第107話 仕事なんだから求められた結果は出しなよ。

「キヨロス、使いを頼んでしまって悪かったね」

「お安い御用ですよ神様」

僕がそう言うと神様は笑顔になりながらみんなを見回す。


「ルル、キヨロス、マリオン、ペック、そして子供達…、よく集まってくれたね」

そして今ツネツギが関わったファーストガーデンとセカンドガーデンに危機が迫っている事、あの女達の神が手を出している事、その事にツネツギとツネツギの子供、ツネノリとチトセが巻き込まれている事が伝えられた。

僕はあの女の存在と言うだけで苛立つ。


「顔、また楽しくなってるよ。

落ち着きなよ。

神様も前の魔女と違うって言っているんだしさ」

マリオンが僕にそう言って笑う。


「でもさ、なんでツネツギやツネノリにチトセまで巻き込まれなきゃいけないんだ?」


「だがそれにはツネツギも私も、外の世界の妻である千明も少なからず感謝をしているのだ」

「感謝?」


「ああ、出会う機会、話し合う機会、絆を深める機会…そんなものが出来た。

そしてツネノリは大切な女性に出会えた。

親としては感謝の気持ちもある」

僕も親だ、ルルの言いたい事も分からなくはない。

だがやはり僕はあの女が許せない。


「だけどツネノリの大切な人はあの女の行動が原因で奪われた!」


「こらこら、顔だけじゃなくて殺気もダダ漏れになってるよ。次は光の剣とか出しそうだよ」

そう言うとマリオンが僕を抱きしめる。

人間になったばかりのマリオンは僕より背が高かったが、僕も成長をして背が伸びたから今は同じくらいの位置に顔がある。


「お姉ちゃん達居ないから私が代わりね。これで少し落ち着いてよ」

マリオンがあやすように言いそれを見たマリオンの子供達がどよめく。


「カリン、マリカ、お父さんは懐の大きな男だからこんなのでガタガタ言わないよ。アンタ達も落ち着いて。

ルル、続けて」

マリオンが僕を抱きしめたまま話を続ける。


「ああ、今集まってもらったのは他でもない。

神が私に頼み、私も神に頼んだのだ。

神抜きで死者の蘇生を行う」


「うん、このメンバーだからわかるよ。私と同じ事をするんだよね?」

「そうだ、そしてそれには時間が足らなすぎる。その為の0と1の間なのだ。

キヨロスには話したが、その間キヨロスには無限時間の提供と治療、マリオンには皆のまとめ役をお願いしたい」


「わかった。ツネノリの為に今すぐやろう。神様、すぐに0と1の間に連れて行って」

僕は時間が惜しかった。


「もうやっているよ。今回は、見た目は変えずにこの神殿を0と1の間にした。

それには理由があってね。

ルル、「魂の部屋」を出して」


「はい」と言ってルルはマリオンのブローチみたいな物を出してきた。


「それは?」

「これは私の作ったアーティファクト、「魂の部屋」だ。先程死者の間に行ってメリシア…、ツネノリの大切な人の魂をこの中に入れてきた。

メリシア、挨拶できるか?」


「はい、お母様。

あの、はじめまして私メリシアと申します。

この度はお世話になります」

ブローチからは女の子の声が聞こえてきた。


「私マリオン。一応先輩かな。

メリシアは丁寧な子だね。何歳?」

「今年18歳になりました」


「じゃあツネノリとは一つ違いだね。

カリン、マリカ…、アンタ達も18歳なんだからメリシア見習いなさいよ」

「やれるもん」

「ねー」


マリオンがやれやれと言う。


「このメリシアはセカンドガーデンの人間。

あまり長期間0と1の間に居続けるのは色々と良くない。

その関係で要所以外は0と1の間を解除しやすくしてあるんだ」

「後、今後は大掛かりな設備が必要になるから神殿にして貰ったのだ」


「じゃあ、始めようよ」

ペック爺さんがよっこいせと動き出す。


「ペック殿、待たれよ。1つやる事がある」

そう言ったルルが「魂の部屋」についていた針をペック爺さんに刺す。

「メリシア、唱えよ」

「はい、【アーティファクト】」


「お?おぉ…可愛らしい娘さんだね」

