エラーコード

稲吉急便

エラーコード

胡桃色の空

敗れた僕に破れたゴム

汗にまみれた木片を

人のいるのに

叩き割る

壊すのは自分のものだけか

それはほんとにおまえのか


暴れ出す靴に

レンズの割れた眼鏡

少し浅い川の背に

近寄りすぎてはっとする

そうか、流れがはやいのか


僕は素人だった

だから苦し紛れに

影を見つめてヤバいと思った

壁に開いた穴を鬱いで

僕は策を繰ろうとした


僕は問い、外へ出た

内側には元々意味がない

大事にしたい風と言葉

僕の髪をかきむしる

優しく優しくかきむしる



人はみな一番偉かったときがあったらしい

人はたくさん勉強するらしい

もっと苦労しろという

苦労した奴らは偉そうだし

結果やっぱり偉いのだ

僕にも今より偉いときがあったらしい

僕がもっとも偉かったとき

あの胡桃色の苦しみに囲まれたとき

ベッドに染み付いた涙のとき

何気ない風が気に障ったとき

僕がすごく苦しかったとき

あの頃の僕が決めた言葉は

きっと偉い人の言葉なんだ

僕の中でもっとも偉大な僕が

決めたことなのだ


そういうわけで僕は、野菜を好きになった


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