第170話 とても嫌だが子供達が見ている以上俺がやるしかない。
「常継、千歳は…」
「嘘も方便だ」
そう言ってから俺はガーデンに行く。
ゼロガーデンの神殿では各々が作業をしていて、俺はルルの横でぼけっとしていた。
「お、来たかツネツギ」
「おはようルル。夜中の戦闘は何とかなって良かったな」
「全くだ」
だがルルの顔は不機嫌な顔をしている。
「大丈夫だ」
「何がだ?」
「ツネノリは俺たちの子だよ。別にキヨロスやジチが何を思ってツネノリを鍛えてくれたとしても産みの親はルル達だろ?」
「私は別に!」
まあ、そう言うよな。
「俺が寂しいだけだ。ルルはヤキモチ妬かないのか?」
「まったく、ツネツギはいつまでも子供だのう?ほれ、慰めてやるから機嫌を治せ」
俺の返しに気を良くしたルルは良々と俺を抱き寄せて背中を叩く。
少しした後、俺はルルとキヨロス達の所に行く。
「おはよう、来たんだ?」
「ああ、昨日は子供達が助かった」
「別にツネジロウがお礼を言ってくれたんだからいいのに」
キヨロスが笑いながら言ってくれる。本当のコイツはきっとこの顔なのだ。
「そうも行かないさ」
「それで、今日は何と戦うの?」
「それがな…」
「また休みか…」
ルルが呆れながら言う。
「ああ、まあ気の緩みが出ない程度には身体を動かさせるつもりだ」
「それがいいね」
「ただなぁ」
「どうしたのさ?」
「いや、東とジョマにプールを勧められてなぁ」
「ああ、そう言う事」
「ツネジロウはあの部分見ていないんだっけ?」
「何?ジチ達は何を知っている?」
「ルルも見ていないんだっけ?」
「何をだ?」
「ツネノリが水着を知らなかったって話」
「何だそれは?」
そうしてキヨロスとジチが悪魔との戦闘前の風景を東に見せてもらった時の話をする。
ツネノリは水着の女性を見たことが無くて、若い娘が肌の露出を多くしている事に驚いていたらしい。
「それでプールか…、ん?キヨロス達は水着知っているのか?」
「んにゃ、お姉さんもキヨロスくんも知らなかったよ」
「なんだよ、それでツネノリを笑っていたのかよ」
「じゃあ、今度はツネツギがお姉さん達をプールに案内してよ」
「あー、まあ追々な。そこは東の頑張りに期待しないといけないからな。
なんか千歳の奴もルルをセカンドに連れて行けるように頑張るとか言っていたし、案外間近の話かもな」
「チトセと言えばさぁ…」
「断る!!」
「ルル?」
「さっきからキヨロスとジチは千歳をサウスに招きたいと煩いのだ!」
「え?まだ嫁とか諦めていないのか?」
「いやぁ、それは追々として、とりあえずチトセにウチに来てもらってウチの子達と会わせてみたくてさぁ。ダメ?」
「断れツネツギ!」
「だとさ、お母さんはNGだとよ」
「じゃあ、チトセが良いって言ったら良いよね?」
「まあ、そうなるがとりあえず完全解決するまではやめてくれ」
キヨロス達はそれで引き下がる。
「じゃあルル、行ってくる」
「気をつけての」
俺がセカンドに行くとセンターシティのホテルにツネノリと千歳は居た。
行先を言わなくても東が繋いでくれるのは楽でいい。
「お父さん、おはよう」
「おはよう父さん」
「2人ともおはよう」
俺の目の前に居る千歳とツネノリは準備万端で俺を待ち構えていた。
「あのな、2人とも…」
「今日も休みになったのは聞いたよ」
「でも私達は昨日の失敗が許せないの」
「何?」
「それで東さんとジョマにお願いしたら東さんはマキアの牢獄の先にコロセウムみたいな闘技場を作ってくれて、午前中なら好きに練習していいよって言ってくれたんだよ」
「マジか」
