ゼロガーデンの章○新旧集合。

第106話 お母さん皆で集まって頑張るって好きだからかな。

「今から集まれるか?」

そうルルから通信が入る。

ルルは待機と言っていたがそんな訳ないのは知っている。


「いいけど、今から何日?」

「いや、こまめに帰れる時間は設けるつもりだ。そうしないといろいろ面倒な事があった」

通信球の向こうでルルが言う。


「面倒事?なにそれ?」

「集まってからの説明でもいいか?」


「ん、いいよ。今日の夜ご飯ってどうしよう?」

「それはカムカに作って貰ってくれ。材料は神に頼んでおいた。後ろを見てくれ」


「後ろ?」

私は言われた通り後ろを見る。

後ろには箱状の物体が置いてあった。


「あ、これ…「大地の恵み」だよね?」

「おお、覚えてあったか。手付代わりに神に頼んだのだ。これを使えば野菜が無限に出てくる」


「でもこれ、問題点があったよね?」

そう、このアーティファクトには使用者は料理が下手になると言う問題点があった。


「12人も居るんだから誰か料理の下手な子供に使ってもらえばよかろう?特例処置で複数持ちにも該当しないようにして貰って居る。問題は無い」


「うーん…、まあそれでもいいのかなぁ…」

「やはり嫌なのか?」


「あんまりいい気はしないよ。神様にどうにかならないか聞いてよ」

「何と聞けばいい?」


「えー、特別に使った人間はその後3日だけ料理が下手になるとかにしてくれないか?って、代わりに一回に出てくる量が無限じゃなくていいからさ」

「ふむ、譲歩しているから大丈夫ではないかの?神様?」

そう言うと通信先のルルが少し静かになる。


「マリオン、聞いておるか?」

「聞いているよ。」


「それでいいそうだ。箱の色は普通茶色だったが、特例処置だから色を灰色に変えると言われた」

「了解―」

そう言って「大地の恵み」を見ると既に灰色に変化をしていた。


「じゃあルル。準備して待っておくね」

「ああ、すぐに迎えが行くと思う。なるべく早めに用意を済ませてくれよな」

そう言って通信が終わる。


「ガレンー、ガレン!!」

私は7番目の子供を呼ぶ。

だが外でカムカと修行をしているからか返事が無い。

私は家の中で用意をしていたカリンを呼ぶ。


「カリン!ガレン呼んで!」

「はーい」


暫くすると「何―、お母さーん」と言って先日12歳になったばかりの7番目の息子ガレンがやってくる。横にはカムカも一緒だ。

「どうしたマリオン?」


「さっき話した世界の危機の話。もうすぐ迎えが来るから行ってくるよ」

「ん、了解だ。食事は俺が作るから安心してくれ。そんでガレンを呼んだのは?」


「これ」

そう言って私は灰色の箱を見せる。


「何だこれ?」

「「大地の恵み」だよ。手付で神様が持たせてくれたんだって」

「あれって色が茶色じゃなかったか?」


「うん、特例処置で灰色になっているの」

そう言って私は問題点の話をする。


「まあ、それなら授かっても問題ないな」

「だよね。それでこれはガレンに渡そうと思うんだよね」


名前を呼ばれたガレンが私に飛びついて「何―?」と言う。

「これ、お兄ちゃん達が授かったアーティファクトってあったよね?あれをもう一個神様からこのお家に貰ったから一時的にだけどガレンに貸すね。

お母さんが仕事でお姉ちゃん達と出かけている間に使って欲しいんだ。いいかな?」


そう言われたガレンが目を輝かせながら「いいの!!ありがとう!!」と言って「大地の恵み」に手を伸ばす。


「良かったなガレン」

「お父さん!使ってみたい!!」


「いいよなマリオン?」

「うん、丁度これから夜ご飯作るから野菜欲しかったし」


「よーし!ガレン。手に持って箱に意識を向けろ。そうしたらアーティファクトと唱えるんだ」


「うん!やってみるよ!!せーの…【アーティファクト】!!」


ガレンの声で「大地の恵み」が光って中から野菜が沢山出てくる。


「すげぇ…」

カムカが感動している。

二の村に作った畑だけでは足りない日もあるのでこれは正直助かる。


「俺が出したの!!」

ガレンがそう言ってはしゃぐ。


「偉いぞガレン!!」

カムカが嬉しそうにガレンを抱きかかえて褒める。

私は素直にそこに入り込んで2人でガレンを抱きしめる。


「へへへ、俺もお父さんとお母さんの役に立てた!」

「そうだな、助かるぜ」

「本当、これでみんなお腹いっぱい野菜を食べられるよ」


室内に居たカリンとマリカもこの声で何事かとこっちに来る。

そして出てきた野菜を見て驚いている。


「へぇ、神様から家にアーティファクトを授かったんだ」

「じゃあ、ガレンは15歳で成人の儀はやれるの?」


「そうだよだから問題点は後で説明するけど持ち回りでみんなが使えるようにするよ。

でも今はガレンだけだよ」


そう言いながら私は床に転がった沢山の野菜を拾う。


…ん?


