4.最後の一杯:前編
【2080年5月14日。】
「……ありがとうございましたっ! 」
ナナの一声で、店内に残っていた最後の一人がようやく店を出たのは、深夜24時を回っての事だった。
「つ、疲れましたぁ……」
「ご苦労様。今日はちょっと忙しかったな」
「さすがに眠いです……」
ナナは中央のテーブル席にヘナヘナと腰を下ろした。今日の来客数は相当なもので、あちこちから「店員さーん」と呼ぶ声が響き、アロイスですら注文を数回間違えそうになるくらい混乱を極めたのだから無理もなかった。
「明日は畑仕事も無かったよな。家に帰ったら風呂に浸かってゆっくり休もう」
「そうですね。お風呂で寝ちゃわないと良いけど……」
ふわぁ、と大きな欠伸をするナナ。
その様子を見たアロイスは、
「本当にお疲れ様」
と、言いつつ、小さなグラスを大事そうに磨いていた。
「アロイスさん、そんなグラスありましたっけ?」
きらきら光るグラスを見て、首を傾げるナナ。
閉店間際の薄明かりの中でも七色に反射していて、何とも綺麗だ。
「ん、これか。今日のお客さんから貰ったんだよ」
「お客さんからのプレゼントですか」
「うむ。しかも、俺の名前が彫ってあるんだ」
「……えっ! 」
ナナは立ち上がって、キッチンカウンターに近づいた。アロイスが「見てみろ」とそれを手渡すと、落とさないよう細心の注意を払いながらグラスをクルクル回してみれば、側面の一部にアロイスの名前が確かに刻まれていた。
『aloys mule』
グラスの側面に小さく描かれた剣の絵に、被さるよう名前が書かれている。グラス自体も高価そうで、そう安くない品だと素人目でも分かる。
「凄いですね、これを貰ったんですか」
「開店祝いだってさ。こういうのって本当に嬉しくなるよな」
「そうですね。アロイスさん、町の皆さんに人気者になってますよね♪」
何だか自分のことのように嬉しくなったナナは、笑顔を見せて言った。
「そう言って貰えると嬉しいよ。これはしばらくの間、ココに置いとこうかな」
一応グラスは丁寧に磨いた後で煌く酒瓶が並ぶ酒棚の脇に置いてみたりした。
「いい感じだと思います。しばらく飾っておくんですか?」
「飾るだけじゃなくて、たまには使うけどね。くれたお客さんと酒を飲んだりするのに使おうかなと」
「なるほど、凄く良いと思います」
実用品なんかをプレゼントした側は、された側が使っているのを見た時くらい嬉しいことはない。きっとプレゼントしたお客さんも喜んでくれるだろう。
「うん。じゃ、そろそろ閉店にして帰ろうか」
「そうですね」
「他のテーブルの明かりを落としてくれるかな。俺はカウンター側から落としておくよ」
「はい~」
1つのテーブルに1つずつ乗せられた、丸型ガラスに蝋燭を模した洒落たランプ。アロイスとナナは、それらの明かりを消して回った。
「……よし、これで最後だ。暗くなるから足元気をつけてなー」
「はいー」
そして、カウンター席の最後の1個を消そうと手を掛ける。が、その時だった。
ガチャッ、ギィィ……。
鈍い音を立て、突然、玄関の扉が開いた。
「えっ?」
「おや……」
二人が扉に目を向ける。と、そこには立っていたのは老いた男だった。
彼は灰色のハンチング帽を被り、眉と、鼻下から顎まで立派なフサフサの白髭を伸ばし、何とも優しそうな顔をしたお爺さんだった。しかし顔色は若干赤いように見える。
「ん、お客さんですか。すみません、もう店仕舞いでして」
アロイスが断ろうとすると、お爺さんは、
「ファッファッファ!」
と、爆笑しながら、フラフラと歩いて、残り1つだけランプが点灯していたカウンター席に勝手に腰を下ろした。
「店主、酒を飲みたいな! 一杯だけ!」
口ぶりが明らかに酔っ払いのソレだった。顔が赤い理由はそれか。