「それとジョマに頼んだら「悪魔のタマゴ」のデータを東さんに渡してくれて、昨日の黒い悪魔を再現してくれる事になったの!」
「なんだその話は!」
「その代わり、午後からは英気を養いなさいって言われたんだ」
マジか、そこまで話が進んでいては、俺は何も言い返せない。
「東、とりあえずマキアの牢獄は行ったことが無いから瞬間移動に加えたい。一先ずそこに飛ばせ。それから闘技場だ!」
「了解だよツネツギ」
そして俺達はマキアの牢獄に飛ぶ。
パッと見、ホラー映画に出てきそうな雰囲気で外壁を見なければ牢獄と言うより廃団地に見えてしまう。
「これはこれは…、納涼イベントで肝試しでもやれば受けそうだな」
「ジョマに頼んだら?」
千歳が口にした瞬間に「ありがとうございます!勇者様!千歳様!!今度の夏には是非ともやらせていただきますね!!」とジョマの嬉しそうな声が聞こえてくる。
「どういたしまして、こちらこそ「悪魔のタマゴ」のデータを貰って感謝しているよ」
「いいえぇ、訓練頑張ってくださいねぇ」と言ってジョマの声が消える。
「ジョマ、機嫌良いね」
「あ、そうだった」
そして俺は朝の会議を伝える。
「サードガーデンの話をしたのね。それでか」
「ああ、東が嫌がらなかった事を怪しまれたから、東とジョマのサードガーデンも千歳の完全解決に加わっていると説明したんだ」
「え?父さん。勝手にそんな話にしていたの?」
「…まずかったかな?」
「え?嘘?」
ツネノリが物凄いものを見る目で俺を見る。
「仕方ないだろ、俺が頑張って東を説得したと言う説明を怪しまれたんだか…」
「まあ、嘘は何も言っていないから良いと思うよ」
千歳が俺の話を遮って口を挟む。
「千歳?」
「私の見込みだと東さんはジョマとサードガーデンを作れば良い事あるし、ジョマにも良い事があるの。
偶然だけど言ってくれて良かったよお父さん」
「あ…ああ」
「さてと、もう良いでしょ?早く訓練しようよ」
「東、頼む」
そうすると目の前の景色は変わって今度は闘技場に着く。
「まったく、こんなもんをあっという間に作って…」
俺は思わず呆れる。
「千歳達には生き残って貰わないとね」と東の声が聞こえた後に目の前に真っ黒な悪魔が現れる。
うわぁ、やだやだ…、何この威圧感。
俺はゼロガーデンの戦いでも悪魔熊なんかは散々倒したが悪魔と戦うのは初めてだ。
「東、どうやって作った?」
「「悪魔のタマゴ」のデータを使って長期ログインをしていないプレイヤーの身体に付けさせてもらったよ。戦闘パターンはゼロガーデンに居た昔のサウス王を持ってきたよ」
「おい待て」
「何だい?」
「キヨロスが苦戦したガチのヤバい奴じゃないか!」
「そうだね」
「そうだねってお前は俺たちを殺す気か!?」
「私が頼んだんだよ」
「何!千歳?」
「だってそれくらいの敵を倒せないとダメなんだよ」
「よし!やるぞ千歳!」
「ツネノリ待て!!」
ウキウキと腕を回すツネノリを慌てて止める。
「何父さん?」
「もしもがあったらどうする?」
「え?もしもって何?」
千歳も不満げに聞いてくる。
「東、流れ弾は?」
「闘技場の外には閃光も爆裂も悪魔自体も飛び出さないよ」
「…じゃあ俺が戦ってみる。それを見てて千歳が神如き力を使わなくても勝てそうだったりツネノリが怪我をしなそうなら戦って良し」
「もう、仕方ないなぁ、それでいいよ」
「父さん、頑張ってね。俺は父さんのシンプルな強さがどんな感じに通用するか興味があったんだ」
よし、とても嫌だが子供達が見ている以上俺がやるしかない。
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