第11話 セカンドに降りる。
千歳がセカンドに入った?
VRで?
何故だ?
千明の言葉に俺は困惑する。
そもそもVRはまだテスト段階で残酷描写と言った刺激の面やセカンドの住人との接し方の部分で成長にどんな影響が出るかわからない点から18歳未満は参加できない。
モニター募集のアンケートに関しても、年齢を再三確認する事にしていたし、本人確認書類の提示を求めていた。
そして最もおかしいのは関係者の家族はアンケートに参加をしたとしても抽選段階で弾かれる事になっていたし、テスト段階で千明に募集を試してもらったら無事に弾かれたし、PC上でリストから除外される動作も確認している。
「わかった、こちらで確認してみる。ログインIDとパスワードを写真にしてメールしてくれ」
「わかりました、すぐやります」
そう言って電話を切る。
「そっちもトラブルかい?」
東が呑気に話しかけてくる。
「ああ、そっちは?」
「うん、こっちもようやく足取りが追えそうだよ」
そう言っていると俺のスマホが鳴る。
「東、済まないが追加だ。今度は俺の娘が何故かVRでセカンドに入っている。このIDとパスワードだ足取りを追えるか?」
「え?常継の娘さんってまだ14歳だろ?何でVRが?」
「俺も知らないよ。突破不能のアンケートを突破して本人確認書類も何故か通ったからVR端末が娘の手元にあるんだろ?」
「とにかくこの国の18歳未満にあの刺激は強すぎる。早く見つけて保護をしてあげよう」
そう言うと東は端末に再び向かう。
「同時進行させて済まない!ツネノリと千歳を見つけてくれ!」
俺は必死になって東に頼む。
「見つけた……これは…。
常継、良いニュースと悪いニュースだ」
東はそう言って俺をみる。
コイツの悪いニュースは半端なく悪いニュースだ。
俺は先に良いニュースを聞く事にした。
「良いニュースから頼む」
「だと思ったよ。とりあえず2人とも見つけた。2人とも無事だ」
「本当か!?ツネノリは何処にいる!?」
「そこから先はとにかく悪いニュースだ」
東が真顔で俺を見る。
「ツネノリ君もセカンドに召喚されていた。
千歳さん…娘さん共々「イベントを盛り上げる初心者限定特別招待枠」でだ」
「なんだと…」
俺はイベント担当では無いのでどう言う事が行われるのかまでは知らない。
だが、東が悪いニュースと呼ぶのだ。それはきっと良く無い事だ。
「そしてまだまだ悪いニュースは続く。
2人のログを追った。
常継、君はツネノリ君に「勇者の腕輪」を装着するように言ったね?」
「ああ「勇者の腕輪」に呼び出されたなら危険が周りにあると思った」
「ツネノリ君は君の言いつけ通り「勇者の腕輪」…まあレプリカだろうね、これを装備している。
そしてもう1人、千歳さんのログだ。
ログインしてすぐに何処かの部屋に通されている。
恐らく運営がセカンドの中に所有する建物だ。
誰かがそこに千歳さんを呼んだのだろうね?
本来、このVRお披露目イベントでは時間前にログインをすれば端末プレイヤーのキャラクタークリエイト等があったとしても終わってからイベント開始まで眠っていてもらう事になっている。
だが、千歳さんは起きていて食事に入浴を済ませている」
なんだ?何が起きている?
「会話のログを拾ったよ。千歳さんと話している運営の者は「ジョマ」と名乗っている女だ」
…!?
ジョマ?
散々ゼロガーデンで暴れ回った魔女。
俺の背中に嫌な汗が吹き出す。
「あの女か!?」
「もしかしたら使いではなく神の方かもね。
いつの間にか帰ってきていて、今日この時に何かを仕掛けてきたのかもね」
あの女だと何が起きてもおかしくない!
「すぐにログアウトを!!」
「手遅れだよ、常継…」
東は申し訳なさそうに言う。
「何!?」
「イベント開始で今から強制ログアウトをするにしてもツネノリ君はまだしもこの世界の住人の千歳さんが顔を晒した状態で強制ログアウトをしたらどうなる?もしかしたらあの女がSNSで個人情報を晒すかも知れない。
さらにあの女は狡猾で巧妙だ…勇者の腕輪にロックを付けている」
「それって…」
「ああ、イベント終了までセカンド内でも売買不能になっているアイテムだから「勇者の腕輪」は外せない。
ログアウトもゼロガーデンへの帰還も不可能だ…」
なんと言う事だ、あの凶悪な魔物の住み着くセカンドガーデンに俺の子供が2人?
それもあの魔女の手引きで?
「更に悪いニュースだ。
普通プレイヤーが魔物に倒されてもプレイ時間が減るペナルティだが、この2人に関しては「死」になっている」
「ふざけんな!」
俺は思わず声を荒げる。
あの女は何を考えている?
何で今このタイミングで行動を起こした?
狙いは何だ?
何でツネノリを狙う?
何で千歳を狙う?
考えてもわかるのはたった一つのことだ。
俺が何をしてでも子供は絶対に死なせない。
「管理者権限でセカンドに降りる。
東はパラメーターの調整をしてくれ」
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