ずっと、一緒にいたい。
第19話 岩時祭り
「いつもの神社の雰囲気とは、全く違うな」
俺は驚いて、思わず呟いた。
夜の神社の境内は明るく、たくさんの提灯と、祭りの屋台の光に照らされている。
歩く場所を探さなければならないほどの人で、今夜は溢れかえっている。
「祭りは、神と人とを結ぶ儀式」
と、マナは言った。
「そうだったのか」
祭りの間だけ、神たちは人の前に姿を現わすのだという。
「人々は、神を迎えるために、一丸となって祭りの支度を整える」
彼女は微笑んだ。
「神の側で祭りに参加するのとは、…今日は全然、違う」
嬉しそうに俺の手を取り、彼女は優しく指をからめた。
「神輿には乗らなくていいし、好きな人と好きな物を見たり買ったりして、あちこち見て回ればいいだけだから、すごく気が楽」
「…………そうなのか」
鳳凰という立場のマナの気持ちは、俺には全然、想像することが出来ないけれど。
すぐ横で、ヨーヨーすくいを楽しむ彼女の無邪気な笑顔を見ていると、自分まで心が、明るく躍る。
子供達は綿飴を持ち、面を付け、楽しそうにはしゃいでいる。
笑い声を上げて金魚掬いをするカップルの横を通りながら、俺は隣を歩くマナに尋ねた。
「これから、どうなるんだ?」
マナは、首を傾げた。
「わからない。多分、ヒジリ様の采配により、私の鳳凰の任は解かれる」
彼女はヨーヨー掬いで手に入れた、水玉模様の白いヨーヨーをじっと見つめながら、それに続けてこう言った。
「色々、禁忌を犯したから。命があるだけでも、有難いと思わなければ」
彼女は、俺に笑顔を向けた。
「ただの人間になって、もう一度海斗に会えたらいいな」
ドン!
ドン!!
大きな花火が、空一面を彩った。
「俺も、人間になったマナに会いたい」
人々が花火に夢中になり、
空を見上げている隙に、
俺はマナの唇を奪った。
「ずっと、一緒にいたい」
もう一度、離れる事が出来ないくらい、苦しくなるくらいにきつく抱きしめながら、彼女にキスをして囁いた。
「愛してる」
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