第12話 安心しろ、俺が何とかする。

俺は世界を回る関係上管理者権限でガーデンに降りる事が出来る。

主に瞬間移動がそれに当たる。

ガーデンの中で言うとすれば魂を削らない「瞬きの靴」だ。


「パラメーターって何するつもりだい?」

「とりあえずアイテムを無限に持てるようにしてくれ。最悪意識だけの千歳は薬漬けにしてでも生かし続ける。

生身のあるツネノリには回復のアーティファクトを持たせても生き残らせる」


なり振り構っていられるか。


「落ち着け常継。

アーティファクトをアーティファクトとして持ってはいけないんだぞ?」


「なら何でセカンドに「勇者の腕輪」があって召喚が出来る?」

「それは…」


「多分あの女が、運営として潜り込んで設定を変更したんだ…」


「俺はルルからアーティファクトを受け取ってセカンドに行く。

後は出た所勝負だ。

今、イベントは?」


俺は時計を見ると午後3時20分を過ぎた所だった。


「運営の挨拶、社長がキャンペーンガールと談話中だよ。

多分司会進行の運営があの女だね。

話し方に特徴があるよ。

イベントはこの先VRの機能紹介とセカンドの住民とのコミュニケーション機能の紹介。

それから進行表で行けばセカンドで午後11時、こっちでは午後3時40分からアンケートで集められた初心者を使用した戦闘になる。行くならそれまでにセカンドに行くんだ」


「野郎、余裕かましやがって」


「ツネツギ、もう一つパラメーターを弄った。君には戦闘の制限時間はない。

死ぬ事もない。

無敵の身体で子供達を守るんだ」


「それは有難い。助かる!」


そうして俺はスマホを出す。

すぐに千明は電話に出る。


「千明か?」

「あなた…、千歳は?千歳の事は何かわかった?」


「ああ、千明も知っている魔女が現れた。

魔女が運営に潜り込んで悪さをした。

お陰で千歳とツネノリがセカンドの世界に連れ去られた」

「そんな!!?」

電話先の千明は涙声だ。


「ツネノリ君まで…?」

「ああ、魔女の狙いが何かはわからない。

だが安心しろ、俺が何とかする。

俺は今からセカンドに降りる。

その間は東を頼ってくれ」


「わかりました。

あなた、気をつけて…

無事にツネノリ君を助けて、千歳と一緒に帰ってきてくださいね」

「ああ、行ってくる」


そう言って俺はスマホを切ってVRの装置に向かう。


「東、千明のことを頼む」

「こっちで動きがあったら手伝ってもらうよ」


そして俺はゼロガーデンに行く。

目の前には食事も摂らずに心配そうに俯くルルが居た。

「ツネツギ!!ツネノリは?ツネノリは何処だ?」


ルルはツネジロウから俺に変わった瞬間に飛びついて聞いてくる。


「ルル、落ち着け。落ち着いてくれ。説明がある」

「説明?」

ルルの酷く不安げな顔。


「ああ、まず一つ。

今のところツネノリは無事だ」


「そうか…良かった。それで?ツネノリは何処だ?」

「それが問題だ…」

そして俺は魔女が外の世界に戻ってきた事、魔女の手引きでツネノリと千歳がセカンドに召喚されたこと。

そしてセカンドとファーストではプレイヤーに存在しないはずの死を与えられた状態でイベント終了までセカンドで生き延びなければ帰って来れない事を伝えた。


「そんな…、神様の力で何とかならないのか!?

それに何故千歳も召喚されておる!?」

「神様も可能な限り手を出してくれている。

ただ…奴が潜り込んでいる以上、表立って行動出来ないんだ。

万一行動を起こして何かされてからでは遅い。

だから俺がセカンドに行って2人を守り抜く」


「だが、そんな…」とルルは慌てふためく。

俺はそんなルルを抱き寄せて落ち着かせる。


「ルル、落ち着け。

安心しろ、俺が何とかする。」


「ツネツギぃ…」

ルルは泣きながら抱きついてくる。




「それでなルル。お前に頼みがある」

ルルが落ち着いたところで話を進める。


「頼み?」

「ああ、ツネノリの為に回復のアーティファクトを持って行きたい」


「だがセカンドやファーストではアーティファクトは…」

「試すだけだ、それに「勇者の腕輪」が発動したんだ、きっとアーティファクトは使える」


そう言うとルルは納得をした顔をして俺にアーティファクトを渡してくる。


「後、何かできそうな事があれば何でもいいから考えてくれ。

魔女のいいように子供達をやられてたまるかって言うんだ」

「ああ!そうだな!任せておけ!!」


そうしていると胸の端末が震える。

相手は神様からだった。

「急げツネツギ!バトルイベントが始まるぞ!」


「マズい!ルル、行ってくる!!ツネジロウも連れて行く事になるけど、しっかり食べて寝ろよ!!」


「待てツネツギ!」

「何だよ、急いでんだよ!!いってらっしゃいのチューでもしてくれるのか?」


「それは望めばいくらでもだ」

そう言ってルルは俺にキスをしてくる。


「違う、違くはないが違う!イベントとやらはどれだけ続くのだ?」


おっと、それを伝え忘れていた。

「俺たちの世界で7日間だ」

「何だ、それくらい私達のツネノリなら…」

ルルはパァッと明るくなる。

だが残念。そうじゃない。


「ダメだ、ファーストとセカンドはこことも外とも時間の流れが違う。

セカンドではこっちの1日は3日になる」


「何!?」

「だから千歳とツネノリを約20日間守る必要があるんだ!!」



「バカ者!!さっさと行かんか!!」


俺はルルに蹴り出される形でゼロガーデンを後にした。

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