第1話 僅かに浮き始めた世界でウチは漂う
ウチは小学校1年生になった。特に周りと何ら変わらなかったはず。保育園からの幼なじみと同じクラスにもなり、新生活は緊張と楽しみに溢れていた。
ある日の授業、1学期終わり。振り返りシートを書くことに。ウチは何も考えず書いていた。
先生に提出し、思わぬ言葉が返ってきた。
「もう少し綺麗に書いて」
すぐに受け取る事は出来なかった。ウチは普通に書いたつもりなのに、何でそんなことを言われるのだろうか。
ウチはとりあえず書き直して提出し直した。少々モヤモヤを抱えつつ。
「いやだからもうちょい綺麗に書いて。読めないから」
綺麗に書いても、結末は変わらなかった。
ウチは字の汚い人として定着する事となった。
幼なじみ以外ともあまり馴染めないまま過ごして行くが、ウチはそこまで不自由さは感じなかった。
ふわりふわりと浮き始めた事にまだ自覚の無いウチだったが、悪い方向に目立つ事は幸いな事に無かった。
まだ、この時までは……。
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