「ルル?」

僕は何をしたのか気になった。


「これはキヨロスの持つ「意志の針」を参考にしたんだ。みんなメリシアの姿を知らぬだろ?これで全員がメリシアを知れば体の製作が容易に出来るようになる」

成る程、そして、ルルは僕を含めた皆にメリシアの姿を見せていく。


「どうだろうか?」

ルルが聞くと皆問題無いと答える。


「もう始める?」

「ああ、早速始めよう」


「ルル、速度上げるアーティファクト使うよね?赤くなって」

「…ルノレと呼んで欲しいのだがな」


そう言うとルルが胸のアーティファクトを捻って赤い髪になる。

「マリオン!久し振りー」

「ルノレ、元気だった?」


「ルル、時間が惜しいんだよね?

僕はもう「究極の腕輪」の効果範囲を広げるからね?【アーティファクト】」

「うぅ…わかっているよー【アーティファクト】!」

僕の「究極の腕輪」で速度を上げるアーティファクトを長時間使えるようにした。


「準備はいいようだね、材料は僕が揃えたから足りなくなったら言ってくれ」


「神様ー、ありがとうございます」

「いや、ルノレ。こちらこそよろしく頼むよ」


「じゃあ、役割分担をしようか」と言ってペック爺さんが仕切る。

「僕が頭と右手右足を受け持つから、カリンとマリカが胴体を作ってあげて。女の子だからリークに任せるのは悪いし、娘さんも嫌だろうしね。

リークは左手と左足だよ」


「うん、じゃあ私がお腹から上を作るからマリカがお腹から下ね」

「いいよー」


「え?僕が爺ちゃんの残りをやるの?爺ちゃん大変になるからあまり本気出さないでよね」


「バカ!リーク!」

マリオンが慌ててリークを注意したけどもう遅い。


「リーク?」

「え?」


「君はここになんで呼ばれたのかわかっていないの?」

「え?」


「わかっていないの?」

「人を…蘇らせる為…です」


「そうだよね?遊びじゃないよね?」


「落ち着けキヨロス!」

いつの間に紫色に戻ったルルが僕を制止してマリオンが「ほら、早く謝んな!」とリークに言っている。


「マリオン、ルル…止めないで。

これはとても大事な話だから止めないで。

リークもカリンもマリカも遊びで来ているわけじゃない。

神様から必要とされて、頼まれて来たんだよね?

それって仕事だろ?

仕事なんだから求められた結果は出しなよ。

ペック爺さんが納得いかなかったら僕は容赦なく何度でもやり直させるよ。

疲れる?アーティファクトで何時間でも癒してやるよ。

時間?ここは0と1の間だから気にしないでいいよ。

材料?神様が何回でも用意してくれるよ。

それは君達の為でもあるしメリシアやツネノリ…皆の為だ」


リークは怯えた目で僕を見る。

ああ…昔リークの父親であるナックが殺人の重みに耐えられなくてこんな目をしていたのを思い出した。


「わかった?」

「は…はい、ごめんなさい」


「謝らないでいいから結果を出して」

泣きながら作業を始めるリーク。


「おーい、爺ちゃんはもう手のひら完成したよー。みんな頑張りなよー」

ペック爺さんはこの騒ぎなんて意に介さない訳でサッサと作業を進める。

「ルルさん、いいねー、この速度が上がるアーティファクト。仕事が早くて楽しいよー」

「そ…それは良かった」


それにしても相変わらず見事だ。

出来上がった手のひらはさっき見せて貰ったイメージと瓜二つだった。


ルルはメリシアに見せていてメリシアが「凄い、私の手です」と喜んでいた。


「よかったねメリシア。

皆がちゃんと身体を用意してくれるから、すぐにツネノリに会えるよ」

僕がそう話しかけるとメリシアは「ツネノリ様…、嬉しい」と喜んでいた。


マリオンの子供達がリークへの態度とメリシアへの態度の違い、僕の変貌に驚いていたので僕が授かった「時のタマゴ」の影響で性格が荒っぽくなってしまった事とかを話した。

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