始めたのだ。


私たちが住んでいるのは、目黒線沿いにある小さな1LDKのアパートだ。


2人暮らしには別に困っていないし、何より1階に住めば

広々とした庭がついてくるというのが大きな決め手だった。


その庭でランチをしたり、ヨガをしたり、日向ぼっこをするのが

私たちにとって、とても大切で大好きな時間だ。


たまに、同性婚ができる海外への移住を勧められるが、

私たちは日本で生まれ育ち、日本の人や自然が大好きなのに、

そして当たり前のように大切な人と結婚をしたいだけなのに、

なぜ大好きな国を離れなければならないのだろうと思う。


だから私たちは、毎日を大切に過ごしながら、

大好きな国で結婚できるようになるのを2人で待っているのだ。


・・・


ある日の昼下がり、のんびりコーヒーを飲んでいると

パートナーが何やら紙袋をもって楽しそうに帰ってきた。


聞くと、今日、4月 日はパートナーデーであり、

フレンドリーデーでもある何とも私たちにぴったりの日らしく、

紙袋の中身には、そのお祝いが入っているらしい。


2人で庭に移動し、椅子に座る。


この椅子も、私たちを支えてくれる大切なものだから、と

たくさん家具屋さんを歩き回って、2人で気に入った物を選んだ。


家にあるものにはすべて、そんな思い出が詰まっている。


紙袋をのぞき込むと、とてもかわいい小さな苗木が入っていた。

オレンジの苗木らしい。


庭でいちばん日の当たる場所に、2人でその苗木を埋める。

私たちの椅子から一番見えやすい場所に、小さな緑が生まれた。


オレンジの花言葉は、「花嫁の喜び」だ。



この苗木が大きくなって実をつけるころには、

私たちはどうなっているだろうか。



ーーーーーー

4月14日は、

オレンジの日

パートナーデー

フレンドリーデー

椅子の日


これらのキーワードをつなぎ合わせてショートショートを書いてみました!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る