「……お爺さん、店仕舞いなんですよ。明日改めて来て貰えれば嬉しいのですが」
ナナも疲れていることだし、早く店を閉めておきたい。
ところが、その話をしてもお爺さんは気にせずといった様子で、未だ「酒をおくれっ!」と言った。
「お爺さん、今日は店仕舞いでして……」
「ファファファッ、ここは良い酒場じゃと聞いてな。少しだけ酒を飲ませておくれっ!」
「言葉は嬉しいんですけどねぇ……」
一点だけ明かり灯した薄暗い店内に、陽気な爺さんと疲弊した店員と店主。何とも形容しがたい図だが、この爺さんは飲ませるまで帰ってくれない気配だった。
「……仕方ないですね」
ナナを見つめ、手で仰いで「座っていて良いよ」と伝える。だが、頑張り屋のナナは首を横に振って、笑顔でお爺さんに近づき注文を聞いた。
「お爺さん、いらっしゃいませ。ご注文は何にしますか?」
「おっ、可愛らしい店員さんじゃな。ふむ、ご注文は……旨い酒が良い!」
「美味しいお酒ですか。お任せということで良いでしょうか。おつまみは何か?」
「うんにゃ酒だけじゃ。酒、酒、酒っ!」
お爺さんは片腕を伸ばし人差し指を立てて、それをゆらゆら動かして踊るように明るく振舞う。
「ふふっ、承知いたしました。アロイスさん、聞いていらっしゃったと思いますが、以上だそうです」
「旨い酒だけの注文って、中々難しい事を仰る爺様ですな……」
旨い酒なんか人によりけりだ。
といっても、その人に見合う酒を作るのも酒場店主の仕事だろうが。
(この爺さん、既に顔が真っ赤で出来上がってるから、あまり度数が強いのは出せないよな。だけど高齢の方々はウィスキー類でいうバーボンやスコッチなんか強い酒をガンガン飲んできた世代だ。生半可に凝ったカクテルを造るより、ストレートで出したほうが良いだろうか)
いざ酒を出すとなると、乗り気じゃないにしろ店主という立場上、本気で考えてしまう。
「……お爺さん、ご出身はどちらで?」
情報に探りを入れる。お爺さんは笑顔で、
「北方大陸じゃ!」
と、だけ答えた。
「北方とはノースフィールズですか。北方大陸なんて珍しい名前をお使いになりますね」
「そうかね、ふぁふぁふぁっ!」
北方大陸とは、セントラルフィールズを中央大陸として、東西南北それぞれを東方、西方、南方、北方に大陸を付け合せ呼称したものだ。
今はイースト、ウェスト、サウス、ノース、セントラルフィールズと呼んでいて、旧名で呼ぶ人を初めて見た。
(ふむ。しかし北の国というのなら……)
情報はそれだけで十分。ピンポイントなカクテルにはならないかもしれないが、北国の地方出身なら、その国で作られた酒を使ったカクテルにすればいい。
「承知しました。では、お待ちください」
今回作るカクテルに用意するのは3つだけと非常にシンプル。
ウォッカ、レモンジュース。それと、キュラソー・リキュールという、オレンジ果皮をアルコールに漬け込み、砂糖と水を加えて煮詰めた甘いリキュールだ。キュラソーには多様なカラーバリエーションがあるが、今回は『白色』をチョイスする。
(材料もシンプルならば作り方も簡単だ。今回はバー・スプーンじゃなくて此方を使うが)
カクテル・シェーカー。
主にステンレスを素材とした銀色の、楕円かつ水筒のような形をした酒を混ぜるための器具。
酒を注ぎ入れ、上下に振ることで酒を混ぜることに特化したもので、カクテルを作るといえば、やはりこのシェーカーというイメージが強いのではないだろうか。
また、周知されている誤解としてシェーカーは特段強く『振り抜く』ことはしてはならない事をご存知だろうか。酒によりけりという事もあるが、実際には繊細に行わなければならない作業なのだ。
