第6話

「いやー楽しかった!遊び尽くしたって感じがする!」

「………それはよかったです」

 疲れた………。ゲームというものは恐ろしい。体だけじゃなくて、頭も目も疲れる。

「そうだ。連絡先交換しよ!これからもこうやって遊びたい!」

「え?あ、あぁ良いけど」

 とりあえずこのギャルが悪い奴ではないという事は分かった。

 彼女が望むのであれば全然連絡先を交換しても構わない。

「じゃあ、RAIN………」

「あっ、ごめん。あたしRAINやってないんだ。メールでいい?」

 何と。このご時世でRAINを使ってない人間などいたのか。それにギャルなのに。

「あ、うん……じゃあ、電話番号」

「……………よし!オッケー!登録した!」

 ギャルは嬉しそうに跳び跳ねる。よほど俺の事を気に入ったらしい。

 正直言うと、俺もこのギャルにどこか親しみを感じている。

 どこかあの頃の、明るかった頃のの愛音に似ていて、見ていて懐かしい。

 最初こそ怪訝に思ったけど、本当に遊び相手が欲しかっただけであるらしいし。何で俺を選んだかはまだ謎だが。

 本人は見ていて寂しそうだったから声をかけたとか言ってたけど本当だろうか。

 ま、理由なんてどうでもいいか。

 とりあえず今日は楽しかった。

 その事実があれば十分である。

「そんじゃ、バイバイ。付き合ってくれてありがとね楽しかったよ」

「あ、あぁ……うん」

 ギャルは俺に背を向けて歩き始める。

 俺はその後ろ姿をしばらく見つめてしまっていた。

 なぜだろう。

 寂しい。

 彼女の影が段々と見えなくなっていくのがすごく寂しい。

 彼女と遊んだのがあまりにも楽しかったからだろうか。

 違う。そういう寂しさじゃない。

 俺はこの寂しさを知っている。知っていて敢えて思い出さないようにしてしまっている。

 何だ。この気持ちは。

「………どうしたんだ。俺」

 ふと彼女が歩いていたところに目線を戻すと、いつの間にか姿が消えていた。

 考え事をしている間に遠くへ行ってしまったらしい。

「行っちゃったか……」

 いざ行ってしまうと不思議と寂しさは無くなっていた。

 どうやら彼女に固執していた訳ではなく、彼女が去るという事自体に寂しさを感じていたらしい。

 何故かは未だに分からないが。

「俺もそろそろ帰るか……」

 心のもやもやは残したままであるが、ゲーセンの前で突っ立っていても仕方がない。

 考えるにしても、家に帰ってゆっくり考えた方が良いだろう。

 それに、何だか人の目も気になってきたし……。

 その時、ピコンとRAINの通知音が鳴った。

 ………愛音だ。

『今日は約束守れなくてごめんね。

 代わりと言っちゃアレだけど

 休みの明日

 どこかに遊びに行かない?』

 ………。

 まじ?

 控えめに言って歓喜。

『もちろん行く!

 集合場所と時間はどうする?』

 暫く経ってから既読がつく。

『午後1時くらいに

 今日の公園でいいかな?』

『わかった!』

『じゃあ、また明日ね』

「………まじか。まじかまじかまじかまじか!」

 まさか連絡先を手に入れた次の日に一緒に遊びに出掛けることになるとは!

 展開が早い!嬉しい!

 いいのか?こんなに幸せが続いて。

 そういえば………愛音の私服見るのって、下手したら小学校以来なんじゃないか?

 た、楽しみすぎる………!!

 成長した愛音の私服を拝める日が来るなんて………!!

 生きてて良かった………!!

「ふ、ふふふ………ふふふふふ!」

 今日は気分がいい。

 スキップしてかーえろ!


 ………後から聞いた話だが、その日ゲーセンの前に不審者が出たらしい。

 怖………!

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