第39話 腕輪に選ばれた勇者様をあまりなめるなよ?

開発室に戻ってきた俺が時計を見ると時間は夜の7時半になる所だった。

「東、とりあえず向こうは朝の8時半頃だよな」

「ああ、まだ子供たちは寝ているよ」


「起きたら北海のイベント内容を伝えておいてくれ。そして今回のポイントアップイベントの間に戦闘に慣れてくれと言っておいてくれ。俺も間に合えば行く」

「わかった。それでサードの話からするかい?それとも神様との話にするかい?」


「のぞき見防止は?」

「やっているよ。それも本気でね。だから大丈夫だ」


東は冷静さを取り戻していた。

俺はサードの話にはこの世界の神の協力が必要だと言う。


「それではこの世界の神と話した内容を伝えよう」

そう言って東が話し始めた。


北海はゼロガーデンを滅茶苦茶にするように指示を出した後。

自信を少し取り戻したから一度神の世界に帰ると言って地球の神の元を去る。

そして神の世界で様々な神の世界を滅茶苦茶にして回ったそうだ。

約20年で10個はやっていたようだ。

そして地球の神に身を寄せる前の話も合わせれば100近い世界を滅茶苦茶にしていた。

だがあの女には守るべき世界も失うものも何もない訳である種の無敵状態だった。


そして20年が過ぎて戻ってきた北海は地球で北海 道子としてセカンドガーデンを滅茶苦茶にする為に手を出す事にしていた。


「無茶苦茶な話だぞ」

「ああ、僕もそう思った」


「地球の神様は?」

「実害が無いからあまりどうこうする気は無いらしい。これでゼロガーデンが滅茶苦茶になって滅んでしまっていたら、神様のメンツ的に問題だったから手を出してくれたのかも知れないんだけどね」


「他の神様は?」

「ああ、滅茶苦茶にされて神々は二度と関わりたくないと言って逃げ出す者も居たが半数以上は怒っていた」

なるほど、状況は思っているほど悪くはないかもしれない。


「よし東、同時進行だ」

「同時進行?」


そして俺は東に指示を出す。

1つ目は、セカンドの住民に別の神が世界を滅ぼす為にイベントと称して色々と20日間を使ってガーデンを滅茶苦茶にしてくる事、それに俺達が全力で立ち向かう事。スタッフが仕事を放棄したり東が手を出すとその瞬間に何をされるかわからないからスタッフは通常通りに仕事をして欲しい事と東は手が出せない事を通知してくれ。

2つ目は他の被害に遭った神々と一緒に地球の神様に手を貸すように頼み込むこと。

3つ目はサードを作る事だ。


「おい、常継、それではサードに産まれる人間たちの問題が解決していない!!」

東が俺に怒る。

「大丈夫だ、念のためだ耳を貸せ」

そして俺は今考えついている事を全て話す。


「凄いな常継…、それが実現できれば何とかなるぞ!!」

東が驚いた顔で俺を見る。


「腕輪に選ばれた勇者様をあまりなめるなよ?」

そう言って俺は笑う。


「じゃあ、こっちでの事はよろしく頼む。あまり早くサードの話をすると北海が怪しむから5日目くらいに言うからな」

「ああ、わかった」

俺は軽く食事を摂るととりあえずゼロガーデンを目指す。


「そう言えばルルが勘違いしているようだけど、ゼロガーデンの人間は僕の許可が無いとセカンドには行けないから何かの時に言ってあげてくれ」

「ああ、確かにそうだな…じゃあ何かの時に言うようにするよ」

そう言いながらVRを装着する。


今の時間は夜の7時。後40分でイベントが開始になる。

俺は5分前までルルの所に居てそれからセカンドに行って状況を話した後子供たちを鍛えようと思った。


「ツネツギ!!」

「ルル、ひとまず戻った。まあ、後30分ちょっとしか居られないがな」

「それでもこうして来てくれて嬉しい」

ルルはキチンと食事を摂っていた。

ツネジロウも一緒に食事をしたのでルルが食べたかどうかもわかるのがありがたい。


「それで、向こうの状況は?」

「非常に良くない。ここであまり話していて魔女にのぞき見をされても困るからあまり深くは話せないが、アイツの狙いはセカンドを…東の作った世界を滅茶苦茶にすることだった」

そして俺はこの先のイベントを説明する。


「むぅ…、大型の魔物か…通常の武器でどうにかなるものなのか?」

「わからない。そもそも前例がない。だがやらないと街やスタッフ達が大変な目に遭う」


「ああ、わかっている。今までに戦った大型の魔物は?」

「セカンドの中で言えばビッグドラゴンなんかがそれだろうな。東は毒竜の倍の大きさだと言っていた」


「ウチが3軒分か…大きいな。間違いなく最後はそれよりも大きな魔物が現れるだろうな」


「人間の魔物化も問題だ…」

「ああ、悪魔のタマゴを応用したのだろうな」


「あの力の魔物が街中で暴れたら手に負えないぞ…」

俺は悪魔のタマゴの能力を思い出して胃が痛くなる。

悪魔のタマゴはゼロガーデンで暴れまわった魔女が用意した人間や動物、魔物なんかを悪魔に変えてしまう人工アーティファクトだ。

当時は一番強いのは青色で、傷を負ったり力を使いすぎると黄色、橙色、赤色と弱体化をしていき、最後には灰色になって死んだ。

力は相当なもので太い大木すら簡単になぎ倒す。


「私は私でやれることをやる。ツネツギはキチンと休め」

「ああ、だがそうも言っていられない。俺もセカンドに行って俺達の子供達と世界中の人達を守らないといけないからな」


「ツネツギ、悪い知らせだ」

俺がルルと話していると東から通信が入る。悪い知らせ?何だそれは…


「北海が手を回した。社長命令だ。イベント中一部の社員以外は全員帰宅命令が出た。ツネツギは明日の出勤時間までセカンドに入れない」


マジかよ…

何という事だ。

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