「ガレン?」

「何お母さん?」


「「あ」」

カリンとマリカも気づいたみたいでニヤニヤとガレンを見る。


「どうした?」

「カムカ気づかない?」


「あ、…ガレン…無意識にやったな」

そう言ってカムカが笑う。


「な…なんだよ皆して…」

ガレンが慌てる。


「ガレン、ニンジンを出してくれない?」と私が言うと「え?」とガレンが驚いて野菜を見る。


「アンタ、好きな野菜しか出してないのよ」

「そうそう、ジャガイモと玉ねぎとキャベツだけじゃない」

カリンとマリカがガレンに突っ込む。


「ああ、そういう事だ。トマトとレタスとニンジンは出せないのか?」


「う…」と言ったガレンが「大地の恵み」を持って逃げ出してしまった。


「「あ!逃げたよお母さん!!」」


「あははは、いいよ。今日はジャガイモと玉ねぎの炒め物とキャベツのスープにしよう」

そう言って私が野菜を持って台所に向かうと長男のカムオが家に入ってきた。


「お母さん、王様来たよ。」

「案内ありがとうカムオ」

王様は優しくカムオに声をかけている。


「あ、来ちゃったか。じゃあカムカ、後はお願いするね」

「ああ、任せとけ」


「久しぶり、カムカ、マリオン」

「おう、元気してたかキヨロス」

「久しぶり、お迎えってアンタだったんだね」


「うん、世界の危機だからね。カリンとマリカも久しぶり」

「ご無沙汰しています」

「こんにちは」


「マリオン、準備いい?」

「カリンとマリカは大丈夫?」

「うん、「命のヤスリ」も持ったよ」

「大丈夫だよ」


「じゃあ行こう。カムカ、マリオンと娘二人を連れて行くね」

「ああ、よろしく頼む」


「行くよ【アーティファクト】」

あっという間に景色が流れて四の村、お爺ちゃんの家に着く。


「わ、本当に一瞬だ」

「お爺ちゃん呼んでくるね」

マリカが中に入ってお爺ちゃんを連れてくる。


「相変わらず早いね」

「お爺ちゃん、準備は出来ている?」


「うん、平気だよ。でも何処に行くんだい?」

「ああ、そう言えば私も聞いていないや。何処に行くの?」


「ああ、人を集めたら神殿に来てってルルからは言われたよ」

「神殿か…何でだろうね?」


「行けばルルが説明してくれるよ。次に行こう【アーティファクト】」

そう言うと今度は一の村に着く。


一の村には嫁いだ私の姉マリーが居る。

そもそもこの非常識にポンポンと瞬間移動を繰り返すサウスの王様キヨロスの実家もある。

瞬間移動をして出てきた場所は村の入り口にあるナックの家だ。

ナックは外で私達を待っていたようですぐに気づくとこっちに駆け寄ってくる。


「キョロ!」

「ナック、久しぶり」

このナックは私の義理の兄になる。マリーの旦那さんでこのキヨロスの幼馴染。


「ナック、久しぶり、マリーは?」

「よう、マリオン。マリーはもう出てくるんじゃないかな?カリンとマリカも久しぶり、ペックさんもお変わりなく」


「こんにちは伯父さん」

「リークは?」

「やあ、ナック君も元気そうだね」


皆が口々に話していると家の扉が開いて私の甥っ子にあたるリークと私の姉マリーが出てくる。


「マリオン!!」

「マリー!!」

私は嬉しくなってついついマリーに抱き着く。

私は人間になれた時に旦那のカムカに合わせて背が高くなるように願ったりした結果、姉のマリーより背は高いしスタイルもいい。

それでも私の元になったマリーと私はよく似ている。


「本当、お母さんとマリー伯母さんって似てるよね」

「背丈は違うのにね」


「こんにちはみんな」

そう言って出てきたリークは私達に挨拶をする。


「じゃあマリー、リークを連れて行くね」

「うん、世界の危機にリークが役立つならいくらでも連れて行って」

マリーがとんでもない事を笑顔で言う。


「え…やめときなよ」

「え?なんで?」


「コイツ居るんだよ?」

そう言って私はキヨロスを指さす。


「マリオン、酷くない?」

そう言いながらキヨロスはリークと握手をしている。


「世界の為だから頑張ろうね」

「はい」


「あーあ…返事しちゃった」

「キョロ…、俺の息子を壊さないでくれよな」

青くなったナックがキヨロスに話しかける。


「え?大丈夫だよ。「究極の腕輪」もあるし、回復の指輪も持っているから」


「……」

リークがこのやり取りで青くなる。


「キョロ…、そういう事じゃなくてな…」

ナックが困っている。


「ねえ、マリオン…、キヨロス君の子供達って大丈夫なのかな?」

「あ…あー、お姉ちゃん達からたまに聞くけど、相当鍛えられてるみたいだよ」


「そっか、じゃあリークも鍛えて貰おうっと。キヨロス君、リークの事よろしくね」

「うん、任せておいてマリー」


「リーク、いい機会だからしっかり鍛えて貰いなさいね」

マリーがニコニコと話す。

リークが泣きそうな顔をしているしナックも心配で青くなっている。

まあ、いい機会かもね。


「お母さん嬉しそうだね」

「そう見える?…そうかもね。お母さん皆で集まって頑張るって好きだからかな」


私が子供達と話している間にマリー達も話が終わったようだ。


「じゃあ、神殿に行こう。【アーティファクト】」

あっという間に私達は世界の中心にある神殿に到着する。


「おお、あっという間だの」

到着した私達の前には神様とルルが立っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る