第259話 日常に戻したいと思った気持ちからどんどんかけ離れていってしまう。

家に帰ると父さんは黒髪になっていた。

「朝からずっと酷え目に遭い続けている」

出会い頭にそう言った父さんは笑いながら千歳に「お前はモテモテだな。皆に必要とされているな」と言った。


千歳は「そうかなぁ?」と照れた後、昼食の手伝いをすると母さんのところに行く。



「気は晴れたか?ツネジロウが怒っていて怒れなかったんだろ?」

「うん、わかる?」


「当たり前だ、俺はお前の父親だ。

そこら辺の事を気にしないからツネジロウはツネジロウなんだよな」

そう言って笑う父さんに神を超える事を宣言する。


「…また凄い覚悟だな」

「ダメかな?」


「ダメなことなんてないさ。ツネノリが居てくれて助かるよ。

俺たちじゃ千歳が納得しないからな。

ツネノリだから受け入れたんだ」


「そうかな?」

「そうだろ?」


一瞬母さんを見たら千歳が居なかった。

「母さん?千歳は?」


「待っていろと言って消えた。

何をする気やら…」


そうして帰ってきた千歳の手には器に入った米があった。


「ウチの残りご飯だけどツネノリに持ってきたよ!」

「ありがとう!」


昼食はイノシシのカレーで皆パンで俺だけ米だった。


「見たらカレーだからご飯を持ってきたんだよ。

ルルお母さんのカレー美味しいね。

お父さんはズルイなぁ、お母さんのカレーもルルお母さんのカレーも食べてさ」


「千明のものはまた違うのか?」

「うん、人によっても違うしお店によっても違うからカレーって面白いんだよ」


「なるほど」

「千歳…」


「わかった。やるよ」

「本当か?」


「お母さんに頼んでおくよ」


「千歳?」

「ツネノリはウチのカレーも食べたいんだよ」


「そう言うことか」


食後に父さんは俺と母さんを呼んで話があると言った。

千歳は既に知っていて、黙って聞いていた。


「俺がセカンドとファーストの神代行になった」

「それは大出世だな」

「おめでとう父さん」


「めでたくない」

だが父さんはやる気になっている気がした。


「その為にツネノリさえ良ければなんだが勇者の役目をツネノリに頼みたい。

無論、ツネノリには一般的な常識が足りないのもわかっている。

ゼロガーデンの基準で進めるとファーストやセカンドが困ってしまう。

だから後で頼みに行く予定だがメリシアにもツネノリの補佐を頼みたい」


「メリシアと?」

「嫌か?」

嫌なんかではないが、日常に戻したいと思った気持ちからどんどんかけ離れていってしまう。


「良いのかな?」

「後で頼みに行くさ」


「そしてルル」

「なんだ?」


「ルルには俺の神代行を補佐して貰えないか?」

「任せろ」


「嫌がらないのな」

「どうして嫌がる?私が居た方が安心だろ?ツネジロウになっている時間の事とかツネツギは気になるであろ?」


「確かにそうだな」

「後日正式に東から連絡があるからよろしく頼む」



「話は終わったよね?ツネノリ、私とコレからの話をしようよ」

「これから?」


「お礼も含めて私とゼロガーデンを旅するの。

イーストからノースに行って、ウエストに寄り道してサウスに行くの。


イーストでテツイさんに会って、ノースでザンネさん、ウエストは直接のお付き合いは無いけど、ショートソードとロングソードはガクさんとアーイさんの映像を見たでしょ?

それで最後にサウスの城で王様に会うの」


「何日かかるんだ?」

「私は外での生活があるから瞬間移動するよ。

場所は多分わかるしその前に光の剣を飛ばしてもいいかもね。

本当はガーデンの景色を楽しみたいけど時間的に無理だからさ」


「なんだ、城に行くのか?じゃあ行く前に言え。連絡をしておいてやる」


「千歳、ツネノリのお礼ならマリオンはいいのか?」

「あー、二の村はなぁ…」


「行ったら何をされるか…か?」

「地獄の鬼ごっことか下手したら腕自慢達から勝負を持ちかけられるよ?」


「ああ…外したいな」

「でしょ?」

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