ツネノリと千歳の章の章⑤お礼参り。

第246話 ルノレお母さんも居るから見せられないよ。

最初に行くテーブルはルノレお母さん、ガミガミお爺さん、王様とジチさん、カムカさんとマリオンさんのテーブル。


「お、ツネノリとチトセだ。どうしたの?」

「皆にキチンとお礼が言いたくてツネノリ誘ったの」


「そうかそうか。座りなよ」

私達は勧められるままに座る。


「ツネツギの嬢ちゃんよぉ、おめぇまた俺の事ガミガミって呼んだろ?」

「え?」


「さっきガミって言ったじゃねえかよ」

「あはは、ごめんなさい」


「え?ガミガミ爺さんはガミガミ爺さんじゃないか」

「小僧!」


「あはは、ごめんなさい。

記す者の記録を読んだ時に王様の視点だったから名前が全部ガミガミ爺さんになってて…」

「まったく、それでガミガミ呼びか…」


「ツネノリ、お礼」

「ああ、ドフさん。メリシアの鎧の件を聞きました。

新機能まで付けてもらってありがとうございます。

クロウに掴まれた時も怪我が無かったのは鎧のお陰です。

ありがとうございました」


「へっ、プロとしちゃあ当然だぜ。

その首に下げた石か…

セカンドの嬢ちゃんはそれを目指して赤い鎧にしたんだ。

おめぇも立ち止まらずに相応しい男になりな」

「はい!」


「掴まれたって言えばさ、無事に助けられて良かったね」

「はい」


「お姉さんの命も助けてくれたし、ツネノリの剣は命を助ける剣だからお姉さんは誇らしいよ」

そう言ってジチさんはツネノリを抱きしめる。


「恥ずかしいです」

「何言ってんの。私もお母さんみたいなもんでしょ?」


気になる。


「ねぇ!修行してきた時のツネノリってどんな感じだったの?」

「そりゃあ真面目で素直で芯も強くて、理想の子供だったよ」


「見たいなぁ」

「千歳?」


「ダメなら怒られるでしょう。記す者よ…来て」

「はい!千歳様!」


「こんばんは。お願い聞いてくれる?」

「神様に聞かないと…」


「しーっ、静かに見て。東さんはあんなにいい雰囲気なの。

邪魔出来ないよ。

もしダメだったら後で私が怒られるからさ、ツネノリの修行風景を見せて」


「えー…」

「はい、美味しいご飯あげるからお願い!」


「仕方ないですね。

どれが欲しいんですか?」


「ジチさんの命を助けた日とマリオンさんと修行をしている日が欲しいの」

「はい、コレですよ」


二冊の本が出てくるが薄い本なのであっという間に読めた。

ん?何だこの部分、変な部分がある。


「映像見たいなぁ」

「神様に頼みますか?」


「ううん、勝手にやる。映像化ってどうやるんだろ?1人なら勝手に見れるんだけど映像にするのは…」

「チトセ?」


「記録の映像化をしたいんだけど皆に見せるのはどうやんだろ?」

「次元球の映像を出すのは空に出す感じだけど、頭に出すのと違うのかな?」


「王様ありがとう。やってみる」

少し悩んだが出来た。


「千歳、神如き力の乱用はどうなんだ?」

「このくらいなら平気だよ」


映像を見てマリオンさん達は喜んで食い入る。


映像のツネノリはアーティファクトと同じ硬さの鉄が切れないと悩んでいて、少々過激な方法だったが、ジチさんの頭上に出す事でツネノリの危機感を煽ってやり切らす方法に出る。


ジチさんの言葉、ツネノリの剣は命を守る為の剣と言う言葉で目覚めたツネノリが鉄を切る。

そして一度切れたツネノリは残りの鉄を粉微塵にしてジチさんを守る。


感極まったジチさんがツネノリを抱きしめて感謝を伝える。


だが私は記録の中で不穏な一文を読んだのだ。


それを映像で見たくなって今呼び出した。


気付かずに映像を見た皆は感動していて、ジチさんは思い出し泣きをしている。


「ごめん、もう一度見たい」

そして問題の箇所、初めてツネノリの剣が鉄を切った瞬間を見る。


あ、本当だ。


私は無言で王様を見る。

「髪が赤い時のチトセは心を読めるんだろ?聞こえる?」


私は頷く。

「気づいちゃったか、皆には内緒にしてね」


「うん」

「凄いね。

僕にだけチトセの声が聞こえるみたいだ。

ツネノリに足りなかったのは覚悟と切れると言う確証だから最初の一撃だけは手を貸したんだ」


そう、王様はあの瞬間ツネノリに見えない速度、本気の力を一本に集約して放った。

超高速で飛んだ剣がツネノリの剣のほんの先を飛んで鉄に切り込みを入れていた。


「ツネノリの剣がアーティファクトの鉄に触れる瞬間、1秒よりも短い時間でその前にキヨロスの光の剣が鉄を切る。

その後に剣が鉄を抜けて切断が成功したツネノリは自信をつけて残りの鉄を1人で切り刻んだ」

と書いてあったのだ。


「千歳?どうした?」

「ううん、子供のツネノリ可愛いね」


「そうだよね!」

ルノレお母さんが感極まって泣きながら映像のツネノリを見る。

ジチさんと2人であーでもないと話している。


「なぁ、マリオンも修行したんだろ?ジチさん達と話さないのか?」

カムカさんが普通に聞いている。


「マリオンさん、今読んだ部分の映像出していい?」


「え?それ大丈夫な奴?」

「大丈夫?」


「うーん、ルルお母さんが見たら怒髪天かも、あー、流石にお父さんもキレるかな」

「やめよっか」

「うん」


「別に、この前ルルにも最初は神様に泣きついたって言っていたんだから、キツかったのはみんな知っているよ」

王様がそう言うが皆勘違いしている。


泣きついたのはツネノリではない。

マリオンさんなんだ。


「ツネノリ?おーい!?あれ?やだっ!神様!ツネノリの返事が無いよ!なんか息も弱いし!」

「マリオン…子供に無理をさせ過ぎだよ。治すけど僕がいるからいいわけじゃ無いよ?」

「はーい」


治してもらうとまた修行をする。

そしてまた死にかける。

それを何度も繰り返して強靭になったツネノリは生き延びる。


強靭になっても肉体の限界まで鍛えられる訳で夜は死んだように寝ている。


よく10年保ったな。

私なら死んでいる。


私は言葉にしないで王様に語りかける。

「東さんに泣きついたのはツネノリを何度も殺しかけたマリオンさんだよ。

ルノレお母さんも居るから見せられないよ」


「マリオンは…わかった。今度僕に見せてよ」

「おっけー」


私達はカムカさんにお礼を言う。

「いいって、それより今度ウチまで遊びに来てくれよ。

チトセと歳の近いのがいるからさ」


「ふふ、鬼ごっこしたら楽しいよ」


「神如き力とかアーティファクトを使ってもいいのかな?

ダメだと勝ち目無いよ」


「鍛えてあげるよー」

ヤバい、殺される。



「考えておきます!」

「あはは、嘘だよ。普通に遊びに来てね」

マリオンさんは妖艶さと可愛らしさが合わさった笑顔で笑う。


「カムカの家に行くならウチに寄ってよ」

「え?王様はまだ私を子供のお嫁さんにする話を諦めてないの?」


「それは追々。まずはうちの子供達を見て評価して欲しいんだよね」

「そんなまた恐ろしい事を…」


「気が向いたらでいいからさ、考えておいてよ」


これ以上このテーブルに居るといい事なさそうだから記す者にゆっくりして行ってねと言って次のテーブルに向かう。

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