第185話 私が人間でいられるのは三番目!

あれから2時間が過ぎた。

当然単純計算で900体しか倒せないのだからまだ6000体近く残っている。

悪魔の猛攻は激しくて、このままだと押し通される気がした。


「ツネノリ、疲れたんじゃない?変わるよ」

「ああ、30分だけ頼む」


そう言ってツネノリが剣を二本に減らす。



「おっと!男の空を飛ぶ剣が残り2本になったぞ!?これは限界が近いのか!!?

何故接近戦を挑まない!?挑めないのか!!?」


そう、接近戦は挑めない。

王様が経験をしていたが、悪魔に接近戦を挑んで抱き着かれて自爆をされた事がある。

一度でも捕まったらその場で嬲り殺される。


ツネノリが2本に減らした穴を私が剣を増やして対応をする。

今は2本の剣が縦横無尽に悪魔を斬り殺している。

本音はもう一本出したいのだがそれで人間の限界を超えても隠し玉が使えなくなってもダメなので我慢をする。


「ツネノリ、数を数えて」

「何!?」


「30秒だけ本気を出す。30で止めて!行くよ!!」

そう言って私は神如き力を発動する。

赤く光った髪と瞬間的に4本に増やした剣が橋周辺から森までの敵を斬り刻む。


「千歳!時間だ!!」

私は驚いて剣を仕舞う。


「助かったよ。まだ20秒くらいの気持ちだった!」

神如き力を使った時の疲れは殆どない。


これを応用して一気に10分くらい発動させて1000体くらい倒せないだろうか?


「これは凄い隠し玉だ!女の特別枠が一瞬本気になったのか、4本の剣が500人のプレイヤーを斬り刻んだ!これで今は1500体がやられてしまったぞ!」


「千歳、休め。俺が今度は動く」

「まだ30分経ってないよ?」


「剣を収めて回復していたから安心しろ」

「それって30秒?」


「それでもだいぶ楽だったぞ」

「嘘ばっかり。私に神如き力を使わせたくないだけでしょ?」


「…」

「嘘が下手だなぁ」


「1個いい?もしもツネノリが「究極の腕輪」の中に居たら1分で何体倒せる?」

「何だそれは?まあ600体くらいじゃあないか?剣を10本出して一斉攻撃に当てる」


45秒なら450体か…


「参考になったよ。ありがとう」



まあ、今日はそんな必要も無いだろう。

橋から来る悪魔の数と森から出てくる数はある程度一定なのだ。

そう思って油断をしたのは確かだ。


その瞬間、恐ろしい光景が目の前に広がった。


悪魔が2体がかりで1体の悪魔を投げ飛ばしてきたのだ。


「まずい!」

私は光の剣を出して悪魔を空中で迎撃する。


「今の慌てよう!」「島に乗り込めれば勝てるぞ!!」悪魔達はそう気づいて次々に悪魔を投げ飛ばしてくる。


「ツネノリ、剣を増やして迎撃して!!」

「了解だ!!」



「ここで残り時間は2時間!残りのプレイヤーは4500人になってしまった!」

ジョマの声が本当なら私は後1時間何とかすればいい。


やるしかない。


ジョマは全て私の一歩先に居る。

無理をしてでもその先に行く必要がある!!



「ツネノリ!45秒だけ本気を出して。私自身が「究極の腕輪」になる!!」

「何?」


「今のままだと切り崩される。

橋の辺りの連中と島を囲んでいる悪魔を優先して殺して!!」

「だがそれではお前が!」


「優先順位!!一番は完全解決、二番はツネノリが無事な事!私が人間でいられるのは三番目!行くよ!!」


そう言って私の髪は真っ赤に光る。


「千歳!?」

「使って!イメージ!!神如き力!私自身が「究極の腕輪」。ツネノリの負担を神の力で打ち消す!!」



「おおおぉぉぉぉぉっ!!【アーティファクト】!!」

私の前でツネノリが15本の光の剣を出した。


「ツネノリが15本!?」

「お前が限界を突破するなら俺も超える。

俺は人の身で神の領域に行く!

お前だけを1人で神にするものか!!」


そう叫んだツネノリの15本の剣はトセトの橋から島の周りを何周もする。

その戦い方は王様の戦い方によく似ていた。

投げられていた悪魔は成すすべなく斬り刻まれていたし、投げる前の悪魔は台になった悪魔が倒されてバランスを崩した所を斬り刻まれていた。


「千歳!時間だ!!」

私は一気に力を抜く。

髪は黒髪に戻る。

全身に意識を向けてみたが私は人と変わっていないと思う。


「これは圧倒的!わずか35秒で750人のプレイヤーが倒されてしまいました!!残りは約3750人!残り時間は約2時間!どうなる!!?」


「35秒?」

「ああ、千歳の負担はなるべく減らしてその分は俺が頑張った」


まったく、この兄はどこまでやるのだろう?


「もう、ありがと。でも無理しすぎだよ」

「千歳ほどではない」


1分でも2分でも疲れをいやす。

残りは1時間50分くらいだろう。


再び悪魔が集まるまでツネノリにも休むように言う。

「いや、俺は次をやる」


「次?」

「ああ、俺がやらないと千歳が人間をやめてしまうからな」


そう言って火の剣を出したツネノリが森に向かって剣を飛ばす。

あっという間に火が燃え広がる。

「風!【アーティファクト】」


そう言って送り込まれた風が森の火事を助長させる。


「放火…」

「致し方あるまい。少しでも時間を稼ぐ」


そう言って休憩をする。

5分は休めただろう。


暫くすると体色が赤になった悪魔がぞろぞろと出てくる。

「うわ、火事でダメージを負ったんだ。ツネノリの環境破壊が成功したよ」

その赤い悪魔をツネノリがあっという間に斬り刻む。


「これは卑怯だ特別枠!数の不利を森の放火で誤魔化した!!これによりプレイヤーの残りは3300人、残り時間は1時間25分だ!」


「そろそろだ…ツネノリ。明日の朝には起きられるくらいまでは力を使っていいよ。私は準備をしておく」

「了解だ」


「出来たら25分以上は粘って」

「その意味は?」


「完全解決に必要なの」

「そういう事なら了解だ!」


そう言ってツネノリが水の剣と氷の剣で悪魔達を斬り刻む。

雪と火事と水と凍りで無茶苦茶に凍った悪魔をアーティファクト砲で砕くと言う荒業を見せる。


「千歳、接近戦は!?」

「駄目!予定と狂う!」


そう言うとツネノリは私の言葉を守って私の傍で戦ってくれる。


私は準備だ。

「…イメージ、おじさんとおばさん…タツキアの景色…」

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