(ナナの親父さんが遺した王印のシェーカーは、魔力も宿った特製銀を使ったおかげで多少乱暴にしても旨い酒は出来る。だけど、だからこそ繊細に混ぜ合わせれば極上の味わいが生まれるんだ)
まずシェーカーの栓を開いて『氷』を投入する。軽くまわして全体が冷えたら、先ほどのウォッカ、レモンジュース、キュラソーを適量注ぐ。酒が零れないように栓をきっかりと閉めて、利き手(右手)親指で蓋部分を、逆手(左手)の中指で底面をガッチリ固定する。
そして、例の動作を行う。
利き腕と逆側の肩前方にシェーカーを構え、その位置を基点とし、斜め上に振って、基点に戻す。次に斜め下に振り、同様に基点に戻す。腕全体を振るのではなく、手首のスナップを意識して振ることが重要である。
(本当はシェーカーの前準備とか色々あったんだけど、片付け終えてたし、そこだけは勘弁してくれ爺さん……)
そう思いながら、アロイスはシェーカーを振った。
カツカツ、カツカツと―――。
軽快な金属音が鳴り響く。
そして、十数回ほどシェーカーを振ったのち、カクテルグラスに、中身を注ぎ落す。
「……できました」
カクテルグラスに生まれた今日の宝石は、少し透き通る白濁色のカラー。
名称は『バラライカ』。
北に伝わる楽器をモチーフにしたカクテルである。
「お待たせしました。バラライカです」
グラスをスライドさせて、お爺さんの目の前に置く。
と、彼は「洒落たもんが出てきたな!」なんて大声で笑った。
「度数が若干強いので、ゆっくり飲んで下さい」
「ほう」
「果皮を煮詰めたリキュールを入れてあるので、ふわっとした柑橘系の香りと、僅かな甘みがあります」
「ふむ」
カクテルの説明をしながら、お爺さんが酒を飲む様子を伺う……が、しかし。
「ですが、果皮を利用しているためあっさりとしていて……て、うぉおっ!?」
説明している途中、お爺さんは「ファファファ」と笑いながら、度数20を越す強力な酒を一気に飲み干したのだった。
「……旨いッ!」
まるで、駆けつけ一杯のビールを飲み干すようにして、グラスをカァンッとテーブルに置く。アロイスは慌てて身を乗り出し、彼を心配した。
「ちょっ、お爺さん、その飲み方は本当に危険ですから、本当の本当に止めて下さい! 」
「ファハッハッハ!」
「笑ってる場合じゃないですから、水も飲んで下さいよ!?」
それを聞いたナナは、慌ててキッチンに入り、大きいグラスに水をいっぱいに入れてお爺さんの前に差し出すが、彼はまた笑いながら言った。
「いらんいらん。別に大丈夫じゃ。いやしかし、旨い酒じゃて。同じもの、もう一杯貰えるかの!」
何とも気持ちのいい笑顔だ。
しかし本心では、あまり、こういう客に酒を提供したくなかった。
「勘弁して下さい。倒れられたら困りますし、その身を大事にして下さいよ」
「なーに言ってる若造が。じゃが、身を案じてくれるのは有難いのう」
「ですから、また今度来て下さいよ。次には、もっと美味しい酒を準備しますから」
話をしていて楽しめそうだし、もっとゆっくり語り合って酒を飲んでほしい。
ところがお爺さんは鼻の頭を掻きながら笑顔で、こう言った。
「いやいや。ワシは、もうこの地を離れなきゃならんのじゃ」
「む、どこかへ行かれるんですか? 」
「ううむ、呼び声が掛かってしまっての。これでも冒険者なんじゃぞ」
「……冒険者なんですか」
見てくれは本当に普通のお爺ちゃんなのに。本当だろうか。見た目によらないというやつか。
「元冒険者とかではないんですか。現役なんですか? 」
「むろん、生涯現役じゃ!」
細々とした腕を捲くり見せた。
「……怪しいところですね」
「何ィ!」
「うおっと、すみません」
「ワシを馬鹿にするとはいい度胸じゃ。どうじゃ、ワシと腕相撲するか! 」
「いやいやいや」
そんな細い腕、軽く握っただけでポキリといってしまいそうだ。
