第223話 邪魔をするなクロウ!!俺の女に手を出すな!!!

千歳には少し離れた場所で援護に徹底をして貰っている。

モニターの中にいるキヨロスさんとマリオンさんの動き、俺たちの動き、それらから勝つ為に必要なものを探してもらう。


「メリシア!マリオンさんの真似は出来るか?」

「万一の為にツネノリ様の剣を使わせてもらって良いですか?」


「それでメリシアが安心するなら使ってくれ!」

俺はメリシアの腕に剣を纏わせる。


メリシアはそのままマリオンさんの真似をしてクロウの腕に乗る。そのまま映像のマリオンさんと同じ動きを再現して腕を斬りつけて首まで駆け上がる。


「メリシア…、しっかりやり切っている…」



「【アーティファクト】……【アーティファクト】!!」

そのまま同じ動きで首を斬り抜いて雷を上乗せしたアーティファクト砲を撃ちこむ。

マリオンさんの時と同じように黒い血煙が巻き上がってメリシアの姿が見えなくなる。


黒い血煙が消えた後、メリシアの姿が見える。

!!?


見えたそこにはクロウの頭部がなくなっていた。

勝ってしまったのか?


だが少ししたらクロウの頭部は復活をしている。

…まだ駄目か。


よし、それなら俺も真似をする!


「【アーティファクト】!!」

火、雷、氷、水で12の剣を作って飛ばす。


狙いはキヨロスさんと同じで右手を輪切りにする。


「切れろ!!」

だが12本の剣はクロウに傷をつけるだけで斬り裂くまでにはいかない。


…くそ、俺の剣だと斬れないのか?

この数時間の間でもそうだ、メリシアの動き、千歳の技…

全てにおいて俺は1人だけ劣っている気がする。


「まだだ!【アーティファクト】!!」

だがやはりクロウの右腕を斬るに至らない。

何が足りない!?何が違う!!

確かに俺はキヨロスさんに比べれば未熟だ。

だがそこまで劣っているとは思えない。


次元球から声がする。

「ツネノリ、昔の修行を思い出すんだ。

今、君の才能であり欠点を教えてやる。

君はそこそこやれてしまう事が問題なんだ。

その剣だって僕が「革命の剣」を授かった時に出した光の剣より十分に強い。

そのせいで創意工夫がどうしてもおざなりになる。

よく考えて思い出せ。

僕はその剣を振るう時にどうしろと教えた!」




剣の出し方…

この前貰った記憶を思い出す。


「せんせい、できません!!」

「もう一度見せるから真似をするんだ【アーティファクト】」


そしてキヨロスさんは硬い鉄のようなものを斬り刻む。

「ツネノリ、これはアーティファクト「龍の顎」と同じ硬さにしてもらった鉄だ。さあ剣を出してみろ」


「はい!【アーティファクト】!」

だが俺の出した剣では斬り刻むことは出来ない。


「できません…、せんせいのけんはひかりのけんだから…」


「違うぞ。この前も言っただろう?剣の種類が問題なんじゃない。

重要なのはイメージする力だ。僕はこの前にも教えたはずだよ。

ただ鉄を斬ると思うんじゃない。アーティファクトを破壊するイメージで剣を出せ」


「はい」

「さあ、もう一度やってみるんだ!!」


「【アーティファクト】!」

そして俺は剣を振るう。

今は火の剣を出している。

何回か切ってみる。


アーティファクトを斬る。

そう言われてもどういうモノなのか想像がつかない。


「止まるな、聞きながら剣を振るえ!鉄ではない別の物だ!とても硬いモノなんだ。それは普通では壊せないがツネノリの剣なら壊せるんだ。

足りないのは斬れると信じる心とイメージだ!」


だがそう言われてもわからない。




「きゃあぁぁぁっ!!?」

俺はハッとして目の前を見るとメリシアがクロウに捕まっていた。


「メリシア!!くそ!離せ!!!」

俺は剣を飛ばしてメリシアを掴んでいる手を狙うが思い通りに斬れない。



「よくも首を吹き飛ばしてくれたな女ぁ!!」


「メリシア!!」

「ツ…ネノ…リ様…」


「殺させるか!!!」

剣を出すがその全てはクロウの腕を切断するに至らない。


「お前は後回しだ男ぉ!!!」

マズい。このままではメリシアが…


「諦めない!ちゃんと思い出しなさい!!お姉さんが抱き着いた日の事を最後まで思い出しなさい!!」


…ジチさん?

