第15話 絶望に堕ちた世界でウチは抉られる

ウチは大学生活はほぼ誰とも絡むことなく過ごし、気付けば、ウチは4年生になっていた。


大学で何のイベントも参加せず、サークルも入らず、空虚で虚無な日々を過ごしていたら、いつの間にか3年も経っていた。


そろそろウチも就職を考えなくてはいけない時期だ。


何にしようか考えていたが、ウチは何となくで公務員を選択した。


理由としては1度就ければ安定している事と、両親が公務員なので、仕事に対しての知識もあったし、公務員という存在はかなり身近であったためである。


ウチは公務員になりたいと両親に打ち明けた。


すると父は軽く笑いながら「今のままじゃ絶対無理」と言ってきた。


それにイラッとしつつも、本気である事を伝え、予備校も考えていると言った。


すると母が、予備校に通うお金を全額出してくれたのだ。


ウチは自分が貯めたバイト代で出すつもりだったのだが、母のその気持ちがとても嬉しく、絶対受かると強く自分に言い聞かせた。


そこから勉強漬けの日々が始まった。公務員はまず筆記試験に受からなければ始まらない。


どうにか文字が読める部分が多い問題や、IQテストに近い判断推理などを中心に点数を稼ぐ作戦で、コツコツと勉強に励んだ。


成果は少しづつ出始め、点数は徐々に徐々に上がっていった。


だが、それよりもウチにはもっと難題なものがあった。





面接試験だ。




コミュニケーション障害を抱えるウチとしては中々にキツい。人の目を見るなど、1秒持てば良い方だ。


そもそも今までの人生で、人と会話が極端に少なかったため、その様子は挙動不審という言葉がピッタリだ。


予備校でも模擬面接は何度もやったが、かなりボロボロだった。


言葉は出てこない、想定外の事を聞かれると何も答えられない、そもそもまず声が小さく聞こえないなど散々だった。


それでもとにかく勉強と面接練習続け、ついに本番が訪れた。


まずは筆記試験。相変わらず文字は歪むが、とりあえずどうにか読める問題に狙いを絞り、解いていった。


解答はマークシート式だったので、番号さえ分かれば答えられた。




そして運命の結果発表。











受かっていた。





第1関門を突破した。次は問題の面接試験だ。





後日いよいよ本番が来た。


慣れないスーツを着て、試験に挑む。


面接官は3人、優しい笑顔で質問をしてくれた。


ウチは緊張しながらも、練習してきた事を思い出し、1つずつ丁寧に答えていった。




それから1週間後、結果の通知が届いた。













不合格だった。







正直ショックはかなり大きかった。1発で決めたかったが、とりあえず今は切り替えて次に行くしかない。


そして時期は12月。別の市の試験を受ける事に。


筆記試験は前のとこよりも簡単だったので、難なく受かった。


次の試験は集団討論と個人面接。


これを乗り越えると最終面接にたどり着く。


ド緊張の中、集団討論が始まる。


お互い様子を窺いながら話は進む。

リーダーシップを取ってくれる子が隣にいたので、その補佐的な役割を急遽取り、乗り切った。


その後は個人面接。面接官が運良く競技かるたの話に食いついてくれた。

恐らく、8割ぐらい競技かるたの話をしていたと思う。


この時のウチはめちゃめちゃ饒舌だったと思う。



1週間後、結果が届いた。








合格していた。




次はいよいよ最終面接だ。


最終面接は市の職員だけではく、市長とも面接をするという形式だった。


緊張の中、面接は順調に進んでいった。


すると、黙って見ていた市長が突然口を開いた。



「君は人間として何かが不足していますね。それが何かは分からないけれど。君は何かしら武器を持った方が良い。どのような武器を持ったら良いのかは僕には分からないけど、君にはそういうものが足りない」



ウチは頭が真っ白になった。この人は何を言っている?


そのまま面接は終了した。その帰り道、ウチは怒りを通り越して無の感情だった。


しかし、その通り過ぎた怒りは、日を追う事に戻ってきた。


何故ウチは否定される?何を見てそこまでウチはそこまで言われなければならない?


ウチはしばらくイライラする日々を過ごしていた。


それから1週間後、結果が届いた。













不合格だった。






ウチは泣いた。世間はどこまでウチを否定する…!?

1人ぼっちのリビングで、ウチの掠れた叫びはすぐに消えていった。


他にもいくつか公務員試験は受けたが、全てダメだった。


ウチはまた来年受け直す決心をした。この悔しさは忘れずリベンジをすると。


しかし父から言われたのは

「就職浪人は許さない。何かしらの職に就け」


という言葉であった。


しかし季節はもう既に冬。受けられる会社は既に限られていた。


だが、贅沢を言っていられる状況ではなく、いくつか候補を挙げ、エントリーシートを提出した。


しかし、ほとんどの会社が面接を受けさせてもらえなかった。


理由は、「障害者の対応の仕方が分からないから」であった。


ウチは聴覚過敏から常に耳栓をつけて生活していたり、視覚過敏ようのメガネをかけていたが、それに面接官が気になり、そのような判断を下された。


ウチの精神はどんどん追い詰められていった。


そしてある日の学校の帰り道、突然ウチの体を異変が襲った。


真っ直ぐ歩いているはずなのに、どんどんどんどん右にズレていく。柱や木にぶつかりそうになる。


三半規管に影響が出たのか、足がおかしくなったのか、何度やっても右にズレ、普通に歩けなくなってしまったのだ。


ウチはすぐに病院に駆け込んで、診てもらった。


だが、どこにも異常は無いとの診断だった。


それから数日後、ウチはそれは精神が追い詰められた事から来るヒステリーの症状の1つだという事を知った。




更に追い討ちは続いた。そろそろ卒業が迫る中、大学から通知が届いた。



それは、「卒業不可」の通知だった。




ウチは硬直し、それからすぐに気を取り戻し、大学に問い合わせた。


理由は、成績不振により、卒業に必要な単位を満たしていないためとの返事が来た。


それなりに大学には試験で様々な対応をしてもらっていたが、それでもウチは追いつけていなかったようだ。



ウチは就職も決まらず、大学も卒業出来ないという信じたくない現実に立たされたのであった。

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