アロイスはお爺さんの興奮を下げるため、謝罪しながら、仕方なくもう一杯だけは出すことにした。
「もう一杯だけですよ。少し馬鹿にした態度をとってしまった代わりに次の酒は私のサービスしますから、次の一杯で今日は止めて下さいね」
お爺さんは、
「分かった、サービスされるぞ!」
と、自らの胸を鼓舞して言った。
「では、同じ酒を簡単に作りますね」
新しいグラスを用意して、もう一杯を作る準備を進める。
と、その最中にお爺さんは酒棚に置かれたアロイスの名が刻まれたグラスを見つけて「ソレを見せてくれ」と手を伸ばした。
「あっ、これですか。どうぞどうぞ」
客に貰った大事なグラスを、彼に手渡して見せる。お爺さんは、ほぉぉ……と、感心しながら見つめた。
「こりゃ良いグラスじゃのう。高かっただろうに」
「値段は聞いていませんけど、相当良いモノだと思いますよ」
「ほう。ほうほう」
お爺さんがグラスを見ている間に、カクテルはさっさと出来上がる。二杯目のバラライカを彼に差し出すが、彼はあろうことか、二杯目も一気に流し込んでしまった。
「うぉおおっ、だからその飲み方止めて下さいって! 」
「大丈夫じゃって」
「本当に寿命縮めてますよ! 」
「ファファファ、本気で大丈夫じゃて。ワシは相当に酒に強いからのう! 」
「そうは言ってもですね……」
しかし、お爺さんは割りと本気で大丈夫な様子で喋り続けた。
「ふぁっはっは、気にするな。それより、店主さんの名前はアロイスというのかい」
「ええ。手元に在るグラスで見て頂ければお分かりですが、アロイス・ミュールと言います」
「そうかい。ならアロイスさん……」
お爺さんは、さっきまでの笑みを少し崩して、
「1つお願いがあるんだが」
と、真面目な顔をして言った。
「何でしょうか。私に出来ることならばお聞きしますが」
「じゃ、お願いじゃ。このグラスを1日だけ貸してくれないかのう」
「……ん?」
てっきりお酒を作ってくれと言われると思ったが、予想外な依頼にアロイスの目が点になった。
「グ、グラスを貸してくれ……ですか?」
「うむ。この地を離れる前に、旨い酒をこのグラスで飲みたいんじゃ」
「なら今お作りしますから、そのグラスを使って飲んでいただければ」
「いやいや、一人酒をしたいんじゃ」
首を横に振りながら、お爺さんは話を続ける。
「良いグラスで一杯を飲みたいんじゃよ。酒好きなら一人酒をしたい気持ち、分かってくれるじゃろ。明日には旅立たなきゃいかんのでな、今日は帰って一杯をこのグラスでやりたいんじゃ。勿論、これを返す時にお礼はするから、頼む! 」
言っている意味は同じ酒好きとして大いに分かるが、さすがに頂いたものを見ず知らずの客に貸し出すわけには行かない。
「お爺さん、すみませんがそれは……」
当然断ろうとしたのだ……が。
「有難うの!明日には返すからな!」
お爺さんはグラスを片手に持ったまま、いつの間にか出口付近まで移動していたのだった。
「ちょっ、お爺さん! 」
「ファファファ、良い酒じゃった。必ず返すから安心せい」
「あのね、そういう問題じゃなくて!そもそも酒代だってまだ貰ってないんですよ! 」
アロイスの呼びかけに応じることなく、お爺さんは扉を開いて外に出る。して、扉を閉める隙間でウィンクしながら、
「テーブルの上に置いといたぞ」
と、消えていった。
「えっ、酒代を……どこに」
視線を落とすと、確かにテーブルの上には硬貨が2,000ゴールド分置いてあった。しかし、それらは可笑しかった。全てが酷く錆びていて、描いてある絵柄も、今のセントラルをモチーフにしたビルディングではなく、剣と盾が描かれたダンジョンから出土する、何世代も前の硬貨であったのだ。
