蒼穹のメモリア
雪境 ユキ
序章 ここから始まる俺の生活
船を降りる。
この砂浜特有の匂いがした。嗅いだことのある匂いみたいだ。
1度深呼吸をしてみた。海の匂い、魚の匂い、木々の匂い。
不思議と嫌いじゃない。
「あら、君が閃君?大きくなったわねぇ…!」
1人の女性が声をかけてきた。
この人は、母の妹の旦那の妹。……ややこしいな。
確か名前は…………、
「あら?もしかして、おばさんの事忘れちゃったかな?まぁ、最後にあったのは12年前だものねぇ…」
「そんな前でしたっけ?」
俺は笑みを返す。
「………え〜っと、お名前は……」
「木菜月 二葉よ。ところで、ご両親は?」
「後から向かうそうです。俺だけ先に向かってろって親父が」
「そうなのね…………さて、島を案内するわ。行きましょ」
そう言って二葉さんは歩き始めた。俺もそれに歩調を合わせる。
港を出てから、二葉さんは俺にこの島の素晴らしさを教えてくれた。自然豊かな所、なので空気が澄んでいる所。治安が良い所とか、優しい人が沢山いるとか。
それらを聞いただけで、俺はこの島が好きになった。
「そうだ、閃君今年からこっちの高校に進学するのよね?」
「はい。でも正直、まだ友達いないし少し不安です」
以前この島に1度来た事があるかもしれないが、友達が出来たとは思えない。
「じゃあ、一足先に高校に行っちゃおっか!勿論、中には入れないけど外から高校を見るだけでも良いと思うし!」
という事で、俺は二葉さんに連られて高校に向かう事になった。
俺がこの高校を志望したのに特に深い理由は無い。
いや、理由なんて無かった。親父の仕事の都合でこちらに来る事になっただけだ。一人暮らしはまだ早いと俺自身が思ったのもある。
「お、見えた見えた!あそこだよ、閃君!」
二葉さんの指さす方向へ視線を移す。
そこには、田舎であるが故にのびのびと生徒達が過ごせそうな学校があった。
学校についての感想はこれしか言えなかった。
だって、俺が気になり見ていたのは……………、
眩しい程の金髪を風に靡かせて、透き通る様な青い瞳をした少女だった――――――――――――。
その子は外から校庭をじっと見ていた。
俺達に気づくとビクッと震えて逃げるように去っていった。
「…………あの子は………」
ぽつりと口から漏れてしまった。
「あぁ……あの子は、まふゆちゃん。一昨年、両親が交通事故で他界しちゃってね………。今はこの島に居る親戚に引き取ってもらっているらしいけど……。
あ、でもでも彼女も今年から閃君と同じ高校に通うのよ!………仲良く、してあげてね……?」
「……………はい」
彼女と同じ様に校庭を少し覗いて、俺達はその場を後にした。
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