次元球からジチさんの声がした。


ジチさんに抱き着かれた日?

……

………

…………


「キヨロスくん。やっぱりこの方法しかないよ」

「ジチさん…、でも…」


「ジチさん?せんせい?」


「ツネノリ、よく聞いて。これからお姉さんの上にあのアーティファクトの鉄を落として貰うよ」

「え?あぶないよ」


「そうだね。当たったらお姉さんは死んじゃうね。でもね大丈夫。きっとツネノリが斬ってくれるって信じているから。いいかい?」

そう言って膝立ちで俺の目を見たジチさんは微笑んでくれてこう言った。


「お姉さんはツネノリがあの鉄を斬れるって信じている。キヨロスくんも信じている。信じられていないのはツネノリだけだよ」

「でも、おれほんとうにきりかたがわからないんだ」


子供の俺はそう言って泣いてしまう。


「そうだね。アーティファクトを斬るイメージ何て普通じゃできないよね。でもさ…お姉さんを助けてくれないかい?」

「え?」


「ツネノリが斬ってくれれば助かるんだ。それが鉄であっても何であってもツネノリの剣なら斬れるんだ。お姉さんの事を助けてよ」

そう言ってジチさんが笑うと立ち上がって数歩離れる。


「ジチさん、あぶないよ!!」


「さあ、やってキヨロスくん!!

ツネノリ、頼んだからね!お姉さんは怖いから目を瞑るけど守ってよね!!」


そう言って目を閉じるジチさん。

苦渋の決断の顔で「「瞬きの靴」…、ジチさんの上に飛ばす…。【アーティファクト】」と言って鉄の塊をジチさんの上に飛ばしたキヨロスさん。


万一を考えていたのだろう。

かなり上空に塊は出現した。


「【アーティファクト】!!」

俺は火の剣を飛ばす。


「ツネノリ!今は限界なんてないんだ!1本が不安なら何本でも出して斬り刻め!!」


俺はその声に合わせて剣を12本出す。

12本の剣は一生懸命に鉄を斬るが、小さな傷しかつかない。


「きれろ!きれろ!きれろ!」


俺がいくら叫んでも鉄は斬れない。


「ツネノリ!変に考えない!その剣は命を守る剣なんだ!命を守るために力を使いなさい!!!」

命を守る。

それはイメージが出来る。


あの鉄が当たればジチさんは死んでしまう。

美味しいご飯。

優しく抱き寄せてくれながら眠るまで話してくれる姿。

一緒にご飯を作る時の楽しそうな笑顔。

俺が残さずに食べ切った時の嬉しそうな顔。

失敗してもうまく出来なくても優しく笑ってくれる顔。


あの鉄はそう言った大事なものを奪う悪いものだ。


命を守る為に剣を振るう。

「おまえはジチさんをうばうやつだ!やらせない!!【アーティファクト】!!!」


さっきより剣の威力は増した。

だがまだ切断には遠く及ばない。


剣を飛ばす。

絶対に斬る。

キヨロスさんに教えて貰った通り剣の全てに俺が居る。


どうしたらこの鉄を斬れる?

そうじゃない。斬る事だけを考える。


前に斬った鉄を思い出す。

あの時の感覚で目の前の鉄を斬るんだ。


「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!」

段々と鉄がジチさんに近づく。

このままじゃ間に合わない。


「きれろぉぉぉぉぉっ!!!」





その瞬間…、1本の剣が鉄を斬った。

それは自分でもよく分からなかったが確実に斬った。

剣が弾かれることなく通った感触。


斬れた。俺の剣が鉄を斬った!!

出来る。俺の剣は出来るんだ!!