(何だこの金、古すぎないか。博物館に寄贈する類のものだぞ。あのお爺さん、本当に冒険者で、実は優秀な方だったんじゃ……)
すると、そのお金を指先で摘んで鑑賞してた時。
ナナは「えぇっ!?」と、声を上げた。
「どうした! 」
アロイスはすかさず反応する。と、ナナは震えた声で言った。
「ア、アロイスさん。お酒が……」
「お酒が……どうした? 」
「そ、それ……」
ナナは震える指先で、カウンターを指差す。
一体どうしたんだろう。
指差す方向に目を向けると、そこにはお爺さんが飲んだグラスが2つ並んでいたのだが、明らかな異変があって、直ぐに気づく。
「……あっ? 」
どういうことだろうか。
先ほど確かに、お爺さんが一気飲みしたグラス。なのに、中身が全て残っていたのだ。というよりも、飲んだ形跡すらなく、ただそこに2つの新しいカクテルが並んでいるだけだった。
「な、何だ!? 確かに、あのお爺さんは2杯とも飲んだよな……? 」
「はい。一気飲みしてました」
「そうだよな。ど、どういうことだ……」
間違いなく、お爺さんは「旨い」と言って飲み干していた。それは絶対だ。
だが目の前に在る作りたてのカクテルもまた事実。お爺さんは、魔法使いか何かでカクテルの中身だけを戻したのだろうか。そんな意味のないことをするだろうか。
「何をしたんだ、あの爺さん。まだ外にいるかもしれん! 」
キッチンから飛び出し、玄関の扉を開くが、目の前には月明かりが照らす林道が見えるばかりで、お爺さんの姿形は既に無かった。
「いないか……」
店内に戻り、お爺さんが座っていたカウンター席に腰を降ろす。
ナナも隣に座り、並んだ2つのカクテルを不思議そうに眺めた。
「あのお爺さん、何者だったんでしょうか。一体、このカクテルは……」
「分からんなぁ……。狐につままれた気分だよ……」
2つのうち1つのカクテルグラスに触れる。
ヒヤリとした触感。
それを持ち上げてみる。
酒の水面がゆらりと揺れる。
重みもある。
間違いなく自分が作ったカクテルに違いない。
「とりあえず、このカクテルは冷蔵庫に仕舞っておこう。明日に爺さんは来ると言ってたし、どんなトリックを使った聞いてみるよ。グラスを持ち逃げされたら最悪だが……」
もし持ち逃げされた折角プレゼントしてくれたお客さんにどう言い訳したものか。色々な意味で頭が痛む客だった……。
「今日は帰って休もう。なんか色々と疲れてしまったよ」
「そうですね……。明日にお爺さんが来てくれることを信じて、帰りましょうか……」
カクテルを冷蔵庫に仕舞うと、明かりを消して、ようやく帰路についた。
(あの爺さん、本当に来てくれるんだろうな……)
とんでもないお客に散々振り回されてしまったが、何とか一日を終える事が出来て良かった。
だけど、本当にお爺さんはまた来てくれるかな。そんな心配をしつつ、二人は自宅に到着するとゆっくりと眠りについたのだった。
……そして、次の日の朝。
アロイス、ナナ、祖母の三人が自宅でいつものように朝食を摂っていると、まだ早朝だというのに、コンコンと玄関の戸をノックする音。誰か、来客の姿があった。
「私が出てきますね」
ナナが朝食途中で足早に玄関に向かい、戸を開く。
するとそこには、全身黒ずくめの警衛隊員が二人、険しい表情をして立っていた。
「おはようございます。こちら、ネーブルさんの自宅でよろしいでしょうか」
「えっ。あ、はい。そうですけど……」
警衛隊が何の用だろうか。
すると、彼らは言った。
「最近酒場を開いたアロイス・ミュールさんも、こちらにお住まいですよね」
「……えっ。は、はい。そうですけど」
どうやら、彼らはアロイスに用事があるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます