第40話 働き方改革!?
「働き方改革!?
今日はイベント日で俺はベテラン枠なんだろ?
何で俺まで帰らなければならない?」
そう言った俺に東が諦めてくれと言ってきた。
「伊加利副部長はベテラン枠ですから、今回のポイントアップイベント初日からセカンドに居られると著しくバランスが崩れます。今日はもう帰って明日の9時にまた出社してきてください」
と言う、ぐうの音も出ない理由を用意されて俺は千明と帰ることになってしまった。
東に関しては「サーバーに不具合が出た際の要員」として認められていた。
そして社内には「イベント責任者」で北海も泊まり込みが許可されていた。
忌々しい。
端末を持って帰って家からログインをと思ったがそれもダメだと言われた。
その事を東から3人に伝えてもらい、千明がログアウトしてくるのを待つ。
数分して千明が戻ってきた。
「済まなかった」
「いえ、気にしないでくださいね」
「子供達は?」
「魔女の妨害に怒っていましたよ」
「そうか」
これで戦い慣れしておいて貰えると助かるのだがな…
「お迎えにあがりましたよ」
開発室の出入り口に、魔女…北海が待ち構えていた。
「北海…」
「はい、万一東部長がズルをして伊加利副部長が居残りでもしたら困りますので、玄関までお見送りをさせていただきます」
「あなた…、こちらの方は?」
千明が聞いてくる。
「ああ、先程話にあった企画部の北海さんだ」
千明ならこれで北海が魔女だと分かるはずだ。
「伊加利の妻です。はじめまして」
「ああ、非常勤の…はじめまして」
北海は千秋の事も当然知っているのだろう。
余裕の顔で千明を見ている。
「イベント…」
「はい?何ですか?」
千明が北海に話しかける。
「今回のイベントはお互いにフェアプレイで盛り上げて良いものにしましょうね」
「…」
「…」
千明は屈託のない笑顔で北海にそう言った。
北海は千明がまさかそんな事を言うとは思って居なかったのだろう。
何も言えなくなっている。
「アハハハ、面白い人!」
北海はあの魔女の笑い方をした後に千明を面白いと評した。
「私の事を知っているなら、ここは普通「子供を返して!」とかじゃないの?
それなのにあなた、フェアプレイ?何それ?」
「私達3人の…2人の子供達はフェアな条件なら挫けません。
だから返せなんて言う必要はありません」
千秋の発言にはルルもツネノリも含まれていた。
「へぇ…。
本当、あなたって面白いわね。
気に入ったわ!
安心して、私からは何もするつもりは無いから。
私からはね。アハハハ」
「それで十分だわ。ありがとう。
明日主人がセカンドに行く。
後はそこからの話よ」
「そうね。
楽しくなってきたわ。
さ、玄関まで送りますわ」
俺達は北海に連れられて玄関まで向かう。
「東、また明日」
「ああ、今日はゆっくり休んでくれ」
廊下で俺は北海に話しかける。
「一つ、いいか?」
「なぁに、勇者様…じゃなかった、副部長」
「どんな結末になろうともサーバーの破壊はするな」
「やだ、そんな事をすると思っていたの?絶対にしないわよ。
私は東のサードを手に入れて私色に染め上げるの。
その時の東の顔を見るのが今の楽しみなの!
このイベントはそこに向かう為の通過儀礼ね。
副部長こそ、部長の説得を任せたわよ。
今見てみたら開発室とかあなた達の頭の中とかに厳重なプロテクトがされてて考えが読めないのよね。
ふふふ、東も本気ね。
いいわ、こう言うの…。とっても好きよ」
「サードを用意したら本当にそれ以外のガーデンには2度と手出ししないのか?」
「ええ、地球の神様に誓って約束するわ」
「わかった…、東は俺が説得する」
「流石、奥さんと息子さんのいる世界を守るのに手段は選ばないわね。
妹さんを助ける為に私の使いに切りつけたあの目を期待しているわ」
そして俺達は玄関に着く。
「それでは副部長、今日はお世話になりました。また明日もよろしくお願いします。
奥様、また何かの折にはご指導をお願いします」
急に魔女ではなく企画部の北海として話し始める。
「それじゃ、また。おやすみなさい」と千明は役職が上の者の妻としての立ち振る舞いで北海をあしらう。
「あなた、大丈夫よ。私達の子供達は負けないわ」
千明が小さくそう言ってくれる。
「ああ、そうだな」
「さ、今日は千歳が外泊ですから何処かで美味しいものでも食べて帰りましょ?」
急に昔の喋り方をした千明は昔のように俺の手を取って歩を進める。
美味しいものと言っていたので結構な出費を覚悟していたが、食べた物は町中華だった。
千明と食べた中華は旨かった。そう言えば向こうでルルと食べたのも中華だったな。
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