そう思った後は早かった。

あっという間に全ての剣で鉄を斬って小さくしていく。

ジチさんに当たる塊は一つもないようにする。


とても長い時間をかけた気がする。

でも、後でキヨロスさんに聞いたら一瞬の事だったと言っていた。


俺は全ての塊を斬り刻んだ。

「できた…、できたよジチさん!!」

そう言って俺は駆け寄る。


「ああ、出来たなツネノリ。これで剣の修行はひとまず終わりだ!明日は瞬間移動の修行を始めよう!!」

後ろでキヨロスさんの声が聞こえた。


そこでようやく強く目を瞑っていたジチさんが目を開けて駆け寄る俺を見る。

そのまま俺を抱きしめる。


「出来た!!出来たじゃないか!ツネノリ!!」

「できたよ、おれがやったよ!!」


「ああ、ありがとう!!ツネノリのお陰でお姉さんは助かったよ!ありがとう!!」


そう言ってジチさんが涙を流しながら俺を強く抱きしめてくれる。

「くるしいよ」


「構わないの。嬉しいときは嬉しいってちゃんと伝えるの!お姉さんは今すごく嬉しいの!ツネノリがお姉さんの為に出来なかった鉄を斬ってくれたことが嬉しくてたまらないの!!ありがとう!!」





そうだ…

出来る出来ないじゃない。

やるんだ。



「アンタの剣で大事な命を守るんだ!アンタの剣は命を守る剣なんだろ?

タツキアの時とは違うんだ!守る命が目の前にあるんだ!守って見せなさい!!」

一瞬だったと思う。記憶に飲まれた俺を現実に引き戻す力強い言葉。


この剣で命を守る。

メリシアを守る!!



「【アーティファクト】!!!」


俺の剣が光り輝く。

見たことのない輝き方だ。

その剣なら命を守れる。

メリシアを助けられる。



「メリシア!!すぐに助ける!!」

「何もできない男は引っ込んでいろ!!」


「邪魔をするなクロウ!!俺の女に手を出すな!!!」


その瞬間、俺の剣がクロウの手首を切断した。

「何!?」


そして手ごと落ちてくるメリシアを解放する為に更に剣で手を細切れにする。


拘束の解けたメリシアはひらりと着地すると俺の元に駆けよる。

「ツネノリ様」

「メリシア、無事か!?」


「はい、この鎧は凄い鎧ですから大丈夫です!!」

「良かった。俺は大事な命を守れた」


「ツネノリ様…ありがとうございます」

「当たり前のことをしただけだ」


「違います。俺の女って言ってくれたじゃないですか」

兜のせいで顔は見えないが嬉しそうな空気が伝わってくる。



「本当の事を言っただけだ」

ちょっと気恥ずかしくて俺はその言葉しか言えなかった。



「よくもやってくれたな!」

そう言ってクロウがこちらを見る。

腕はもう再生していた。


「どれだけ再生しようが関係ない。無限でない限りどこまでも斬り裂いてやる!【アーティファクト】!!」

そして俺は再び剣を飛ばす。


多少抵抗を感じるが問題なく剣はクロウの身体を斬り裂いて行く。

疲労が蓄積しているからか?クロウの治りが遅い気がする。


このまま斬り刻めるか?

そう思っていると後ろから千歳がやってきた。


「いやぁ、危なかったね。王様からまた待てって言われて悶々としちゃったよ。

でも見つけたよ!クロウの倒し方!」

「待て?」


「うん、ツネノリが本調子じゃないから今はちょっと待っていろって言われて、そのまま王様とマリオンさんの映像をずっと見ていたんだよ」

そうか、それでメリシアが捕まっても助けに来なかったのか…


「王様たちの映像は凄かったよ!後でツネノリも東さんに見せて貰った方が良いよ!!」

「ああ、わかった。それでクロウの倒し方ってどうすればいいんだ?」


「じゃあ、説明するからその間も剣は休まないでね。斬り刻むのもツネノリの仕事なんだからね」

そう言って千歳は話し始めた。

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